著者
出江 紳一 安崎 文子 石田 暉
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.405-409, 1999-06-18

発語の誤りを分析し,Wernicke(W)失語における発語障害の機序が日本語でも音韻選択の障害であることを検証した.対象は脳梗塞によるW失語3例で,標準失語症検査,Token test,語音弁別検査,音節分解検査により,軽度・中度・重度とそれぞれ評価された.発語検査は,1〜6音節の単語の絵カード呼称・復唱・仮名漢字単語音読を行った.その結果,軽・中度例では音韻性錯語と音の修正接近が多く,重度例では新造語が多かった.音韻性錯語の殆どを占めた置き換えと転置の誤りを分析すると,重症であるほど子音の誤りが多かった.この結果から,日本語のW失語の発語障害に子音の選択障害が重要な位置を占めると示唆された.