著者
高田 知紀 梅津 喜美夫 桑子 敏雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_167-I_174, 2012 (Released:2013-01-30)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1 5

東日本大震災では,多くの神社が津波被害を免れたことが指摘されている.本研究では,日本の神社に祀られる祭神の多様性は,人びとの関心に応じた差異化の結果であるという仮説から,宮城県沿岸部の神社についてその祭神と空間的配置に着目しながら被害調査を行った.祭神については特に,ヤマタノオロチ退治で知られるスサノオノミコトに着目した.スサノオは無病息災の神として祀られることから,洪水や津波といった自然災害時にも大きな役割を果たすと考えられる.また,地域の治水上の要所に鎮座していることが多い.東北での調査から,スサノオを祀った神社,またスサノオがルーツであると考えられる熊野神社は,そのほとんどが津波被害を免れていることを明らかにした.この結果は,地域の歴史や文化をふまえたリスク・マネジメントのあり方について重要な知見を提供する.
著者
松本 敬司 福岡 捷二 須見 徹太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_793-I_798, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
9

The Tanaka, Sugo, Inadoi retarding basins which are located along the Tone River have an important role on flood control in the lower Tone river. The lower Tone River has some flood control problems such as flood discharge capacity of the river. In this paper, we developed the unsteady two-dimensional analysis of flood flows using the time series data of observed water surface profiles in the Tone River including the three retarding basins. The calculation model provides a good explanation for flood storage volume in the three retarding basins of 2001 and 2007 floods. Some remarks are given to calculate correct hydrographs of flood storage volume in retarding basins.
著者
梯 滋郎 中村 晋一郎 沖 大幹 沖 一雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_1489-I_1494, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
10

In Japan, safety degree against flood is said to have increased by river improvement. However, frequently flooded areas still exist. This means that frequently flooded areas has some characteristics which prevent river improvement. Therefore it is important to clarify the distribution and characteristics of frequently flooded areas for thinking about future river improvement plans.In this research, we clarified the distribution of frequently flooded areas in Japan, using flooded area maps. As a result, it is clarified that most frequently flooded areas exist in narrow valley plains, and the reason why such areas are still flooded is difficulty of embankment.
著者
大山 璃久 佐藤 辰郎 一柳 英隆 林 博徳 皆川 朋子 中島 淳 島谷 幸宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.II_135-II_141, 2019 (Released:2020-03-16)
参考文献数
22

小水力発電は有望な分散型の再生可能エネルギーであり,日本各地への導入が期待されている。小水力発電は環境負荷が小さいと考えられているが,減水区間が生じるため,河川生態系の影響を正しく評価しておく必要がある.本研究では,小水力発電による減水が渓流生態系にどのような影響を与えるのかを定量的に明らかにするため,底生動物を指標として渓流のハビタット類型ごとに減水の影響度合いを評価した.研究の結果,加地川では,全ての渓流ハビタットにおいて減水による底生動物個体数,分類群数,及び生物の群集構造への影響は認められなかった.加茂川では,一部ハビタットにおいて減水区間の底生動物個体数及び分類群数が減少しており,生態系の変質が示唆された.原因として,砂防堰堤から取水されるため,土砂供給量減少が考えられた.
著者
高田 知紀 高見 俊英 宇野 宏司 辻本 剛三 桑子 敏雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_123-I_130, 2016

本研究の目的は「延喜式神名帳に記載された式内社は,大規模自然災害リスクを回避しうる空間特性を有している」という仮説にもとづいて,特に四国太平洋沿岸部における南海トラフ巨大地震の想定津波浸水域と延喜式内社の配置の関係性を明らかにすることである.<br> 高知県沿岸部777社,徳島県沿岸部438社について,それらの津波災害リスクについてGISを用いて分析を行ったところ,高知県では555社,徳島県では308社が津波災害を回避しうる結果となった.さらに,式内社について分析したところ,沿岸部に位置する式内社はそれぞれ,高知県内18社,徳島県内30社であり,そのうち津波災害のリスクがあるのは,高知県2社,徳島県2社の合計4社のみであった.この結果から,古来,信仰の中枢であり,また国家から幣帛を受ける官社であった式内社は,数百年に一度で襲来する大規模津波についても,その災害リスクを回避しうる立地特性を有していると言える.
著者
鯉渕 幸生 小野澤 恵一 中村 格之 原本 英二 片山 浩之 古米 弘明 佐藤 愼司 岡安 章夫 磯部 雅彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.886-890, 2005-10-07 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

お台場海浜公園周辺において, 栄養塩類, 大腸菌, アデノウイルスなど雨天時越流水起源物質の時空間変動過程を詳細に観測した. 微生物の変動傾向は, 栄養塩類のそれとは異なり, 大腸菌については数mmの降雨でも, 降雨後数日間にわたって遊泳には不適切な糞便汚染を疑わせるレベルとなった. これらの微生物は下水管路内の堆積物に存在していると考えられ, 降雨量よりも先行晴天日数により濃度が大きく変動する. 現在では, 糞便性大腸菌群数により感染リスクを評価しているが, 細菌類とウイルスの変動過程は異なるため, 今後はアデノウイルス等の観測結果を蓄積することが, 都市沿岸域での感染リスクを正しく評価するために望ましいと考えらえる.
著者
奥村 友利愛 吉城 秀治 辰巳 浩 堤 香代子 今里 鈴花
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_911-I_922, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
27

人々にとって身近な移動手段である路線バスは誰にでも使いやすいものであることが望まれる.しかし多くの場合,基本的な情報が利用者にわかりやすい形で提供されておらず,そのため乗る際の心理的抵抗が大きいと指摘されるような状況にある.そこで本研究では,バス利用に関わる案内の中でも路線図に着目し,デザインの観点からその実態を把握し,路線図のデザインと人々の「わかりやすさ」との関係を明らかにすることを目的とし評価実験を行った.そのためにまず全国に存在する241件の路線図に対してクラスター分析による類型化を行い6パターンに分類した.そして各パターンの路線図に対して経路探索による評価実験を行い,路線図を見る際の人の挙動と意識の面からわかりやすさに関する要因について明らかにした.
著者
松本 敬司 中井 隆亮 福岡 捷二 須見 徹太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_1477-I_1482, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1

The Watarase retarding basin which is located in the lower Watarase River has an important role on the flood control in the Tone River. The design flood discharge of a period of about 30 years hereafter in the Tone River is 14,000m3/s at the Kurihashi of the Tone River.In this paper, the flood control functions of the Watarase retarding basin are investigated by the flood flow analysis when the peak flood discharge under various discharge hydrographs is about 14,000m3/s at the Kurihashi in the Tone River. It is shown from the calculation that the Watarase retarding basin reduces peak flood discharge and delays the peak occurrence time at the Kurihashi by storing flood discharge flowing back to the Watarase River from the Tone River. Furthermore, some remarks are given for the enhancement of flood control functions of the Watarase retarding basin.
著者
兵藤 哲朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.110-112, 2021 (Released:2021-06-20)

新型コロナウイルス感染症,いわゆるCOVID-19の感染拡大は,土木計画学分野の研究者が研究対象としてきた都市活動,交通行動,経済・産業活動に対して大きな影響をもたらした.ついては本特集は,土木計画学研究委員会が主催し2020年8月8日に開催した「COVID-19に関する土木計画学研究発表セミナー」での発表論文を中心として,COVID-19の感染拡大に伴うそれらの諸行動,諸活動,ならびに諸対策にまつわる各種の土木計画学研究を掲載するものである.
著者
藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木學會誌 (ISSN:0021468X)
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.50-51, 2012-09-15
著者
小池 淳司 平井 健二 佐藤 啓輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.388-399, 2012 (Released:2012-12-20)
参考文献数
23
被引用文献数
3

道路整備は,人やモノの移動時間を短縮させ,中長期的には,産業の活性化,人口集積など地域の社会・経済構造を変化させる.一方,そのような社会的メリットは,全国一律に享受できるものではなく沿線地域を中心に偏在化し,地域によっては,地元企業の衰退等のデメリットが存在することも知られている.この発展する地域・衰退する地域がどのように分かれるかは,今後の道路整備を考える上で重要な要素であり,客観的な分析が求められる.本研究では,中国地方の過去の高速道路整備が人口構造や産業活動に与えた影響を固定効果モデルにより事後的なパネルデータ分析を行った.その結果,高速道路と産業活動との間には,多くの地域で正の関係性が確認される一方で,人口構造との間には,地方部での負の関係性があることなど空間的な偏在化が示された.
著者
室城 智志 中谷 隼 栗栖 聖 森口 祐一 花木 啓祐
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.II_221-II_228, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
37
被引用文献数
1

関東地方における耕地へのソーラーシェアリング(農地において営農を継続しながら太陽光発電を行う技術)の導入を検討する.作物類別に遮光への適応性が異なることを考慮し,パネルの設置比率と減収率の関係を定式化した.また,農作物の作付面積に対して,許容される減収率や地域の系統連系の空容量などの制限因子を考慮した発電ポテンシャル量を推計した.推定の結果,関東地方におけるソーラーシェアリングの導入賦存量は定格容量で65.1GW,年間発電量は69,118GWh/年であった.制約条件を考慮した導入ポテンシャルの算出結果から,電力系統への連系に関する制約条件によって最も強い制約を受けることが分かった.地域全体の収量を維持する制約条件では,農作物の導入優先度を設定し,減収分は各都県内の耕作放棄地で営農を再開することで導入ポテンシャルは最大化されることがわかった.また,ソーラーシェアリングは従来の耕作放棄地における通常太陽光発電設備の導入以上のポテンシャルを持つことが明らかとなった.
著者
三木 千壽 平林 泰明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.518-532, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
9
被引用文献数
4 12

製作時に残された溶接欠陥や不適切な溶接などの不具合を原因として鋼製橋脚や鋼橋に生じた疲労損傷の実例を示すとともに,そのような不具合が生じる原因や防止対策を検討している.疲労損傷に至った不具合のほとんどは完全溶け込み溶接を不完全溶け込み溶接で施工するなど示方書の規定に反する施工に起因するものであり,溶接施工が難しい,あるいは品質の確認が困難な継ぎ手ディテールの採用がそのような不具合を引き起こす原因となっている.
著者
江本 久雄 馬場 那仰 浅野 寛元 長瀬 大和
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.1, no.J1, pp.514-521, 2020-11-11 (Released:2020-11-18)
参考文献数
12

コンクリート構造物の点検等においてコンクリート内部の劣化の状態を調査する方法として,打音検査がよく用いられる.この手法は,熟練技術者にとっては非常に有効な手法であるが,若手技術者やロボットへの適用を検討するとその音データと劣化の程度の関係の複雑性により定量化・システム化が非常に困難である.このような問題では,明らかとなっていない要因が含まれていると考えられる.しかし,工学的な定量化・システム化に取り組み,実務での有効な技術の開発も重要である.そこで,近年このような課題に対して AI技術の活用が期待されている.ここでのAI技術は機械学習を意図し,その中でも特にニューラルネットワークを基礎とする深層学習を主な対象とする.本研究は,機械学習による識別の手法の有効性や自己符号化器の適用方法について検討をしたものである.
著者
中川 大 松中 亮治 大庭 哲治 中山 偉人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1357-I_1363, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
9

現在,日本の多くの都市において,公共交通空白地帯の解消を目的としたコミュニティバスが運行されている.コミュニティバスには法律上の明確な定義はなく,自治体と事業者の費用負担も様々である.そこで本研究は,運行事業者の違いや自治体の費用負担の仕方の違いなどに着目してコミュニティバスの運行費用との関係を分析することを目的とし,京都府内の21自治体を対象にアンケート調査およびインタビューを実施し,運行にかかる総費用と運賃収入について分析した.その結果,地域の運行協議会により運行されるコミュニティバスの運行費用は,従来から独自に定時定路線運行をしてきた路線バス事業者により運行されるコミュニティバスよりも走行時間あたりの運行費用が安いなど,運行事業者の違いが運行費用に影響を与えていることを明らかにした.
著者
関谷 直也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1-I_11, 2012 (Released:2013-01-30)
参考文献数
15

日本の防災対策は「想定」を前提とした訓練,ハザードマップ,防災教育や災害時の情報伝達などの手段で避難を促すというソフト対策に過度に重点が置かれている. 結果,ありとあらゆるところに想定を設け,それにのっとって対策を整えるという「想定主義」に陥っている.そして避難についても,現実的な解を見つけるというより「原則車避難禁止」「危機意識をもって急いで逃げれば被災は回避できる」といった避難の課題を人々の防災意識に帰結する「精神主義」が跋扈している.また,あらゆる災害対策の前提となる被災の原因の検証についても,メディアで言われていることや思い込みで仮説を構築し,そこから改善策を検討・導出してしまう「仮説主義」に陥っている.だが,実際に調査検証が進むに従って,そもそも仮説自体が誤っているといったことが多くみられる. これら日本の防災対策の問題点は東日本大震災を踏まえても何も変わっていない.「想定」を重視するのではなく行動の規範を考えること,精神論だけを強調するのではなくハード対策とソフト対策のバランスという原点に立ち返ること,メディアの論調や思い込みではなく,予断を持たず,徹底的に東日本大震災の被災の現実に,科学的実証的に向き合うことが求められる.
著者
桐山 久 高畑 陽 大石 雅也 有山 元茂 今村 聡 佐藤 健
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.612-622, 2010 (Released:2010-11-19)
参考文献数
23

石炭系炭化水素に由来するベンゼン汚染が帯水層まで拡がった石炭ガス製造工場跡地に対して,既存の原位置浄化技術の適用性を評価した.透水性が比較的小さいなどの地盤特性からエアスパージング工法が適していると判断されたが,第二帯水層への適用方法と浄化期間の短縮方法が課題となった.そこで,二層式井戸を用いたエアスパージング工法を採用し,揚水循環併用バイオスパージング工法を当該工法の実施後に適用した.その結果,約2年間で地下水中のベンゼン濃度は環境基準値近くまで低減し,ベンゼン除去率は99.9%以上に達した.実サイトにおける浄化速度を評価して浄化予測手法の検証を行った結果,スパージング風量,通水量と地下水中のベンゼン濃度には相関関係があり,詳細な浄化予測を行うことが可能と判断された.
著者
吉岡 佐 栗栖 聖 花木 啓祐
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_691-III_702, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
49

江戸城外濠におけるアオコの発生などによる悪臭,景観への影響を改善するために,水質改善シナリオを設定し,その効果の検討とコスト評価を行った.まず,改善シナリオを設定するにあたり,水質改善事業の事例,技術,対象地域の水資源,水収支,流入負荷の把握を行った.これらを元に,目標を達成出来ると考えられるシナリオを設定し,生態系モデルを用いた水質シミュレーションによりその効果を推定した.その結果,夏期におけるアオコの増殖を抑えるための最低導水量として9,461 m3/日を得た.また,各シナリオのライフサイクルコストを算出し,外濠グラウンド付近にサテライト処理場を設置するシナリオにおいて,2.0×102(百万円/年)と最も低いコストとなることを明らかにした.