著者
宮崎 丈史 都築 和香子 鈴木 建夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.217-224, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
11
被引用文献数
9 11

サツマイモの表皮色はその市場評価を高めるうえでの重要な品質要因となっている. 表皮の鮮やかな赤色はアントシアニンによるものとされているが, これについての研究はきわめて少なく, その化学構造についても一部が明らかにされているにすぎない. Imbertら(4) は, サツマイモの茎の赤色色素について調査し, その主要成分をジカフェオイル-シアニジン-3-ジグルコシド-5-グルコシドおよびジカフェオイル-ペオニジン-3-ジグルコシド-5-グルコシドと報告している. 一方,塊根内部が紫色のサツマイモは, 一部の品種についてその主要なアントシアニン ('Yen217':カフェオイル-フェルロイル-シアニジン-3-スクロシド-5-キシロシド) が同定されている (9).アントシアニンは, 近年, 天然の着色料として食品への利用が急速に増加しているだけでなく, 抗酸化能などを有する機能性物質としての検討も開始されている (10). そこで著者らは, 高品質なサツマイモの生産,貯蔵に関する研究およびアントシアニンの利用に関する研究の一環として, わが国における青果用サツマイモの主要品種である'紅赤'と'ベニアズマ'の表皮を用い,これらの表皮色を構成している色素であるアントシアニンの構造の同定を試みた. 本報告では, その結果とともに, 紫サツマイモの代表的な品種である'山川紫'と'種子島紫'の塊根のアントシアニン組成についても述べる.
著者
宮崎 丈史
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.649-656, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
17
被引用文献数
9 13

サツマイモの主要な品種である‘紅赤’と‘ベニアズマ’について, その成分および加熱後の食味などに及ぼすキュアリング処理や貯蔵条件の影響を検討した.1. 収穫時におけるデンプン含量は,‘紅赤’が23~26%,‘ベニアズマ’が27~30%であった. 糖含量は両品種とも約2%であり, 組成的にはショ糖が大部分であった. また, 還元糖は, とりわけ‘ベニアズマ’では少なかった.2. 収穫直後のキュアリング処理によって両品種のショ糖含量は約4%に増加した. 13°C貯蔵中, キュアリング処理区においては糖の変化が少なかった. しかし, 無処理区ではショ糖は1か月後まで徐々に増加して約4%まで達すると,‘ベニアズマ’ではその後変化しなかったが,‘紅赤’では4か月後より再び増加して6か月後には8~10%に達した. また,‘紅赤’のショ糖含量は貯蔵温度による影響が認められ, 低温ほど増加する割合が大きくなった.3. 貯蔵中におけるショ糖合成酵素の活性変化はショ糖含量の変化と関連する傾向が認められたが, その寄与については明確な結論が得られなかった.4. ポリシート包装によって貯蔵湿度は98%程度に保持され, 貯蔵中の重量減少が抑制されるとともに, ‘紅赤’ではショ糖や有機酸の変化が少なくなった.5. サツマイモは加熱により, 収穫時の‘紅赤’では7%,‘ベニアズマ’では14%のマルトースを生成した. 加熱した‘ベニアズマ’は, 収穫時には粉質であるが貯蔵中に粘質化する傾向を示した. マルトースヘ転化するデンプンの割合は貯蔵中にやや増加したが, 粉質•粘質というテクスチャーと糖およびデンプンの変化とは十分な関連性が認められなかった.