著者
榛沢 理 藤江 俊秀 高野 聡子 稲瀬 直彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.405-409, 2016-09-25 (Released:2016-10-08)
参考文献数
7

背景.慢性活動性EBウイルス感染症(chronic active Epstein-Barr virus infection;CAEBV)と,それに伴うEBウイルス関連NK/T細胞リンパ増殖症は稀な疾患であり,肺病変に関する報告は少数のみである.症例.37歳女性.発熱,頸部リンパ節腫大および肝逸脱酵素上昇に対して精査され,末梢血中のEBウイルスDNAの増加からCAEBVと診断された.約1か月後,咳嗽と呼吸困難を自覚し,急性呼吸不全を認め入院した.胸部CTでびまん性すりガラス影があり,BAL液のCD4陽性細胞の増多とEBウイルスDNA増加を認めた.末梢血中にEBウイルス感染T細胞の腫瘍性増殖があり,EBウイルス関連T細胞リンパ増殖症(EBV+T LPD)およびその肺病変と診断した.結論.気管支鏡検査がEBV+T LPDの肺病変の診断に有用であった症例を経験した.
著者
片倉 浩理 畠中 陸郎 山下 直己 佐藤 寿彦 岩切 章太郎 尾崎 良智 長井 信二郎 岡崎 強 塙 健 松井 輝夫 美崎 幸平 桑原 正喜 松原 義人 船津 武志 池田 貞雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.281-284, 1999-05-25 (Released:2016-10-15)
参考文献数
14

症例は41歳, 男性。脇差しにより頸部正中刺創を受け, 近医で皮膚縫合を施行されたが, 頸部腫脹, 発声障害が進行するため, 受傷後約18時間後に当院を受診した。著明な皮下気腫を認め, 気管の損傷を疑い気管支鏡を施行した。第1気管軟骨輪に約2cm, 同レベルの膜様部に約1cmの損傷を認めた。同検査中再出血により緊急手術を施行した。出血は甲状腺左葉内の動脈性出血であり縫合止血した。食道の損傷はなかった。気管軟骨輪および膜様部の縫合を行った。術後経過は良好で退院したが, 肉芽形成の可能性もあり, 経過観察が必要である。
著者
八木 太門 小林 寛明 今瀬 玲菜 三島 有華 尾形 朋之 山下 高明 土屋 公威 稲瀬 直彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.190-194, 2016-05-25 (Released:2016-06-07)
参考文献数
14

背景.フッ素樹脂は日用品に汎用されるが,過燃焼によりヒュームを生じ,時に肺障害をきたし得る.症例.55歳女性.鍋に火をかけて寝てしまい,2時間後に呼吸困難を自覚し当院へ搬送となった.発熱と低酸素血症があり,胸部CTにて中枢側優位のすりガラス陰影を認めた.気管支鏡検査では気管支肺胞洗浄液にて好中球増多があり,経気管支肺生検では軽度の胞隔炎の所見であった.フッ素樹脂加工鍋の使用歴から,ポリマーヒューム吸入による肺障害と診断した.症状や画像所見は速やかに消失し,第7病日に退院となった.結論.ポリマーヒューム熱は日常生活の中で起こり得る疾患として注意が必要であるため,報告する.
著者
鈴木 慎太郎 田中 明彦 岸野(大木) 康成 村田 泰規 楠本 壮二郎 石田 博雄 安藤 浩一 白井 崇生 大西 司 相良 博典 瀧本 雅文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.118-124, 2016-03-25 (Released:2016-03-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

背景.数多くの健康食品が販売されており,医薬品と併用している場合も少なくない.なかでも滋養強壮を謳った「にんにく卵黄」は盛んに広告されており,愛飲者も相当数が見込まれる健康食品である.症例.69歳男性.4年前から「にんにく卵黄」を服用し続けていた.数週間前から労作時の呼吸困難と乾性咳嗽を自覚し,近医で肺炎の診断にて抗菌薬と副腎皮質ステロイドを投与されるも改善せず,当科を紹介受診した.胸部X線およびCT上,両側中下肺野,末梢側優位のすりガラス影を認めた.気管支肺胞洗浄液でリンパ球優位の細胞増加を認め,気管支肺生検ではリンパ球主体の炎症と軽症の器質化肺炎様の所見を認めた.「にんにく卵黄」の服用中止により速やかに改善し,リンパ球刺激試験でも同商品で陽性反応を示したため,同食品による肺障害を強く疑った.結論.健康食品やサプリメントの摂取歴についても,問診で詳細に聴取することが大変重要である.
著者
澤井 豊光 吉岡 寿麻子 松尾 信子 須山 尚史 河野 茂
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.193-196, 2014-03-25 (Released:2016-10-29)

背景.V字型の魚骨による気管支異物のため摘出に難渋した症例を経験した.症例.75歳,男性.咽喉頭部違和感,咳嗽,血痰を主訴に近医を受診し,胸部CTにて左主気管支の気管支異物を指摘され当科紹介となった.6週間前に鯛のお吸い物を食べた際に咳き込んだというエピソードがあった.同日,気管支鏡検査を行ったところ,左主気管支にV字型の魚骨を認めた(長辺2.5cm,短辺1.5cm).V字型魚骨の短辺の方を鰐口鉗子で把持,牽引したが,V字型の片方は左主気管支内腔より長かったため気管支壁に支え摘出は困難であった.次にV字型魚骨の長辺の方を鰐口鉗子で把持,牽引したところ,気管支壁に支えることなく魚骨を摘出し得た.結論.単針様の魚骨であれば摘出は比較的容易であるが,形状がV字型の場合,その角度が広く,径が長いほど軟性気管支鏡での摘出は困難となり,硬性気管支鏡や外科手術まで考慮する必要がある.
著者
川村 雅文 渡辺 真純 橋詰 寿律 加藤 良一 菊池 功次 小林 絋一 石原 恒夫 堀 進吾 相川 直樹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.88-92, 1990-01-25 (Released:2016-10-01)
被引用文献数
1

症例は65歳の男性で, 焼いた餅を食べていてその小片を誤嚥した。その後徐々に呼吸困難が出現してきたため, 誤嚥から約1時間後に当院救急部に収容された。来院時の血液ガスは室内気でPaO_2 34Torr, PaCO_2 52Torrで著しいチアノーゼと努力性の呼吸を認めたが咽頭, 喉頭には餅を認めなかった。人工呼吸器を装着し, FiO_2 1.0としても, PaO_2は73Torrにしか上昇しなかった。人工呼吸器装着下に気管支鏡を施行したところ右下葉支に餅が嵌入していた。鉗子で餅を摘除すると人工呼吸器装着下FiO_2 1.0でPaO_2は369Torrと著明に改善した。患者は20歳時に左肺結核に罹患しており, 退院一か月後に行った肺シンチグラフィーでは左肺に換気, 血流とも認めなかった。このため右下葉支の閉塞だけで著しい呼吸困難に陥ったものと考えられた。
著者
平山 良克 下地 勉 大城 元 澤岻 安教 普久原 浩 中村 浩明 兼島 洋 伊良部 勇栄 下地 克佳 橘川 桂三 重野 芳輝 斎藤 厚 伊藤 悦男
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.61-66, 1991-01-25

我々は, 進行性肺癌の大量喀血例に対して, α-シアノアクリレートモノマー(以下アロンアルファA^[○!R])の気管支内注入による止血操作を試み, 効果が認められたので報告する。症例は54歳の女性で, 切除不能の肺癌で入院中に大量喀血をきたした。気管支動脈塞栓術bronchial artery embolization(以下BAE)を試みたが, 成功しなかった。流血部である右上幹内腔の閉塞を目的として, アロンアルファA^[○!R]を気管支ファイバーを用いて同部へ注入した。操作終了後は出血量の低下がみられた。剖検では, アロンアルファA^[○!R]が気管支内で凝固し, 内腔が閉塞されているのが確認された。本例のような手術不能の大量喀血例において, BAEをはじめとした他の止血操作が困難な症例に対しては, アロンアルファA^[○!R]の気管支内注入は考慮すべき一つの方法と考えられる。
著者
植田 史朗 井上 竜治
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.36-40, 2008-01-25 (Released:2016-10-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2

背景.餅誤嚥は,直ちに窒息状態に陥ることが多く,救命が困難となりやすい.症例.78歳男性.2002年に脳梗塞の既往あり.食事中突然の呼吸困難を認め来院.左肺呼吸音は減弱し,重症急性呼吸不全を呈していた.喉頭展開上気道閉塞はみられなかった.胸部CTにて左上幹・下幹及び右底幹の気管支内に高吸収値を示す物質を認めたため,緊急気管支鏡検査を施行した.吸引・生検鉗子・キュレット・スネアを用い,気管支に閉塞していた異物(餅)を全て除去することにより,呼吸不全は直ちに著明改善した.結論.餅による多発気管支閉塞により急性呼吸不全を認め,救命しえた1例を経験した.餅摂食中に突然発症した呼吸不全では,喉頭展開で異常を認めなくても,餅による気管支閉塞の鑑別を要する.餅はCTにて高吸収値を呈するため,餅誤嚥の診断においてCTは気管支鏡前検査に有用である.気管支鏡検査にて診断の確定と救命が可能であった.
著者
宮本 一平 清水 哲男 日鼻 涼 神野 優介 藤原 大士 淺井 康夫 權 寧博
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.387-391, 2022-09-25 (Released:2022-10-08)
参考文献数
10

背景.気管支動脈蔓状血管腫は気管支動脈の拡張・蛇行を特徴とした血管の形態異常であり,喀血の鑑別疾患に挙げられる稀な疾患である.喀血をきたす肺疾患として,肺結核症や気管支拡張症,肺癌などは頻度の高い疾患であるがその原因が明らかでない場合,特発性肺出血と診断されることが多い.症例.59歳男性が喀血を主訴に来院した.胸部CTで右肺にすりガラス陰影を認め,気管支鏡検査では右B3入口部に凝血塊を認めた.気管支動脈造影(bronchial arteriography:BAG)で右気管支動脈上枝に血管異常を認め,気管支動脈蔓状血管腫と診断し気管支動脈塞栓術(bronchial artery embolization:BAE)を施行した.その後血痰は消失し現在まで再発なく経過している.本症例は今回の発症の19年前に左気管支動脈蔓状血管腫に対しBAEを行っていた.前回のBAGでは右気管支動脈に異常血管は認めず,二次性気管支動脈蔓状血管腫と診断した.二次性の原因としては炎症や腫瘤は認めず,喫煙が蔓状血管腫の成因に関係している可能性がある.結論.重喫煙者の特発性喀血症では,二次性気管支動脈蔓状血管腫の発症も鑑別に挙げ,BAGの施行を検討すべきである.禁煙管理で喀血再発の有無をフォローアップすることが今後の外来診療において重要となる.
著者
宮原 隆成 赤羽 順平 村元 美帆 山中 美和 上原 魁 上原 剛 山田 響子 横関 万里
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.392-397, 2020-09-25 (Released:2020-10-16)
参考文献数
15

背景.線毛を有する腫瘍は一般に良性とされている.症例.33歳男性.当院人間ドック胸部CTにて,右上葉に9 mm大の結節影を指摘された.胸部CTでの経過観察15か月後,腫瘍径は変わらなかったが,気管支鏡検査を行った.線毛を有する気管支上皮を認め,基底細胞様細胞が増生し乳頭状構造を形成していた.線毛性粘液結節性乳頭状腫瘍が疑われ,人間ドック33か月後,胸腔鏡補助下右肺S3区域切除が施行された.切除標本における免疫染色では粘表皮癌との鑑別も困難であったため,粘表皮癌に特有のMAML2遺伝子検索を行い,遺伝子異常を認めたため,粘表皮癌と診断した.結語.亜型が存在する腫瘍では時に診断が困難である.免疫染色のみならず遺伝子検査の併用が診断に有用である.
著者
谷口 浩和 宮澤 秀樹 能登 啓文 泉 三郎
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.70-72, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
1

背景. 気管支異物は, 健常若年成人に生じることは極めて稀である. 症例. 33歳の男性で, 主訴は咳嗽と発熱であった. 甘海老の頭部の入った味噌汁を飲んでいた際に強くむせた. その後, 咳嗽が続き, 強く咳をすると甘海老の足が喀出され, 発熱も出現したため, 当科を初診した. 気管支鏡にて, 中間幹内をほぼ閉塞する甘海老の頭部を認め, 把持鉗子を用い摘除した. 摘除後は, 数日の抗生剤投与にて症状の軽快をみた. 結論. 患者背景にかかわらず, 誤嚥の疑われる病歴があった場合には気管支異物の可能性を考えることが重要であると思われた. 気管支異物は, 小児や高齢者に多く発生し, 健常若年成人に生じることは極めて稀である. 今回我々は, 健常若年成人にみられた甘海老の頭部による気管支異物の1例を経験したので報告する. 症例 症例:33歳, 男性. 主訴:咳嗽, 発熱. 既往歴:特記すべきことなし. 職業歴:営業. 生活歴:喫煙歴はなし. 飲酒は, 機会飲酒. 現病歴:2004年6月22日, 甘海老(Pandallus eous, northern shrimp/pink shrimp/deep-water shrimp)の頭部の入った味噌汁を飲んでいた際, 何かが気管に入った感覚があり強くむせた. その後気管内に何かあるような違和感と咳嗽が続き, 強く咳をすると甘海老の足が喀出され, 軽度の呼吸困難が出現した.
著者
川上 雅彦 中村 清一 金子 日和 滝沢 潤 馬場 美智子 三上 正志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.467-471, 1998
被引用文献数
1

医院と総合病院医師の禁煙指導に違いがあるであろうか。アンケートにより都内の医院医師245人(C群)と総合病院医師366人(G群)を比較した。その結果喫煙率は両群とも本邦の一般市民より低率であり, 年齢による傾向は見られなかった。診療中患者に喫煙状態を聞いている医師の割合に差がなかったが, 聞いている医師の間では, 疾患により必要があれば聞く医師に比し, 全員/ほとんど全員に聞く医師はG群で多かった。喫煙患者に禁煙アドバイスをしている医師はC群で多かったが, している医師の間では積極的にしている医師がG群で多かった。C群では医師自身の喫煙状態や喫煙に対する態度が禁煙指導の熱意と関連したが, G群ではこの関連を認めなかった。以上より, C群の医師は患者に禁煙アドバイスを行いやすい環境にあること, G群には専門診療分野の性格上これを行いにくい医師と禁煙指導に積極的な医師がいることが推測された。