著者
安岡 早穂
出版者
大阪歴史博物館
雑誌
大阪歴史博物館研究紀要 (ISSN:13478443)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-74, 2018 (Released:2021-04-01)

瀬戸内海沿岸地域では、漁撈活動の証拠として多彩な土錘が出土するが、これらがそれぞれどのような環境でどのように使用されたかについては未だ議論の余地がある。本稿では、古代以前に見られる土錘の各型式のうち、瀬戸内海沿岸地域を中心として分布する棒状土錘・有溝土錘の一部を抽出し、遺跡ごとの重量・大きさについて比較した。同一型式でありながらそれぞれ遺跡ごとに微妙な差異をもっている点は、使用される環境の影響を受けていると考えられる。また、管状土錘と共存する場合は各型式で重量分布が異なっており、複数の網を使い分けていることがわかる。 今後遺跡ごとの組成を比較することで、漁撈活動の規模や変遷などの様相について類推可能となる点を指摘する。