著者
柴田 英克 丸山 広高 山根 宏美 安道 誠
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.135-139, 2023-03-25 (Released:2023-03-31)
参考文献数
12

背景.ノカルジア感染を合併した囊胞状気管支拡張を伴う肺分画症の1例を報告する.症例.46歳,男性.感染性肺囊胞の診断で紹介となる.喀痰のグラム染色でノカルジアを検出し,肺ノカルジア症の診断で,2年間加療するも症状の改善,増悪を繰り返した.右下葉に病変が限局することより切除の方針とした.術前検査の造影CTで下行大動脈から右下葉に流入する異常血管を認めた.これにより,ノカルジア感染を合併した肺分画症の診断に至った.胸腔鏡下右下葉切除を施行したところ,呼吸器症状は改善し,術後5年経過したが症状の再燃は認めない.結語.ノカルジア感染症は日和見感染症の一つであるが,肺の器質的異常もリスク因子と報告されている.ノカルジアの分画肺への感染はとても希である.しかし,難治性のノカルジア感染が下葉縦隔側に限局する場合には,肺分画症を念頭に置いて積極的に造影CT検査を行うべきと考える.