著者
安江 伸夫
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.97-111, 2018-01-31

中国国内の権力闘争と、日中関係の悪化とが関係しているように見えることがある。2012 年9 月に日本が尖閣諸島を国有化したとき、反発が暴動や閣僚交流の停止にまで拡大した。共産党大会の直前だった。東京都の尖閣諸島購入から国有化に至る、その同じ頃、中国では4 人の有力政治家が権力闘争で敗れた。そして新政権の下、4人が逮捕などでとどめを刺される同じタイミングで、なぜか日中関係は改善した。では日中関係の悪化の方も、権力闘争と関係していたのではないか。同様に中国の政局と対日政策との一致は、国交正常化以来度々見られた。1979 年に日中平和友好条約締結の陰で起きた尖閣諸島での漁船団の侵入事件、1992 年の天皇訪中の前後に起きた尖閣諸島領有の法律制定や核実験、2006 年に小泉から安倍への政権交代と同時に上海市トップが失脚し日中関係が改善したこと、2010 年に副主席だった習近平が胡錦涛後継に内定した、会議開催の裏で起きた反日暴動などだ。対日政策に影響を与える要素には、領土や歴史という明確な理由以外に、政権の主導権争いや、米中・日中の力関係、経済的利益、中国の世論の動きなども挙げられるようだ。これら法則の整理を試みた。