著者
福田 千紘
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.21, 2018 (Released:2018-06-24)

ガラスは古代より装飾品として使用されており各所の遺跡の出土品からも様々な形態の装飾品が報告されている。現在は天然素材を用いた宝飾品が高く評価されるためガラスを用いた装飾品は主にアクセサリーとして流通している場合が多い。 19 世紀頃からは装飾品にするために様々な工夫を凝らした特殊なガラスが製造されていた。本研究では主に 19 世紀から 20 世紀中ごろまでに製造されたいくつかの特殊な外観を呈するガラスについて主に化学組成と特徴を報告する。今回入手した試料はそれぞれサフィレット、アイリスグラス、ドラゴンブレスと呼ばれ流通しているガラスである。サフィレットは19世紀にチェコで製造され、その後製法が途絶えてしまったが 20 世紀に入ってから旧西ドイツで復刻生産されたと報告されている。主に青色透明で背面に反射膜を有するものと無い物が存在する。強い自然光や人工光下で褐色に見え一見すると変色性のような特徴を持つ。アイリスグラスはアイリスクォーツを模して造られたガラスで無色のガラスに赤、青、緑系の各色ガラスが混入されている。背面には反射膜を有する物と無い物が存在する。ドラゴンブレスは主に赤~オレンジ色を呈するガラス中に不規則な青色の干渉色を呈する事を特徴とし背面には反射膜を有する。EDXRF にて組成を分析した結果、主要成分はいずれも Pb、 Si、 K に富み B に乏しく、一般的に”クリスタルガラス ”と 呼ばれるガラスであった。また着色原因と考えられる元素としてサフィレットからは Fe、 Cu、アイリスグラスからは Cu、ドラゴンブレスからは Se がそれぞれ微量検出された。アイリスグラスの赤色部は紫がかった色調から金コロイドによる着色が考えられるが Au はXRFでは検出出来なかった。そこで可視分光分析を行い現在生産されている金コロイドの赤色鉛ガラスと比較した。また、サフィレットはその外観から何らかの金属コロイドの存在が考えられこれの検出を試みた。ドラゴンブレスは 2 層の異なる組成のガラスから構成されておりガラス組成の差と境界面の構造から青色の干渉の原因を考察した。
著者
福田 千紘 宮﨑 智彦 Lee Bo-Hyun
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成26年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.6, 2014 (Released:2014-10-01)

エチオピアからは 1994 年ごろにオパール の 産 出 が 報 告 さ れ て い る (KoivulaJ.I.,et al 1994).2008 年前半には Wollo地区において豊穣な鉱床がみつかり,多量のカット石が市場に供給されている(Rondeu.,et al 2010).また 2013年初め頃に原石のままでの輸出が禁止されたと報じられた(Addis Fortune Jan. 2013).これらは主に色調が無色∼白色から淡黄色∼褐色を呈し,半透明∼不透明まである.オーストラリア産オパールにみられる強い青白色の紫外線蛍光や燐光はほとんど認められず弱い青白色の蛍光が認められる.ほかの産地のオパールに比べて多孔質で日常の取り扱いで重量が変化しやすい個体が多く見受けられる. 2013年初めごろから暗黒色不透明なエチオピア産オパールとされるブラックオパールに似たオパールが流通し始めた.これらは売り手の情報によると処理を施してあり,酸と有機物を用いて黒色化しているとのことである.価格も処理を施されていない同産地のオパールよりも割高で明らかにブラックオパールを模して製造されていると推定される.外観はオーストラリア産ブラックオパールとは異なる独特の鮮やかな遊色とわずかに褐色を帯びた漆黒の地色を呈し,従来から知られている砂糖液処理やスモーク処理の処理オパールとも異なる.またあまり小さなカット石は存在せず数カラット以上の比較的大きく厚みのあるルースのみ存在する点も特徴的と思われる.透過光では暗赤色を呈する試料が多く,拡大検査にてスクラッチ状または斑点状の黒色の色だまりがみられる個体が多い.試料を切断したところ内部まで黒色で外形に沿った色の濃淡が認められた.これは内部まで処理の効果が及んでいることと原石のまま処理するのではなくカットして完成品に近い形状に仕上げた後に処理を施し表面を再研磨していることを示唆すると考えられる.色の起源に関してはアモルファスカーボンが原因との報告があり(Williams 2012),本研究でもアモルファスカーボンの存在を追認した. さらに今年に入ってから様々な色調に着色されたエチオピア産とされるオパールが流通し始めた.これらはファイアオパールに似せた黄色∼オレンジ色系のものと天然には存在しない地色が青色系,ピンク色系を確認した.これらは有色樹脂の含浸が疑われたが近赤外分光分析の結果,樹脂は検出されず色素を用いた着色処理であることが判明した. 本研究では黒色の処理オパールとそのほかの色の着色オパールの鑑別上の諸特徴を報告するとともに処理の再現実験の途中経過と暫定的な結果も報告する.
著者
林 政彦 安藤 康行 安井 万奈 山崎 淳司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成24年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.6, 2012 (Released:2012-09-30)

ブルー・オパールは大変綺麗な色調であり,人気のある宝石の一つである。その中に変色するものがあったので、その原因について報告する。 この変色は、標本ケースに入れた状態で生じており、ケース内部が青色になってしまっていることから、オパールから染み出てきたことによることは明らかである。そこで、変色した標本について、X線粉末回析実験とエルギー分散型EPMA により化学組成の分析を試みたので、それらの結果を報告する。 (1)X線粉末回折実験 装 置 ・リガク製X線ディフラクトメータ RINT ULTIMA3 条 件 ・X線源:Cu Kα ・電圧/電流:40kV / 20mA 結 果 非晶質のシリカの回折パターンを示す。いわゆるOpal-CTである. (2)エルギー分散型EPMA 装 置 ・日本電子製JSM-6360 + OXFORD製INCA EDS 条 件 ・加速電圧:15 kV ・測定範囲:20 mm ・積算時間:60 sec 結 果 銅と塩素が検出された. 以上の結果から,青緑色を呈する塩化銅(Ⅱ)のニ水和物によって着色されたオパールと思われる。 なお、無水の塩化銅(Ⅱ)は黄褐色である。 流通しているブルー・オパールのネックレスで、身に着けている間に黄色に変色した報告もある。これは,塩化銅(Ⅱ)のニ水和物が脱水して無水になったためと考えられる。塩化銅が人為的に含浸させたものかどうかは不明であるが、流通しているブルー・オパールの取扱いには注意が必要である。
著者
岡本 信一 平岡 英一 辻井 幸雄 古田 純一郎
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.59-65, 1983-12-15 (Released:2017-01-16)

Neutron radiography was used for examination of the inner parts of a pearl as one of non-destructive methods. The neutron radiography is similar to the radiography by X-rays and gamma-rays from the radio-isotopes such as Co-60, Ir-192, and Yb-169. Thermal neutrons are used for neutron radiography. The mass absorption coefficients of water and organic materials for thermal neutrons are extremely larger than those of other pearl materials (CaCO_3, MnCO_3, ……). The neutron radiographs of blue and black pearls are compared with their X-rays and gamma-rays radiographs. The former are better and sharper than the latters. The exposure methods for photographic detection of neutron imaging are described in this paper.
著者
川崎 雅之
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成24年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.7, 2012 (Released:2012-09-30)

地球表層には大量のシリカ鉱物、特に石英(水晶)が存在しているが、地球外物質(隕石、月、火星など)には極めて少ないことが既に知られている。実際、隕石中に含まれている鉱物は珪酸塩鉱物(かんらん石、輝石、長石)と鉄ニッケル合金が中心であり、シリカ鉱物は一部の隕石に少量報告されている程度である。 太陽系形成の初期において、惑星は高温の溶融状態にあり、その後の冷却過程で核・マントル・地殻に分化している。核には主に鉄(+ニッケル)が、マントルにはかんらん石や輝石が濃集し、地殻には玄武岩が形成された。月の地殻は斜長岩と玄武岩である。水星・金星・火星では地形と分光分析により、その地殻は玄武岩質と推定されている。一方、地球の地殻は海洋地殻と大陸地殻に分けられ、海洋地殻及び大陸地殻下部は玄武岩質であるが、大陸地殻上部は花崗岩質である。 シリカ(SiO2)はNa、Mg、Ca、Alなどと共に容易に珪酸塩鉱物を形成するので、シリカ鉱物が存在するためには、それらの元素以上に過剰なSiO2が必要である。玄武岩中のSiO2量は少なく、シリカ鉱物とは共存しない。一般的にシリカが単独で存在し得る火成岩はSiO2量の多い花崗岩である。月物質の一部に石英を含む花崗岩が確認されているが、量は少なく、他天体を含めても、水晶の存在は希である。分化によってできる地殻を構成するのは主に玄武岩ないし斜長岩であり、量的に花崗岩はできにくい。マントルのかんらん岩が部分溶融してできるマグマも玄武岩質である。他天体の地殻が花崗岩よりSiO2量の乏しい岩石で構成されていれば、そもそも水晶が存在しにくい。むしろ、地球の地殻において水晶が多い理由は大量の花崗岩が存在することにあると言える。 では、花崗岩はどのようにしてできたのか? 実験から水の存在下で玄武岩が部分溶融すると、できたマグマはSiO2量に富む安山岩~花崗岩質マグマであることがわかっている。玄武岩質の海洋地殻は中央海嶺で生成され、プレートの沈み込み帯で地球内部に入り込み、大量の水をスラブ(沈み込んだ海洋プレート)上側のマントルに放出する。その水が地殻下部を部分溶融させ、SiO2量の多い安山岩質~花崗岩質マグマを形成している。 元々、地球は金星、火星や月に比べて、水に富んだ星である。惑星の分化が進んだ時点で、海洋が存在し、プレートの動きに従い、地球内部と地表との間で水の循環が成立している。その結果、地殻下部への水の連続的な供給が安山岩~花崗岩質マグマの形成を促進し、大陸の成長につながったといえる。他の天体ではプレートの動き(プレートテクトニクス)は無かったか、あるいは限定的であったと考えられている。 地球表層の豊富な水は地殻上部でも循環し、熱水作用により、SiO2の単結晶、すなわち水晶を大量に形成した。地球が他天体(月や地球型惑星)に比較して、水が豊富であったこと、プレートテクトニクスにより水の循環が容易に行なわれたことが、地殻上部における水晶の形成につながった。 大昔、水晶を見た人々は「水晶は透明な硬い氷である」と考えた。今日、我々は水晶が氷ではなく、SiO2の結晶であることを知っている。しかし、水晶の形成過程を見れば、「水晶こそ水が作った結晶である」と言えるのである。 もちろん、これは水晶だけに当てはまるのではない。花崗岩に伴う鉱物、水から晶出した鉱物はすべて水の賜物である。2008年、アメリカのHazen et al.は鉱物進化論を唱えた(Amer. Mineral., 93, 1693;日経サイエンス2010年6月号)。地球の進化(起源、分化、大陸の形成、生命との共進化)の過程に応じて、新たな鉱物形成プロセスが生まれ、鉱物の種類が増えてきた。特に生命の発生が地球大気を酸化的にしたことの影響が大きいという。大陸の形成、生命の発生・進化に水が必須であることから、水の存在こそが鉱物の多様性を生み出した原動力と言えるだろう。水晶の普遍性はその結果の一つである。 (地球惑星科学連合2012年大会で発表)
著者
下村 道子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.34, 2012

美しく輝く宝石は古代から人々を魅了し続けている。古代ギリシアの哲学者は宝石の成因や性質の違いについて思索したが、1世紀のプリニウスは『博物誌』のなかで宝石の色や性質や産地のほかに、様々な伝説や効能や神秘的な力を記述した。その後、中世ヨーロッパでは宝石の美しさよりも神秘的な力や効能が増幅され、魔力や薬効を列挙した「鉱物誌」と呼ばれる文学のジャンルの書物が広く流布した。16世紀になると、現在では「鉱物学の父」と呼ばれているドイツのゲオルグ・アグリコラが、科学的な観察に基いて『鉱物の性質について』を著わした。しかし「鉱物誌」の神秘的な力や薬効が完全に払拭されたわけではなかった。そしてその後、科学の発展によって18世紀ころから近代的な鉱物や宝石に関する著作が次々に出版されるようになり、19世紀末にイギリスで宝石学の教育が始まった。<br>こうした宝石学の歴史のなかで、16世紀のイギリスのエリザベス1世の宮廷肖像画家の一人であり金細工師でもあった画家ニコラス・ヒリヤード(1546/7-1619)が著わした文書は注目に値する。彼は宝石の熱処理、各種宝石の色変種、ダイヤモンドの輝きとカット、ダイヤモンドと類似石の識別方法など現代の宝石学に通ずる情報を自分の経験に基いて詳細に記述しているのである。また16世紀のイタリアの彫刻家であり金細工師であったチェッリーニや、17世紀初期のイギリスの金細工師による著述と比較・検討することも興味深い。
著者
北脇 裕士 堀川 洋一 小豆川 勝見 野川 憲夫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-19, 2014

Two slightly orangy pink morganites with residual radioactivity were studied. The dose rate of the samples, measured by a scintillation survey meter, ranged from 0.15 to 0.35 μSv/h. Although this radioactivity was likely not hazardous, it was above the recommended exposure limit set forth in 1990 by the International Commission on Radiological Protection. To identify the radionuclides, gamma rays from the samples were measured using a Ge(Li) semiconductor detector. The activation products ^<134>Cs, ^<54>Mn, and ^<65>Zn were detected, proving that the samples had been artificially irradiated with neutrons.
著者
阿依 アヒマディ 郷津 知太郎 蜷川 隆
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成22年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.12, 2010 (Released:2011-03-03)

オリンピック・サンストーンと称されている赤色アンデシンの色の起源に世界から関心が寄せられている中で、多くのジェモロジストは当該色が銅による拡散加熱処理によるものではないかと疑っている。その真偽を突き止める為に、中国のチベットと内モンゴル自治区の鉱山を調査した。その結果、チベットでは赤色(稀に緑色)のアンデシンが実際に産出され、内モンゴル自治区の固阳県の鉱山では淡黄色のみのアンデシンしか産出されていないことが確認できた。また、大量に生産された内モンゴル産アンデシンは拡散加熱処理(人為的な着色)の原材に利用されているこという確かな情報が得られた。 採集した両産地のアンデシン試料と中国国内で銅による拡散処理が施されたことが確実な赤色アンデシンを比較してみると、それらの宝石学的特性値や化学組成値はほとんど同じであり、斜長石の一種であるラブラドライトとアンデシン組成境界付近に分布するCaを富んだアンデシンであることが分かった。しかし、内部組織の観察では、チベット産赤色アンデシンと拡散処理した赤色アンデシンに明瞭な差異がなく、両者の識別は非常に困難である。また、LA-ICP-MS法で分析した微量元素であるBa/SrとBa/Liによる化学フィンガープリントから、多くのチベット産天然試料は拡散処理試料と異なる分布領域を示すが、一部に重複が見られ、完全な識別法の確立は今後の重要な課題として残されている。本研究では、熱ルミネセンス分析法を用いて、試料からの発光量を測定し、天然と処理したアンデシンの区別を試みた。 主に鉱物の周囲に分布する放射性元素起源の放射線(α線,β線,γ線)によって、結晶中の電子が励起される。この電子が格子欠陥等からなる捕獲中心に捕らえられた場合、これを捕獲電子と呼ぶ。この様な結晶を加熱した場合、格子の熱振動によって捕獲電子は再度伝導帯に励起され、結晶中を移動した後、発光中心の正孔と再結合する。この際に発光する光を熱ルミネッセンス(Thermoluminescence : TL)という。 鉱物がある程度の期間(環境中の線量に依存するが、およそ数千年、またはそれ以上)天然の環境におかれている場合、自然放射線により鉱物中に捕獲電子が蓄積され、加熱により熱ルミネッセンス(natural TL)が観測される。一方で、天然から採集した鉱物に人為的な加熱を加えた場合(およそ500℃前後で数分程度)、捕獲電子は正孔と再結合するために熱ルミネッセンスは観測されなくなる。 今回の研究に、チベット産天然赤色試料7点、内モンゴル産天然淡黄色試料2点、中国から提供されたCuによる拡散加熱処理試料3点、GIAによるCu拡散加熱実験試料1点を分析の対象とした。岡山理科大学理学部に設置された熱ルミネッセンス測定装置(浜松ホトニクス製光電子増倍管R762,フィルター:Corning 4-69,Corning 7-59)を使用した。試料の一部を粉末にし、加熱試料板に載せ、常温から450°までの熱ルミネッセンスのグロー曲線を測定した。 分析の結果、チベット産と内モンゴル産アンデシン試料に、300~450℃の間に極大な発光ピークを示した。Cuによる拡散加熱処理の試料には、このような強い発光強度がなく、弱いかまたは発光しないグロー曲線が確認できた。この減少することに着目すれば人為的に加熱の有無を判断することができると推定される。しかし、加熱処理をしたにも関わらず発光するのはこの発光が自然放射線の照射によって生じた発光ではなく、酸素等の吸着による発光である可能性がある。今後、測定波長領域を広げたり、人工的に放射線を照射したりして、天然及び拡散処理アンデシンの識別に対する熱ルミネッセンス法の有効性について更に検証していく予定である。
著者
林 政彦 民谷 晴亮 小松 睦美 堤 貞夫 山崎 淳司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成19年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.4, 2007 (Released:2008-06-01)

アメシストを加熱することによりシトリンの色調に変化させることはよく知られている。そこで、次の4つの産地の天然アメシストと1つの合成アメシストをそれぞれ加熱実験し、色調の変化を追ってみた。 (1)ブラジル、リオ・グランデ産:Iai, Rio Grande do Sul, Brazil (2)ウルグアイ産:North Cantera mine, Artigas, Uruguay (3)メキシコ産:Ras Begas mine, Mexico (4)ロシア製合成アメシスト:Synthetic amethyst, Russian Academy これら加熱実験結果から、ブラジルのリオ・グランデ産、ウルグアイ産及び合成アメシストは、420~450度で脱色し、その後に黄色あるいは黄褐色のシトリン(黄水晶)の色調を呈するようになった。 今回の加熱実験結果で着目すべき点は、メキシコ産アメシストについては、脱色はするがその後の色調の変化は見られず、最終的に白色(不透明な無色)になったことである。 以上の結果をふまえて、加熱によるアメシストのシトリンへの変化について、CL像の観察・化学分析・IR吸収スペクトル測定などを行った結果から、次のような結論を得た。 ・カラーセンターによって生じた可視領域の吸収(550nm付近)が、420~500度の加熱によって消滅した結果、紫色は消失した。 ・黄色に変化するというのは、分光特性において可視部から紫外部にかけて徐々に吸収が大きくなることを示している。 ・黄色に変化しないものは、カラーセンターによって生じた可視領域の吸収(550nm付近)が、加熱によって消滅した後、さらに加熱温度を上昇しつづけても、その他の吸収の変化が可視領域になかったことを示している。 ・アメシストを加熱することによりシトリンの色調に変化させるには、H2O分子の存在と450~500度という温度が必要である。
著者
宮田 雄史 茂手木 浩
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1-2, pp.24-34, 1991-07-30 (Released:2017-01-16)

Colourimetric investigations were made on Au-Ag-Cu ternary alloys by spectrophotometry. Test pieces of alloy are prepared at 5 wt% intervals in compositions.Chromaticity coordinates of test pieces are calculated by weighted ordinate method from spectral reflection factor. Results are represented on either Munsel renotation system or CIE standared colourimetric system. In the eutectic region, colours of the alloy can be explained on the basis of additive mixture of the colours at end-members.
著者
古屋 正貴 剱持 苗子 檀上 圭司 ウンア ジョン
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成22年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.8, 2010 (Released:2011-03-03)

北海道の鉱山から産出したロードクロサイトは、日本から産出する数少ない宝石の一つである。北海道古平郡古平町稲倉石鉱山はマンガンの採掘を目的に昭和59年まで稼働していた。ロードクロサイトはそのマンガン鉱石の副産物として産出していたものであった。しかし、海外からのマンガンの鉱石の輸入に押され、鉱山は閉山してしまい、ロードクロサイトの産出もなくなってしまった。現在、マンガン鉱山が稼働していた頃に産出されたものが流通している状況である。 一般にロードクロサイトには、ファセットカットにもされる透明石と、カボションカットにされる半透明石がある。前者では世界最大の結晶を産出するアメリカのコロラド産が有名であり、後者ではインカ・ローズの別名に用いられているようにアルゼンチン産が有名である。これらを含め、中国、ペルー、ロシア、ブラジル、南アフリカ産のものと北海道産のロードクロサイトを比較した。 MnCO3を成分とするロードクロサイトは、透明度の高いものであると蛍光X線成分分析機ではMnOしか検出されないものもあるが、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの不純物が検出されるものもある。また、北海道のものを始め、半透明のものでは不純物も多く検出される。それら不純物の含有量や割合を元に産地ごとの特性を調べてみた結果、北海道産について他の産地より、マンガン量が少ない、鉄分が多い、亜鉛は少なく、マグネシウムは少なく、カルシウムは多いなどの特徴が見られた。 また、紫外・可視分光スペクトルや、FT-IRなどのスペクトルにも特徴が見られたので、それについても合わせて報告したい。
著者
三浦 真 桂田 祐介 猿渡 和子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.17, 2018 (Released:2018-06-24)
参考文献数
1

金色のシーン・エフェクトを特徴的に示すサファイアは、ゴールドシーンサファイアと商業的に呼ばれている(例えば Bui et al. (2015))。ケニア北東部が産地とされているが、流通量が限られているために研究例が非常に少なく、その詳しい産地およびその成因については不明な点が多い。そこで産地鑑別のための化学組成データベースの充実、およびその成因について探るため、 GIA 東京ラボでは 23 石のゴールドシーンサファイアについて一般的な宝石学的検査に加えレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)による微量元素の定量分析を実施した。試料は特徴的に赤鉄鉱・チタン鉄鉱の針状内包物を多数含み、それにより光が反射されることで独特のシーンエフェクトが生み出される。またジルコンや雲母、赤鉄鉱、磁鉄鉱、ダイアスポア、炭酸塩鉱物といった多様な自形~半自形内包物を含む。色あいは青色と黄色が混在するもの、黄色単色のもの、多数の内包物・亀裂により色合いが不明瞭なものがあり、透明度も亜透明から不透明と多様である。青色および黄色に着色されている部分は化学組成上ではあまり違いが見られなく、試料は全体的に鉄含有量およびガリウム/マグネシウム比が高い傾向にある。先行研究で報告されている他のゴールドシーンサファイアと組成および内包物が類似しており、本研究の試料はそれらと同じ産地を由来としている可能性が高い。ゴールドシーンサファイアの産地とされるケニアにはアルカリ玄武岩起源(Lake Turkana)もしくはサヤナイト起源(Garba Tula)の2つの鉱床が知られている。ゴールドシーンサファイアは化学組成上では Garba Tula のものに近い傾向がある。
著者
荻原 成騎
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1-4, pp.52, 2018 (Released:2018-06-10)

【緒言】 Herkimer Diamond は、 約 5 億年前に堆積した炭酸塩岩(苦灰岩)に形成された空洞中から産出する。空洞の内壁は黒色の炭質物(anthraxolite)によって coating されており、 Herkimer Diamond は、炭質物上に成長している。炭質物は Herkimer Diamond に包有物としても含まれる。【疑問点】独特の産状形態を示す Herkimer Diamond の成因、形成メカニズムを明らかにするためには、解明されなければならない疑問点が複数ある。(1)鉱床は特別な地層にのみ分布するのか、(2)ハーキマー鉱区における各鉱山の産状の多様性、 (3)鉛直方向に延びる鉱化作用、 (4)炭質物と Herkimer Diamond の関係、 (5)炭質物の起源と鉱化作用に及ぼした役割、 (6)シリカの起源、 (7)形成(沈殿)のタイミング、 (8)温度環境、さらに(9) Herkimer における産状は、他の世界中に分布する水晶鉱床にもあてはまることなのか、などである。本発表では、現在進行中の現地調査と化学分析の結果を報告する。【結果】炭酸塩岩(苦灰岩)にあいた空隙は、ストロマトライト化石が抜け落ちて形成されたように見える。空隙の形は、柏餅型から円柱状で、空隙底面の中央部は盛り上がっている。盛り上がった底面は珪化されており、非常に硬い。 Ace of Diamond 鉱山では、 Herkimer Diamond 胚胎層準が 5 層準あり、 5 層のストロマトライト化石層に対応している。黒質物質の粉末X線回折の結果、グラファイトの反射のみが認められ、石英や炭酸塩の反射は認められなかった。黒色物質は炭化水素ではない。本研究では、黒色物質(グラファイト)について、ラマン分光法による温度推定を行った。晶洞を coating している黒色物質、および Herkimer Diamond 中に包有物として取り込まれている黒色物質の経験した最大温度は、どちらも約 200℃であった。その他、苦灰岩および黒色物質に含まれる抽出性有機物、特に環境指標となる biomarker の分析結果と総合して、生成環境について議論を行う。
著者
森 孝仁 奥田 薫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.29, pp.2, 2007

面積678,330平方キロメートル(日本の1.8倍)、人口約52,000千人のミャンマー連邦(The Union of Myanmar)は、宝石の産出国として世界でも類を見ない国です。<BR>西洋・東洋において、それぞれ最も人気のあるといわれるルビー・ジェイダイトの最高品質は、いずれもミャンマーで産出されます。両者の生成には、全く異なる地質条件が必要であり、それを満たす土壌が同じ国内に共存するということは、大変不思議なことです。また、ミャンマーでは、それ以外にも、ブルーサファイア、レッドスピネル、ペリドット、アイオライト、ジルコン、アクアマリン、シリマナイト、カイヤナイト、ブルーアパタイト、イエローダンビュライト等、様々な宝石が産出し、いずれも品質の高いものが見られます。また、宝石質のダイヤモンドもわずかに産出します。それぞれの宝石の簡単な特徴について紹介するとともに、このような多種の宝石を産出するミャンマーの土壌に関して、ミャンマー現地に宝石研究所を有する当社が得た情報を報告します。<BR>また、同研究所では、過去5年間に持ち込まれた全てのルビーについて、採掘された地域、外観特徴、拡大検査、可視分光吸収および成分分析のデータを蓄積しています。今回、今まで得られたデータを整理することで、ミャンマー産ルビーの特徴を明らかに、他の産地におけるルビーとの判別方法について報告します。
著者
林 政彦 酒見 昌伸 安井 万奈 山﨑 淳司 堤 貞夫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-16, 2016

縄文時代の6千年前頃から首飾り等に使われていたヒスイ(翡翠,ヒスイ輝石(Jadeite))は,主に新潟県糸魚川市~富山県朝日町周辺で産出したとされている.わが国では,新潟県以外にも鳥取県若桜町,岡山県新見市,兵庫県養父市あるいは長崎県長崎市などからも産することが報告されている。さらに外国では,ミャンマー,アメリカ,グアテマラ,ロシアなどが知られている。今回入手した各地の試料を調べた結果,輝石族の鉱物名分類(Morimotoら,1988)1)に従うと,ほとんどのものはヒスイ輝石であったが,いくつかの産地のものはオンファス輝石(Omphacite)と呼んだ方がよいものであった。
著者
高 興和 古屋 正貴 畠 健一
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.37, 2015

紫色の美しい花、ジャマランカが咲き誇るタンザニアの大地の地下1000メートルに美しい紫味を帯びたタンザナイトが眠っている。ジャマランカの花言葉は「栄光」と「名誉」。1960年後半に発見されたタンザニアを代表する新しい宝石タンザナイトにいまだ正式な宝石言葉はない。20世紀を代表する宝石の1つになったタンザナイトの宝石言葉に、「栄光」と「名誉」を贈りたい。タンザナイトの命名通り、現在タンザナイトはタンザニアのみ産出し、詳しくはアルーシャ地方のメラニヒルズのみが確認されている。1971年タンザニア政府によりメラニヒルズ鉱山は一旦国有化されたが、1990年、政府系、民間系の4つのブロックに分けられ、現在各ブロックごとに採掘が稼働している。<br> Aブロック) 政府系 Kirimanjaro Mines Limited<br> Bブロック) 民間系 小規模業者 オーナー数約200名<br> Cブロック) 政府系 Tanzanait one<br> Dブロック) 民間系 オーナー数 約300名<br> 今回、BブロックのELISARIA MSUYA MAININNG社の協力のもと地下500メートルの採掘現場より入手した原石を中心に研磨、インクルージョン観察、その後、3時間ずつ、100&deg;C、200&deg;C、300&deg;C、350&deg;C、400&deg;C、450&deg;C、500&deg;Cの加熱処理を実施、分光スペクトルの処理前、処理後の検査結果を得た。今回の現地調査の目的は、通常低温加熱されているタンザナイトについて、確かなサンプル原石を入手すること。そして、今回はBブロックに絞り、品質をジェム・クオリティ、ジュエリー・クオリティ、アクセサリー・クオリティの3段階に分け、出現率を調査することである。宝石の価格相場は宝石の品質を評価し、その出現率と需要で決まる。<br> 今回、タンザナイトのBブロックに絞り込み、鉱山の現地調査を実施。その原産地状況を報告する。
著者
藤田 直也 Milisenda Claudio
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.24, pp.12, 2002

&ldquo;パライバ&rdquo;トルマリンと同様に銅/マンガンを含むトルマリンがナイジェリアでも産出されるようになった。この新産地のトルマリンも&ldquo;パライバ&rdquo;トルマリンと同様&ldquo;ネオンブルー&rdquo;や&ldquo;エレクトリックブルー&rdquo;といった色調のものが産出されている。このナイジェリア産、ブラジルのパライバ産及びリオグランデ&middot;ド&middot;ノルテ産のサンプルをエネルギー分散型蛍光X線元素分析装置(EDXRF)とフーリエ交換型赤外分光光度計(FT-IR)を使って得たデータの比較を行ない産地同定の可能性を見出すことが出来た。