著者
安田廣生
出版者
金沢医科大学
雑誌
金医大誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.233-241, 2006
被引用文献数
3

目的:近年,浅い陥凹性瘢痕や顔面の皺などに対し注入療法がとられている。注入療法における臨床的な知見はこれまで多く報告されているが,注入による組織反応やその分解・吸収過程についての報告は少ない。本研究では注入剤(以下Fillerと称す)として使用されているコラーゲン製剤とヒアルロン酸製剤注入後の組織反応を比較検討した。対象と方法:非動物性安定化ヒアルロン酸のRestylane^[○!R]およびRestylane Perlane^[○!R]と牛真皮由来架橋コラーゲンのZyplast^[○!R]の3種類各々を,日本産白色家兎の耳介耳孔面皮下に注入し,その組織反応を経時的に観察した。結果:ヒアルロン酸群において注入早期に好酸球を主とする急性炎症細胞浸潤が観察されたが,この炎症は注入14日目以降には消失し,ヒアルロン酸は安定した状態を示した。60日目以降より異物巨細胞によるヒアルロン酸の貪食吸収像がみられ,注入180日目後では大部分が吸収された。一方コラーゲン群においては,早期より細胞浸潤が認められ,その後も継続して線維芽細胞の遊走・増殖,血管新生がみられた。同150日目には強い炎症細胞浸潤を伴う肉芽形成が認められ,ヒアルロン酸製剤に比し終始強い組織反応を示した。結論:理想的なFillerは安全性,効果的,生体適合性,非免疫原性,長期安定性,低コスト,吸収性を満たすとするならば,本研究によってヒアルロン酸製剤は,コラーゲン製剤に比し組織反応が軽微な点でより理想的製剤に近いと考えられた。