著者
宮崎 友香 佐々木 直
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1075-1084, 2010-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12

本症例は52歳女性のパニック障害の既往歴のない広場恐怖を併発したメニエール病患者で,内耳治療,向精神薬服用により心身症状が軽快したが,向精神薬を減薬すると不安や身体症状が悪化し,減薬ができないまま経過していた.そこで,認知行動療法のうちエクスポージャーによる回避行動の消去,認知再構成法による身体症状を過剰に危険なものととらえる認知の変容などを行った.その結果,維持・増悪要因となっていた予期不安が改善し,広場恐怖が消失したため心身症状の顕著な改善に至り,薬物療法の終了が可能になったと考えられた.本症例によって,心理社会的要因が関与するメニエール病に対する認知行動療法の有効性が示唆された.