著者
滝山 路人 赤松 良久 小林 勘太 宮園 誠二 乾 隆帝 中尾 遼平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.257-262, 2023 (Released:2023-10-31)
参考文献数
16

気候変動に伴う河川水温の上昇により河川魚類の生息域の変化や減少が予測されており,河川における魚類の多様性の減少を防ぐためにも,河川魚類と水温との関係を明らかにする必要がある.そこで,本研究では効率的に魚類の在・不在や密度を推定することができる環境DNA定量メタバーコーディング法を利用し,中国地方一級水系である太田川水系,江の川水系において複数魚種の環境DNA濃度と河川水温との関係を解析することで,各魚種における好適水温帯を推定することを目的とした.その結果,環境DNA定量メタバーコーディング法により検出された複数魚種について環境DNA濃度がピークとなる河川水温が確認された.また,魚種間で環境DNA濃度がピークとなる水温が異なり,魚類環境DNA濃度を用いて各種に固有に存在する好適水温帯が推定可能であることが示唆された.
著者
宮園 誠二 滝山 路人 花岡 拓身 宮平 秀明 赤松 良久 中尾 遼平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.221-226, 2023 (Released:2023-10-31)
参考文献数
17

国内外で在来魚類の減少が多数報告されており,水系全体の河川環境健全度を推定し,流域における魚類の保全を効率的に行うための河川保護区間の優先順位付けを行う必要がある.そのためには,広域の河川環境健全度を効率的かつ定量的に評価可能なモニタリング手法の開発が求められる.本研究では,環境改変が顕著である一級水系江の川の土師ダム下流を対象とし,環境DNA定量メタバーコーディングを用いて推定した魚類環境DNA濃度を基に,河川環境健全度(様々な生態的特性をもつ魚類が生息可能である河川環境の多様度)の指標となる生物的指数を算出し対象区間の河川環境健全度評価を行うことを目的とした.結果として,人為的な改変が相対的に少ない下流区間は,上流区間よりも多くの項目について生物的指数が高く,河川環境健全度が相対的に高いことが示された.また,上流区間においても,相対的に河川環境健全度が高い地点があることが明らかとなり,保護・修復すべき河川区間の優先順位付けが可能であることが示された.これらの結果から,環境DNA定量メタバーコーディングを用いて同一日,多地点観測により効率的な河川環境健全度評価が可能になることが明らかとなった.
著者
宮平 秀明 宮園 誠二 赤松 良久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.251-256, 2023 (Released:2023-10-31)
参考文献数
21

流域における外来沈水植物の季節的な繁茂特性を把握することは,季節を通して繁茂する外来沈水植物群落を特定し,繁茂抑制対策を考案するうえで重要となる.しかし,流域網羅的に外来沈水植物の季節的なモニタリングを行うには,多大な時間や労力を要する.そこで,本研究では,効率的な生物モニタリング手法である環境 DNA 分析を用いて,水系スケールにおける外来沈水植物オオカナダモの季節的な繁茂特性を検討することを目的とした.本研究では,オオカナダモの異常繁茂が報告されている江の川水系を対象に,環境 DNA 分析を用いてオオカナダモの生長期及び衰退期の繁茂状況の把握を行った.さらに,衰退期から生長期にかけたオオカナダモ環境 DNA の濃度差と環境要因との関係を検討した.結果として,土師ダム下流区間において環境 DNA 濃度の増加が大きく,オオカナダモ群落面積の増加が相対的に高い傾向がみられた.さらに,衰退期から生長期にかけてオオカナダモが河床勾配の緩やかで,休眠期の河川水温が相対的に高い河川区間で増加しやすいことが示唆された.