- 著者
-
安田 徹也
- 出版者
- 公益財団法人 竹中大工道具館
- 雑誌
- 竹中大工道具館研究紀要 (ISSN:09153685)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, pp.3-41, 2018 (Released:2021-03-20)
- 参考文献数
- 61
本稿では主に戦前までの文献を対象とし、魯般尺に関する記述の変遷を追った。その概要は下記のとおりである。
1. 最古の文献は中国宋代の『事林廣記』、それに次ぐのが元代の『居家必用』である。何れも1尺2寸を八等分し「財病離義官刧害吉」の八文字を配当する、現在と同形式の魯般尺を載せており、これが日本の魯般尺のルーツとなったと思われる。
2. 魯般尺の記述のある大雑書が17世紀後期から多数出版されており、これが日本の魯般尺のもう一つのルーツとなった。18世紀中期には八文字の順序を「刧病離官財義吉害」とする文献も現れた。
3. 18世紀末から盛んに出版された家相書にも魯般尺の記述が見られる。天保11年(1840)には9寸6分を八等分する新しい形式の魯般尺が現れた。
4. しかし多くの場合、魯般尺の記述は具体性に欠け、実際の建物の設計にどの程度使用されたかは分らない。