著者
定延 久美子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.87-96, 2010-01-31 (Released:2017-06-29)
参考文献数
20

本研究では,紙衣和紙の性質を生かしたデザインの考察,および実際の作品制作を目的としている。紙衣とは和紙で作った衣服で,17世紀から19世紀にかけて日本では安価な庶民の衣服として広く用いられた反面,おしゃれ着として趣向をこらした紙衣も作られていた。紙衣和紙のテクスチャーを生かしたデザインの考察を目指すため,紙漉きと紙衣和紙の加工についても研究対象とし,紙衣和紙を自作した。さらに,紙衣和紙の材料試験を行い,布地や加工を施していない和紙と比較した結果,非常に強いハリがあり,量高いという特徴を導き出すことができた。この試験結果に基づいて衣服デザインを考察し,あわせて衣服構成法の検討を行い,実際の作品を作成した。方形に裁断した紙衣和紙を組み合わせることにより,材料試験で明らかにした強いハリと量高さによって生まれる襞を最大限に生かすようにデザインした。方形の紙衣和紙は,ミシンで縫合するのではなく紐で綴じ合わせることにより,ユニークなシルエットのブラウス,スカート,ワンピース,ジャケットを完成させることができた。