著者
安本 史恵
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.133-141, 2022-03-15

教育によって脳はどのような機序で生命科学的に変化するのだろうか。個体差を超えて生じる生体反応を理解することは教育実践や教育政策の立案においても必要であると考えられる。本総説においては,①幅広い分野の教育系研究者に有用であると考えられ②神経科学の基礎により多くの接点を持つエビデンスであることを基準として話題を選別し,脳が環境を知るメカニズム,大人と子どもの脳の違い,主体的な学びの重要性の根拠,現代の新しい技術によって脳が変化する可能性,などについて概説する。神経科学においては,「学習」は「環境からの外部刺激によって神経回路が構築される過程」,「教育」は「外部刺激を制御・補完する過程」として捉えられる。このことは,どのような脳を創出したいかを考えながら教育の起点である環境を構築していく必要があることを示している。