著者
安西 徹郎 松本 直治
出版者
千葉県農業試験場
巻号頁・発行日
no.29, pp.93-104, 1988 (Released:2011-03-05)

時系列的に選定した38地点の休耕田の雑草の発生状況を調査し,あわせて休耕が土壌の理化学性に及ぼす影響を検討した。その結果は以下のとおりであった。1. 休耕田の雑草は沖積低地で1~4年でノビエ,ミズガヤツリなどの水田雑草が優占するが,2~3年でガマ,ヨシ,セイタカアワダチソウなどの大型多年生雑草が侵入し始め,5~10年で優占化した。山間谷津でも3~5年で大型多年生雑草がみられ,さらに山野草が繁茂した。2. 雑草の重量は休耕3年で38~74kg/aであり,この時点で稲ワラ全量還元を上回る集積量がみられた地点があった。3. 休耕田の土壌は水稲連作田に比べて湿田方向にある場合が多く,こうした変化は3年以降に認められた。4. 土壌の固相率,ち密度および透水性は土壌の乾湿状態をよく表しており,湿田方向にある地点では固相率が減少し,ち密度および透水性が低下した。5. 作土の全炭素,全窒素,交換性カリウム含量は休耕年数が増すにつれて概ね直線的に増加した。可給態窒素含量も5年までは概ね直線的に増加したが,その後は増加量が低下し,ほぼ一定量で経過した。6. 土壌の無機態窒素生成量は有機物集積層では高かったが,その直下層では水稲連作田と同等かそれ以下であった。このように土壌の化学性に対する休耕の影響は表層部に限られた。7. 休耕後の雑草の発生状況および土壌の変化からみて,放任状態の休耕田における休耕年数は3年を限度とすべきである。