著者
福田 博美
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.9-16, 2018-01-31

近世初期、男女共に対丈であった小袖は、男物が対丈のままであったのに対し、女物の丈は長くなった。そのために女物では着丈より長い分を腰のあたりで引き揚げ、腰紐で締めて丁度良い丈に調整する「おはしょり」が形成された。その過程に関して日本服装史では言及されていない。そのため、本稿で画像・文献資料より辿ることを目的とした。また、和服裁縫書から用語の初出にも着目した。その結果、江戸時代、室内で裾が引摺られた小袖は、外出の際、たくし上げたり、褄を取って着装された。しかし、片手が塞がる不便さから、「抱帯」「しごき帯」と称された細紐で前身頃をはしょった。明治時代、着付けの段階で「腰帯」と「下締」が締められ、「おはしょり」と称される着装法が完成した。その姿は「腹の辺にカンガルーといふ獣の如く、無益の袋を作るは真に抱腹なり」と揶揄され、大きな袋状の「おはしょり姿」は不評であったが、昭和時代に入り、体形に合わせた着付けが進み、「おはしょり」はその利便性に加えて着装美が求められた中で定着化した。また、和服裁縫書では1957 年に「お端折」の用語が明らかとなったが、1900 年刊「流行」の「ハシヨル」の言葉が初出と捉える。
著者
福田 博美
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.9-16, 2018-01-31

近世初期、男女共に対丈であった小袖は、男物が対丈のままであったのに対し、女物の丈は長くなった。そのために女物では着丈より長い分を腰のあたりで引き揚げ、腰紐で締めて丁度良い丈に調整する「おはしょり」が形成された。その過程に関して日本服装史では言及されていない。そのため、本稿で画像・文献資料より辿ることを目的とした。また、和服裁縫書から用語の初出にも着目した。その結果、江戸時代、室内で裾が引摺られた小袖は、外出の際、たくし上げたり、褄を取って着装された。しかし、片手が塞がる不便さから、「抱帯」「しごき帯」と称された細紐で前身頃をはしょった。明治時代、着付けの段階で「腰帯」と「下締」が締められ、「おはしょり」と称される着装法が完成した。その姿は「腹の辺にカンガルーといふ獣の如く、無益の袋を作るは真に抱腹なり」と揶揄され、大きな袋状の「おはしょり姿」は不評であったが、昭和時代に入り、体形に合わせた着付けが進み、「おはしょり」はその利便性に加えて着装美が求められた中で定着化した。また、和服裁縫書では1957 年に「お端折」の用語が明らかとなったが、1900 年刊「流行」の「ハシヨル」の言葉が初出と捉える。
著者
岡島 奈音
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-38, 2019-01-31

幕末・明治期の絵師・河鍋暁斎は「地獄太夫図」を得意とし、作例も多い。中でも図像の類似が著しいウェストン・コレクション「一休禅師地獄太夫図」、ゴールドマン・コレクション「地獄太夫と一休」、クリーブランド美術館所蔵「屏風の前の美人」、河鍋暁斎記念美術館所蔵「極楽太夫図」、ボストン美術館所蔵「地獄太夫図」の計5 点に着目し、それぞれに描かれた地獄太夫の打掛文様を比較検討した。その結果、典拠である山東京伝の読本『本朝酔菩提全伝』で地獄模様とされた打掛を、暁斎が七福神と宝尽くしによる見立て地獄模様に変えた点は共通するが、各作品には明確な差異が見出された。具体的には、ウェストン本の打掛文様は最も緻密で、隅々にまで洒落が効いており、暁斎の手によるものと考えられる。ゴールドマン本の図柄はウェストン本とほぼ同一ながら、やや手数が少ない。クリーブランド本と暁斎美術館本は七福神の筆致が前2 作とは異なる上、図像に不完全な部分があり、模写の際に写し崩れが生じたと考えられる。ボストン本は、ウェストン本で展開された見立てが複数個所で成立しておらず、絵師が暁斎の意図を理解しきれずに写し崩れが著しくなったと推測される。
著者
髙木 美希
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.125-139, 2019-01-31

中国ムスリムの諸民族は中華世界に居住し、中国文化とイスラーム文化双方の影響を受けながら独自の文化を形成してきた。しかし、1949 年に中華人民共和国が成立した後、中国国内では1949 年以前の服装は「封建的」なものであるとして徹底的に排除され、人民服が実質的な国民服とされた。このため、他の民族と同様に、中国ムスリムの伝統服の制作・継承・保存も停滞状態にあると言える。現在、中国国内の博物館や観光地、書籍などで中国ムスリム諸民族の民族衣装が紹介されるが、そのなかには洋服をもとにデザインしたような現代的な衣装が多く、伝統服であるとは言い難い。このような状況をふまえ、本研究では1949 年以前の中国ムスリム女性の服装に関して残された写真をもとに分析し、2 体の服装を再現する。さらに、デザインやパターンを図で示すことによって、中国ムスリム女性の伝統的な服装が未来へと継承されていくことを目指す。
著者
近藤 尚子 田中 直人 中村 弥生 関口 光子
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
no.52, pp.111-115, 2021-03-31

本資料紹介では、本学所蔵のピエール・カルダン関連資料群について扱う。文化ファッション研究機構では、学内機関で所蔵されているが、リソースとして整理・公開されていない服飾関連資料の調査・デジタルアーカイブ化を進めてきた。そのなかで、2023年に創立100周年を迎える本学には、国内外のデザイナーに関して、実物服飾資料やその研究成果のみならず、交流記録も残されていることが判明した。文化服装学院の名誉教授であるピエール・カルダン氏は、1958〜2010年の間に計10回も来校しファッションショーも開催した、本学と特に関係の深いデザイナーの 1 人である。そのため、所蔵している資料は実物服飾資料、紙資料、画像、映像と多種多様であり、現時点で確認された資料数は1,055件にも上る。またこれら資料の多様性は、これまで資料所蔵機関として認知されていた教育部門、附属機関に加え、事務部門とも連携し調査を行えた結果でもある。このような部門を超えた連携は、研究の多様化や分野を超えた共同研究が進むなかで重要な意義を持つものであると考え、ファッション分野におけるオーソドックスな研究対象である実物服飾資料のみならず、その他の資料情報も併せて紹介する。
著者
小川 麻衣
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.49-56, 2018-01-31

ファッションは近代産業社会の成立とともに誕生したジェンダーを映しだす記号的役割を果たしてきた。社会の変化とともにジェンダーが恣意的に作られたものであり、その構造や意味を問い直そうとする議論や研究がみられるようになると、それらに関わりを持つファッションも同様に議論し直されはじめた。本稿では、1990 年代に流行した〝フェミ男〟をジェンダー概念の観点から考察を行った。〝フェミ男〟の現象は社会の先端を走るジェンダー意識の変化をいち早く取り入れたファッションであったと言えるが、新しいジェンダー意識と現状を守ろうとする帰来の意識の中で揺らぐ姿が写し出されていた。しかし、「男らしさ」というジェンダー既定に新しい意味内容を加えたことは、単なる一過性の流行だけではなく、ジェンダー概念に影響を与える事例のひとつと言える。ジェンダーは時代の変化と共に揺らぎ始めているが、ファッションにおける男女差はいまだに存在し続けており、大きな変化が訪れることは難しいかもしれないが、ファッションをする行為はジェンダーを壊すきっかけにも再構築するきっかけにもなっている。
著者
渋井 君也
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.109-118, 2019-01-31

『源氏物語』は、中国では「日本の『紅楼夢』」と称されることがよくある。初めて『源氏物語』全文を中国語に翻訳した豊子愷は、かつて「白頭今又訳紅楼(白頭今又『紅楼』を訳す)」と書き、『源氏物語』を翻訳することを、『紅楼夢』を翻訳することに喩えた。『紅楼夢』の研究が中国で「紅学」と称されるのに対し、『源氏物語』の研究は「源学」と称される。近年、中国の『源氏物語』の研究が迅速に進むとともに、『源氏物語』と『紅楼夢』との比較研究は、中国における「源学」研究に占める比重が非常に大きいだけでなく、中国文学と外国文学を含む『紅楼夢』の比較文学の研究においても、それに比肩するのは恐らく『紅楼夢』と『金瓶梅』との比較研究のみである。『源氏物語』がそれほどまでに注目されるのは、主に中国の読者からみれば『源氏物語』が、『紅楼夢』と『金瓶梅』以外に貴族家庭小説の特徴を有し、しかも女性描写への傾注を特色とし、貴族社会を描いた長篇世情小説を提供したためである。
著者
小川 麻衣
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.49-56, 2018-01-31

ファッションは近代産業社会の成立とともに誕生したジェンダーを映しだす記号的役割を果たしてきた。社会の変化とともにジェンダーが恣意的に作られたものであり、その構造や意味を問い直そうとする議論や研究がみられるようになると、それらに関わりを持つファッションも同様に議論し直されはじめた。本稿では、1990 年代に流行した〝フェミ男〟をジェンダー概念の観点から考察を行った。〝フェミ男〟の現象は社会の先端を走るジェンダー意識の変化をいち早く取り入れたファッションであったと言えるが、新しいジェンダー意識と現状を守ろうとする帰来の意識の中で揺らぐ姿が写し出されていた。しかし、「男らしさ」というジェンダー既定に新しい意味内容を加えたことは、単なる一過性の流行だけではなく、ジェンダー概念に影響を与える事例のひとつと言える。ジェンダーは時代の変化と共に揺らぎ始めているが、ファッションにおける男女差はいまだに存在し続けており、大きな変化が訪れることは難しいかもしれないが、ファッションをする行為はジェンダーを壊すきっかけにも再構築するきっかけにもなっている。
著者
安江 伸夫
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.97-111, 2018-01-31

中国国内の権力闘争と、日中関係の悪化とが関係しているように見えることがある。2012 年9 月に日本が尖閣諸島を国有化したとき、反発が暴動や閣僚交流の停止にまで拡大した。共産党大会の直前だった。東京都の尖閣諸島購入から国有化に至る、その同じ頃、中国では4 人の有力政治家が権力闘争で敗れた。そして新政権の下、4人が逮捕などでとどめを刺される同じタイミングで、なぜか日中関係は改善した。では日中関係の悪化の方も、権力闘争と関係していたのではないか。同様に中国の政局と対日政策との一致は、国交正常化以来度々見られた。1979 年に日中平和友好条約締結の陰で起きた尖閣諸島での漁船団の侵入事件、1992 年の天皇訪中の前後に起きた尖閣諸島領有の法律制定や核実験、2006 年に小泉から安倍への政権交代と同時に上海市トップが失脚し日中関係が改善したこと、2010 年に副主席だった習近平が胡錦涛後継に内定した、会議開催の裏で起きた反日暴動などだ。対日政策に影響を与える要素には、領土や歴史という明確な理由以外に、政権の主導権争いや、米中・日中の力関係、経済的利益、中国の世論の動きなども挙げられるようだ。これら法則の整理を試みた。
著者
北方 晴子
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.43-48, 2019-01-31

昨今、「スカート男子」という言葉が聞かれるように、モードに関心の強い若い男性の間ではスカートを履く姿も見ることが出来る。かつて女性専用の衣装と考えられていたスカートが、今なぜ男性に広がりつつあるのだろうか。本研究ノートでは、かつての「男がズボン、女はスカート」の定説がいつごろ誕生し、定着していったのか整理した。そして、服飾史の中でも特異な現象である17 世紀の男性用のスカート風半ズボンの流行、その後のフランス革命直後に現れた男性用チュニックを取り上げた。また、イギリスでは19 世紀後半、男性衣装に関する改革が試みられた。そして20 世紀初頭、組織団体メンズドレスリフォームパーティが設立され、長ズボンを排除し、スカート風ズボンを推し進めようとした。一方で、19 世紀はヨーロッパで民族衣装が再認識された時期でもある。自然回帰、異国趣味、地方趣味、素朴さへの愛好などを重んじるロマン主義時代、作家や芸術家は民衆の生活に注意を向け始めた。東西ヨーロッパ遠隔地や一部では原初的な形としてチュニック形式の男性民族衣装があった。そこで本研究ノートでは歴史にみる男性用スカートとスカート風民族衣装について整理をし、現代男性とスカートについての論考に繋げる足がかりとしたい。
著者
村上 剛規
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.37-45, 2021-03-31

本研究は人体の上肢の形状と衣服製作で使用される袖パターンに着目し、その関係について相互性を見ることを目的とする。まず上肢の形状を知るために成人女子を被験者とし、写真計測を行った。その結果、上腕部の振れはほぼなく、前腕部で振れていることと、その振れには個人差があることがわかった。このことを踏まえ、以下のような試着実験を行い、上肢に適合する袖パターンの形状を検討した。①被験者に肘までの長さの袖のジャケットを着用させ、撮影した写真の観察を行った結果、上腕部は適合していることがわかった。次に②被験者に基本型となる長袖のジャケットを着用させ、撮影した写真の観察を行った結果、袖に皺が見られる被験者がいた。この皺は袖の振れに前腕部の振れが合わないために見られたということが推察された。そして③半袖のジャケット着用時の前腕の振れを基に被験者を分類し、それらに合わせて前腕部の振れを変えたジャケットを着用させ、撮影した写真の観察を行った。その結果、袖に皺は見られず、適合することがわかった。これらの実験から、上肢に適合する袖パターンは、1つではなく、上肢の形状に合わせて複数種類が必要であることがわかった。
著者
小山 真理
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.111-125, 2020-01-31

近年、中国からの留学生が急増し、その影響なのか、以前より抱いていた疑問を強く感じるようになった。そ れは「なぜ中国人留学生は文字を、とりわけ漢字を丁寧に書かないのか」というものだ。その答えを探るため、 まず、日中両国の初等教育における漢字・文字教育を概観し、手書きの書字・字形等について、どのような指導 を受けてきたかを比較した。その上で、漢字・書字に対する意識が、日本語を学ぶ際、どう影響しているかについて、アンケートとインタビューにより分析し考察した。その結果、多くが小学校で厳しく指導され、丁寧な書字、筆順の順守を当然と考えていることがわかった。だが、成長するにつれて筆順を忘れ、自己流の書き方に慣れてくると、改めて日本の漢字を学ぶのは小学生のようだと抵抗感を示した学生も多くいた。さらに、既有の漢字知識があるため、「日本の漢字は少なくて簡単だ」と捉えがちで、特に、集中力や慎重さに欠け、成績の芳し くない学生は文字を乱雑に書く傾向があった。漢字・書字に対する意識に個人差はあるが、日中の漢字の差異は学生自身では気づきにくいことも明らかとなり、教師が注意して訂正させることは、今後も必要不可欠であることが確認できた。
著者
勝山 祐子
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.119-132, 2018-01-31

フォルチュニィのドレスが『失われた時を求めて』で描かれるのは、ヴェネチアン・ルネッサンスを甦らせる衣装としてだ。だが、フォルチュニィのテキスタイル作品で最も有名なのは、古代ギリシャ風のガウンやスカーフである。これは『スワン家のほうへ』の末尾で描かれる1912 年頃のモードに見られるような、当時の古代ギリシャ風ドレスの流行(リバティーのドレスや19 世紀後半に大量に発掘されたタナグラ人形を連想させるドレスの流行、あるいはディレクトワール様式のドレスのリヴァイヴァル)や、ダンカンらギリシャ風ダンスの隆盛と無関係ではない。また、フォルチュニィはワグネリアンであり、舞台用間接照明とそれを有効に使用するための舞台装置「クーポール」を発明、プルーストも親しかったベアール伯爵夫人の私設劇場で実際に使用されることになった。1906 年3 月の杮落しにプルーストが赴いた形跡はなく、そもそもプルーストとフォルチュニィのあいだにどの程度の交流があったのかも明らかではないが、フォルチュニィがレイナルド・アーンの姻戚だったことに鑑みても、プルーストがこうしたフォルチュニィの多岐にわたる活動を知らなかったとは考えられない。二人の意外な共通点は、フォルチュニィのオペラやバレエといった舞台芸術における活動を支える理論、つまり音楽とは時間的芸術で、切断のない時間の中で音楽による陶酔に身を任せるべきだ、という確信である。
著者
森 眸美
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
no.52, pp.98-104, 2021-03-31

デジタルツールを用いたファッションデザイン表現が一般的になってきた現在において、今後は 2 Dのみならず 3 Dの表現にも期待されている。 そこで本稿では、ファッション画のなかでも世界観を表現することを目的として描かれるファッションイラストレーションにおいて、従来の平面( 2 D)的表現に立体( 3 D)的表現を加えることでどのような効果が得られるのか、作品制作を通じて検討し、手法の開拓やファッションデザイン表現の新たな可能性を見出すことを目的とした。 今回はファッションイラストレーションにおけるアクセサリーが持つ世界観の表現をテーマとし、アクセサリーのデザインは 3 Dソフト『ZBrush Core』を用いて行った。平面( 2 D)的表現に立体( 3 D)的表現を組み合わせることで、立体部分が平面から浮き上がって見えるとともに奥行きが生まれ、アクセサリーが印象的かつ具体的に表現されたファッションイラストレーションを制作することができた。
著者
吉田 昭子
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
no.52, pp.82-88, 2021-03-31

コロナ禍における大学生の生活は,ことごとく変わっている。その中で大学生は工夫をしながら生活している。「新しい生活様式」を探るにはあまりにも複雑な状況にある。本稿では新 1 年生に焦点を当て,おそらく初めてであろう電子図書館利用の体験を指導することから,「大学生と読書」を考えてみることにした。電子図書館の利活用という新たな観点から,読書環境を見つめ直すことが課題解決の一助になると考えた。 大学生からの電子図書館改善点は,次のような 3 つの主な要望であった。図書のタイトル数を増やす,貸出冊数や貸出期間を増やす,試し読みのできる図書を増やす。筆者が最も痛感したのは,電子図書館に関するPRが少ないという指摘である。電子図書館の申請や利用方法,利用事例などをきめ細かく例示することで,利用を促進することができる。さらに,大学生だけではなく,教職員に対しても,その利便性を広く伝え,文化学園ならではの図書館づくりを目指していきたい。より多角的かつ立体的な観点から大学生の読書,大学図書館のあり方をとらえ直すことで,新たな図書館を創出することができるということが明らかになった。
著者
種田 元晴
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.31-40, 2020-01-31

長きにわたって学校法人文化学園を象徴する建築物であった「文化服装学院円型校舎」は、円形校舎が各地に 相次いで建てられ、建築界を賑わした時代に竣工した。その先駆例は、文化服装学院の前年に竣工した「山崎学園富士見中学・高等学校」であった。富士見中学・高等学校は、坂本鹿名夫の設計による。坂本は以降、数多くの円形校舎を手掛けた。しかし、「文化服装学院円型校舎」は坂本の手によるものではなく、三菱地所の杉山雅 則の設計である。本稿では、坂本による円形校舎と「文化服装学院円型校舎」の形態構成と空間構造を比較する ことにより、その共通点および差異を検証した。その結果、「文化服装学院円型校舎」は、坂本鹿名夫による実 用新案である円形校舎がつくられた時期に、坂本の承認を得て、坂本の考案した円形校舎の利点を取り入れなが ら計画されたものであることが明らかとなった。また、坂本による一連の円形校舎が経済性を追究し、合理性を満たすことを目的とした建築であったのに対し、「文化服装学院円型校舎」は仕上げや設備を高級に設えた象徴 性の追究された建築としてつくられたものであり、両者は設計趣旨のまったく異なったものであることが明らかとなった。
著者
久保田 文 Han John J.
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
no.52, pp.76-81, 2021-03-31

日本文学における私小説的創作の草分けとも言われる小林一茶の『父の終焉日記』は、愛情深く父を看取った一茶の人生観や世界観を深く知り得る内容となっている。幸薄い少年期の混沌を経た彼は、往々にして諧謔的であることによって滑稽味に救いを求めた。しかし、本日記における一茶は、父のために祈り続け、仏教や儒教の指南の中に秩序を渇求していた。