著者
安達 朗子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.1-15, 2020-08-31 (Released:2020-10-03)
参考文献数
19

本研究は,視覚障害者が日常生活において支援者から受ける支援に「ズレ」を感じた際,どのように意味づけ,対処してきたのか,また,その「ズレ」を是正する際に生じる困難さの要因は何かを明らかにすることを目的としている.本研究は,5名の視覚障害者のライフストーリーをもとに,半構造化インタビューを行い,定性的コーディングにより,質的機能的に分析した.その結果,調査協力者の否定的感情を生起させたネガティブな支援の「ズレ」と肯定的感情を生起させたポジティブな支援の「ズレ」に大別された.ネガティブな支援の「ズレ」は,支援者側の「視覚障害者に関する無知」,ポジティブな支援の「ズレ」は「運による」と意味づけられていた.対処は「あきらめ」という方法を採り,その「ズレ」を是正する際に生じる困難さの要因は,「自己責任」に収斂されていた.考察では,「あきらめ」ざるをえなかった状態から,五つのディスアビリティを可視化させた.