著者
龍山 智栄 宮下 和雄
出版者
富山大学
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.85-94, 1972-03

Electrical properties of layer-type semiconductor GaSe and GaTe have been measured.All crystals have been produced by Bridgman technique. GaSe is p-type with two activation energy, of which the value is about 0.29 eV above 200°K and 0.20eV below 200°K for one specimen. GaTe is also p-type, and the activation energy is about 0.13eV for one specimen. According to the temperature dependence of the Hall mobility which exhibits the form μ ∝ exp(hω/kT)-1, the scattering mechanism of these crystals is explained by the interaction of carriers with homo polar optical mode of lattice vibration. Electric field dependence of the conductivity of GaSe parallel to the c-axiz is interpreted by an "anomalous" Poole-Frenkel effect. Estimated dielectric constant is ε_∞=5.4.周期律表のIII A族とVI A族のうちのある元素を1対1の割合で化合物をつくると,結晶構造が層状をなす化合物半導体が得られる。このうち層状半導体といわれるものはGaS,GaSe,GaTe,InSeである。これら物質はc軸方向(へき開函に垂直方向)にY(VI)-M(III)-M(III)-Y(IV)よりなる4つの層が,共有結合で強く結合した基本層をつくり,この基本層がVan der waals力で積み重なった結晶構造を持っている。このため基本層間は容易に剥離することが出来1μm以下の厚さの単結晶を得ることも困難ではない。このような結晶構造のため,電気的,光学的物性におよぼす異方性の影響が注目されるのである。著者は,さらにバンドギャップが広いこと,直接遷移であることという観点から,GaSeとGaTeについて電気的,光電的特性を調べて来たが,ここでは電気的特性について述べる。GaSeおよびGaTeの電気伝導度Hall係数が測定された最初の報告はおそらくFieldingらによるものと思われる。しかしこの実験はGaTeの伝導をn型であるとするなど充分なものではなかった。1962年,FieldingとBrebnerはGaTe, GaSeの電気的特性を測定し,150°K以上の温度領域でのキャリアの散乱機構は音響型格子振動による散乱であるとした。1967年になってFivazとMooser はn型,P型のGaSeの移動度μを測定し,それらがいずれも200°K以上の温度範闘で_<μα>T^<-2.1>の温度依存性を持つとした。そしてこの原因をhomo polar optical modeの格子振動による散乱であるとして,そのフォノンエネルギーを40meVと求めた。一方IsmailovらもGaSeのHall係数を測定し,200°K以上の温度で_<μα>T^<-1.6>となることから,散乱は音響型格子振動によるものであるとしている。以上はいずれも電流をへき開層に平行方向に流したものであるが,GaSe,GaTeのへき開層に垂直方向での電気伝導度の電界依存性を測定したものにAbudullaevらの報告がある。彼等はこれをPoole-Frenkel効果によるとしている。その根拠として,誘電率の値が5になることを上げているが彼等の実験結果はPoole Frenkel の式では誘電率は20になるので単なるPoole Frenkel 効果とするのは誤まりであると思われる。本論文ではまずGaSe,GaTeの結晶製作について述べ,得られた結晶のキャリア濃度,移動度の測定より不純物の活性化エネルギー,キャリアの散乱機構について考察する。また,GaSe のc軸方向の電気伝導度の電界依存性が"anomalous" Poole-Frenkel効果によって支配されていることを示す。