著者
安達 久博
出版者
宇都宮大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

本年度は、前年度に得られた、共起関係ペアを特徴観点とする特徴ビット・ベクトル間の類似性計算による対象オノマトペの同値類への分割結果を利用し、清音と濁音(半濁音を含む)間との対応関係を分析した。たとえば、「トントン」と「ドンドン」の関係は清音と濁音の違いだけであるが、この二つのオノマトペの基底概念(ものを叩く)は共通と考えることができ、強弱関係の差を提示していることが分かる。一方、同様に「ジロジロ」の基底概念は(ものを見る、観察する)であるが、その清音に対する「シロシロ」はオノマトペとは認定し難いものである。このように、必ずしも清音と濁音相互間で対応するオノマトペが存在するとは限らないといえる。なお、「クンクン」と「グングン」の関係ペアにみられる共通の基底概念は希薄で、別の概念をあらわしている関係ペアがあることが分かった。他にも「フリフリ」が様態を示すのに対して、「ブリブリ」は感情(負の)を示しているように、擬音と擬態の対比があるペアは興味のある結果である。これらの成果は外国人や聴覚に障害を持つ人々が日本語のオノマトペを学習する際に有益な知見を提示することができるデータベースとして機能し、日本語学習支援システムなどに有効利用できると考える。本年度は、この関係を検索・表示するシステムを試作した。検索システムは、オノマトペを含む例文コーパスをデータベースとし、オノマトペを入力すると、対応する例文コーパスを提示する。この例文の提示の特徴はオノマトペの意味を言葉で記述することの難しさを、複数の例文を提示することで、意味(概念)の差を理解させる、単語の見出しに対する、単語の概念見出しと捉えることができる。また、清音(フラフラ)の入力に対して、対応する濁音(ブラブラ)の例文も参照できる構造とすることで、概念の差を明示可能な構造とした。