著者
福田 千紘 但馬 秀政 宮崎 智彦
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成23年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.5, 2011 (Released:2012-03-01)

昨年、含銅リディコータイトが出現し、 国際的に“パライバ・トルマリン”の定義についての議論が再燃した。これらはEDXRFの実測値において明らかに Ca>Naであり、これまでのエルバイトとは異なり、含銅トルマリンとしては初めてリディコータイトに属するものであった。 LMHCや国内のAGLにおいて慎重に議論された結果、これらも“パライバ・トルマリン”としてカテゴライズされる方向にある。本報告では、パライバ・トルマリンの産出地ごとの外観および化学的特徴を総括し、最近出現した含銅リディコータイトの詳細な化学分析の結果を紹介する。 1980年代後半に含銅トルマリンが最初に発見されたブラジルのパライバ州Sao Jose da Batalha地域のMina da Batalha鉱区のものは、鉱物学的にはエルバイトに属していたため、以降パライバ・トルマリンは銅およびマンガンを含有する青~緑色のエルバイトとされてきた。この地の青色含銅トルマリンのCuO含有量は、我々の蛍光X線分析(日本電子製JSX3600M)による実測値では2~2.9%であった。その後1990年代以降主流となったリオグランデ ド ノルテ州の2つの鉱山のうち、Mulungu鉱区のもののCuOの含有量は、0.6~1.8%で、Alto dos Quintos鉱区のものは0.5~4.9%であった。2000年代に入って発見されたアフリカのナイジェリア産の青色含銅トルマリンには、比較的CuO含有量が少なく、PbOの含有を特徴とするいわゆるタイプ_II_と蛍光X線分析ではブラジル産と化学的に識別が不可能なタイプ_I_が存在する。2005年の中頃、モザンビークのAlto Lingonha地域から産出するようになった含銅トルマリンは、比較的CuOの含有量が少なく、0.20~0.9%で淡い色調のものが多い。最近になって産出が知られるようになった含銅リディコータイトはCuOを0.2~0.6%含有しており、同時にPbOを0.1~0.2%含有しているのが特徴である。