著者
福田 千紘 宮﨑 智彦 Lee Bo-Hyun
出版者
宝石学会(日本)
巻号頁・発行日
pp.6, 2014 (Released:2014-10-01)

エチオピアからは 1994 年ごろにオパール の 産 出 が 報 告 さ れ て い る (KoivulaJ.I.,et al 1994).2008 年前半には Wollo地区において豊穣な鉱床がみつかり,多量のカット石が市場に供給されている(Rondeu.,et al 2010).また 2013年初め頃に原石のままでの輸出が禁止されたと報じられた(Addis Fortune Jan. 2013).これらは主に色調が無色∼白色から淡黄色∼褐色を呈し,半透明∼不透明まである.オーストラリア産オパールにみられる強い青白色の紫外線蛍光や燐光はほとんど認められず弱い青白色の蛍光が認められる.ほかの産地のオパールに比べて多孔質で日常の取り扱いで重量が変化しやすい個体が多く見受けられる. 2013年初めごろから暗黒色不透明なエチオピア産オパールとされるブラックオパールに似たオパールが流通し始めた.これらは売り手の情報によると処理を施してあり,酸と有機物を用いて黒色化しているとのことである.価格も処理を施されていない同産地のオパールよりも割高で明らかにブラックオパールを模して製造されていると推定される.外観はオーストラリア産ブラックオパールとは異なる独特の鮮やかな遊色とわずかに褐色を帯びた漆黒の地色を呈し,従来から知られている砂糖液処理やスモーク処理の処理オパールとも異なる.またあまり小さなカット石は存在せず数カラット以上の比較的大きく厚みのあるルースのみ存在する点も特徴的と思われる.透過光では暗赤色を呈する試料が多く,拡大検査にてスクラッチ状または斑点状の黒色の色だまりがみられる個体が多い.試料を切断したところ内部まで黒色で外形に沿った色の濃淡が認められた.これは内部まで処理の効果が及んでいることと原石のまま処理するのではなくカットして完成品に近い形状に仕上げた後に処理を施し表面を再研磨していることを示唆すると考えられる.色の起源に関してはアモルファスカーボンが原因との報告があり(Williams 2012),本研究でもアモルファスカーボンの存在を追認した. さらに今年に入ってから様々な色調に着色されたエチオピア産とされるオパールが流通し始めた.これらはファイアオパールに似せた黄色∼オレンジ色系のものと天然には存在しない地色が青色系,ピンク色系を確認した.これらは有色樹脂の含浸が疑われたが近赤外分光分析の結果,樹脂は検出されず色素を用いた着色処理であることが判明した. 本研究では黒色の処理オパールとそのほかの色の着色オパールの鑑別上の諸特徴を報告するとともに処理の再現実験の途中経過と暫定的な結果も報告する.
著者
福田 千紘
出版者
宝石学会(日本)
巻号頁・発行日
pp.21, 2018 (Released:2018-06-24)

ガラスは古代より装飾品として使用されており各所の遺跡の出土品からも様々な形態の装飾品が報告されている。現在は天然素材を用いた宝飾品が高く評価されるためガラスを用いた装飾品は主にアクセサリーとして流通している場合が多い。 19 世紀頃からは装飾品にするために様々な工夫を凝らした特殊なガラスが製造されていた。本研究では主に 19 世紀から 20 世紀中ごろまでに製造されたいくつかの特殊な外観を呈するガラスについて主に化学組成と特徴を報告する。今回入手した試料はそれぞれサフィレット、アイリスグラス、ドラゴンブレスと呼ばれ流通しているガラスである。サフィレットは19世紀にチェコで製造され、その後製法が途絶えてしまったが 20 世紀に入ってから旧西ドイツで復刻生産されたと報告されている。主に青色透明で背面に反射膜を有するものと無い物が存在する。強い自然光や人工光下で褐色に見え一見すると変色性のような特徴を持つ。アイリスグラスはアイリスクォーツを模して造られたガラスで無色のガラスに赤、青、緑系の各色ガラスが混入されている。背面には反射膜を有する物と無い物が存在する。ドラゴンブレスは主に赤~オレンジ色を呈するガラス中に不規則な青色の干渉色を呈する事を特徴とし背面には反射膜を有する。EDXRF にて組成を分析した結果、主要成分はいずれも Pb、 Si、 K に富み B に乏しく、一般的に”クリスタルガラス ”と 呼ばれるガラスであった。また着色原因と考えられる元素としてサフィレットからは Fe、 Cu、アイリスグラスからは Cu、ドラゴンブレスからは Se がそれぞれ微量検出された。アイリスグラスの赤色部は紫がかった色調から金コロイドによる着色が考えられるが Au はXRFでは検出出来なかった。そこで可視分光分析を行い現在生産されている金コロイドの赤色鉛ガラスと比較した。また、サフィレットはその外観から何らかの金属コロイドの存在が考えられこれの検出を試みた。ドラゴンブレスは 2 層の異なる組成のガラスから構成されておりガラス組成の差と境界面の構造から青色の干渉の原因を考察した。
著者
岡本 信一 平岡 英一 辻井 幸雄 古田 純一郎
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.59-65, 1983-12-15 (Released:2017-01-16)

Neutron radiography was used for examination of the inner parts of a pearl as one of non-destructive methods. The neutron radiography is similar to the radiography by X-rays and gamma-rays from the radio-isotopes such as Co-60, Ir-192, and Yb-169. Thermal neutrons are used for neutron radiography. The mass absorption coefficients of water and organic materials for thermal neutrons are extremely larger than those of other pearl materials (CaCO_3, MnCO_3, ……). The neutron radiographs of blue and black pearls are compared with their X-rays and gamma-rays radiographs. The former are better and sharper than the latters. The exposure methods for photographic detection of neutron imaging are described in this paper.
著者
北脇 裕士 堀川 洋一 小豆川 勝見 野川 憲夫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-19, 2014

Two slightly orangy pink morganites with residual radioactivity were studied. The dose rate of the samples, measured by a scintillation survey meter, ranged from 0.15 to 0.35 μSv/h. Although this radioactivity was likely not hazardous, it was above the recommended exposure limit set forth in 1990 by the International Commission on Radiological Protection. To identify the radionuclides, gamma rays from the samples were measured using a Ge(Li) semiconductor detector. The activation products ^<134>Cs, ^<54>Mn, and ^<65>Zn were detected, proving that the samples had been artificially irradiated with neutrons.
著者
下村 道子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.34, 2012

美しく輝く宝石は古代から人々を魅了し続けている。古代ギリシアの哲学者は宝石の成因や性質の違いについて思索したが、1世紀のプリニウスは『博物誌』のなかで宝石の色や性質や産地のほかに、様々な伝説や効能や神秘的な力を記述した。その後、中世ヨーロッパでは宝石の美しさよりも神秘的な力や効能が増幅され、魔力や薬効を列挙した「鉱物誌」と呼ばれる文学のジャンルの書物が広く流布した。16世紀になると、現在では「鉱物学の父」と呼ばれているドイツのゲオルグ・アグリコラが、科学的な観察に基いて『鉱物の性質について』を著わした。しかし「鉱物誌」の神秘的な力や薬効が完全に払拭されたわけではなかった。そしてその後、科学の発展によって18世紀ころから近代的な鉱物や宝石に関する著作が次々に出版されるようになり、19世紀末にイギリスで宝石学の教育が始まった。<br>こうした宝石学の歴史のなかで、16世紀のイギリスのエリザベス1世の宮廷肖像画家の一人であり金細工師でもあった画家ニコラス・ヒリヤード(1546/7-1619)が著わした文書は注目に値する。彼は宝石の熱処理、各種宝石の色変種、ダイヤモンドの輝きとカット、ダイヤモンドと類似石の識別方法など現代の宝石学に通ずる情報を自分の経験に基いて詳細に記述しているのである。また16世紀のイタリアの彫刻家であり金細工師であったチェッリーニや、17世紀初期のイギリスの金細工師による著述と比較・検討することも興味深い。
著者
林 政彦 酒見 昌伸 安井 万奈 山﨑 淳司 堤 貞夫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-16, 2016

縄文時代の6千年前頃から首飾り等に使われていたヒスイ(翡翠,ヒスイ輝石(Jadeite))は,主に新潟県糸魚川市~富山県朝日町周辺で産出したとされている.わが国では,新潟県以外にも鳥取県若桜町,岡山県新見市,兵庫県養父市あるいは長崎県長崎市などからも産することが報告されている。さらに外国では,ミャンマー,アメリカ,グアテマラ,ロシアなどが知られている。今回入手した各地の試料を調べた結果,輝石族の鉱物名分類(Morimotoら,1988)1)に従うと,ほとんどのものはヒスイ輝石であったが,いくつかの産地のものはオンファス輝石(Omphacite)と呼んだ方がよいものであった。
著者
高 興和 古屋 正貴 畠 健一
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.37, 2015

紫色の美しい花、ジャマランカが咲き誇るタンザニアの大地の地下1000メートルに美しい紫味を帯びたタンザナイトが眠っている。ジャマランカの花言葉は「栄光」と「名誉」。1960年後半に発見されたタンザニアを代表する新しい宝石タンザナイトにいまだ正式な宝石言葉はない。20世紀を代表する宝石の1つになったタンザナイトの宝石言葉に、「栄光」と「名誉」を贈りたい。タンザナイトの命名通り、現在タンザナイトはタンザニアのみ産出し、詳しくはアルーシャ地方のメラニヒルズのみが確認されている。1971年タンザニア政府によりメラニヒルズ鉱山は一旦国有化されたが、1990年、政府系、民間系の4つのブロックに分けられ、現在各ブロックごとに採掘が稼働している。<br> Aブロック) 政府系 Kirimanjaro Mines Limited<br> Bブロック) 民間系 小規模業者 オーナー数約200名<br> Cブロック) 政府系 Tanzanait one<br> Dブロック) 民間系 オーナー数 約300名<br> 今回、BブロックのELISARIA MSUYA MAININNG社の協力のもと地下500メートルの採掘現場より入手した原石を中心に研磨、インクルージョン観察、その後、3時間ずつ、100&deg;C、200&deg;C、300&deg;C、350&deg;C、400&deg;C、450&deg;C、500&deg;Cの加熱処理を実施、分光スペクトルの処理前、処理後の検査結果を得た。今回の現地調査の目的は、通常低温加熱されているタンザナイトについて、確かなサンプル原石を入手すること。そして、今回はBブロックに絞り、品質をジェム・クオリティ、ジュエリー・クオリティ、アクセサリー・クオリティの3段階に分け、出現率を調査することである。宝石の価格相場は宝石の品質を評価し、その出現率と需要で決まる。<br> 今回、タンザナイトのBブロックに絞り込み、鉱山の現地調査を実施。その原産地状況を報告する。
著者
阿依 アヒマディ 郷津 知太郎 蜷川 隆
出版者
宝石学会(日本)
巻号頁・発行日
pp.12-12, 2010 (Released:2011-03-03)

オリンピック・サンストーンと称されている赤色アンデシンの色の起源に世界から関心が寄せられている中で、多くのジェモロジストは当該色が銅による拡散加熱処理によるものではないかと疑っている。その真偽を突き止める為に、中国のチベットと内モンゴル自治区の鉱山を調査した。その結果、チベットでは赤色(稀に緑色)のアンデシンが実際に産出され、内モンゴル自治区の固阳県の鉱山では淡黄色のみのアンデシンしか産出されていないことが確認できた。また、大量に生産された内モンゴル産アンデシンは拡散加熱処理(人為的な着色)の原材に利用されているこという確かな情報が得られた。 採集した両産地のアンデシン試料と中国国内で銅による拡散処理が施されたことが確実な赤色アンデシンを比較してみると、それらの宝石学的特性値や化学組成値はほとんど同じであり、斜長石の一種であるラブラドライトとアンデシン組成境界付近に分布するCaを富んだアンデシンであることが分かった。しかし、内部組織の観察では、チベット産赤色アンデシンと拡散処理した赤色アンデシンに明瞭な差異がなく、両者の識別は非常に困難である。また、LA-ICP-MS法で分析した微量元素であるBa/SrとBa/Liによる化学フィンガープリントから、多くのチベット産天然試料は拡散処理試料と異なる分布領域を示すが、一部に重複が見られ、完全な識別法の確立は今後の重要な課題として残されている。本研究では、熱ルミネセンス分析法を用いて、試料からの発光量を測定し、天然と処理したアンデシンの区別を試みた。 主に鉱物の周囲に分布する放射性元素起源の放射線(α線,β線,γ線)によって、結晶中の電子が励起される。この電子が格子欠陥等からなる捕獲中心に捕らえられた場合、これを捕獲電子と呼ぶ。この様な結晶を加熱した場合、格子の熱振動によって捕獲電子は再度伝導帯に励起され、結晶中を移動した後、発光中心の正孔と再結合する。この際に発光する光を熱ルミネッセンス(Thermoluminescence : TL)という。 鉱物がある程度の期間(環境中の線量に依存するが、およそ数千年、またはそれ以上)天然の環境におかれている場合、自然放射線により鉱物中に捕獲電子が蓄積され、加熱により熱ルミネッセンス(natural TL)が観測される。一方で、天然から採集した鉱物に人為的な加熱を加えた場合(およそ500℃前後で数分程度)、捕獲電子は正孔と再結合するために熱ルミネッセンスは観測されなくなる。 今回の研究に、チベット産天然赤色試料7点、内モンゴル産天然淡黄色試料2点、中国から提供されたCuによる拡散加熱処理試料3点、GIAによるCu拡散加熱実験試料1点を分析の対象とした。岡山理科大学理学部に設置された熱ルミネッセンス測定装置(浜松ホトニクス製光電子増倍管R762,フィルター:Corning 4-69,Corning 7-59)を使用した。試料の一部を粉末にし、加熱試料板に載せ、常温から450°までの熱ルミネッセンスのグロー曲線を測定した。 分析の結果、チベット産と内モンゴル産アンデシン試料に、300~450℃の間に極大な発光ピークを示した。Cuによる拡散加熱処理の試料には、このような強い発光強度がなく、弱いかまたは発光しないグロー曲線が確認できた。この減少することに着目すれば人為的に加熱の有無を判断することができると推定される。しかし、加熱処理をしたにも関わらず発光するのはこの発光が自然放射線の照射によって生じた発光ではなく、酸素等の吸着による発光である可能性がある。今後、測定波長領域を広げたり、人工的に放射線を照射したりして、天然及び拡散処理アンデシンの識別に対する熱ルミネッセンス法の有効性について更に検証していく予定である。
著者
三浦 保範 高木 亜沙子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.26, pp.12-12, 2004

1.はじめに:ラブラドライト斜長石は、離溶ラメラ組織の光の干渉により様々な色を示して、ラブラドレッセンスといわれて宝石鉱物として広く知られている(Miura et al., 1975)。そのラメラ組織を示す斜長石の形成は、地球外の試料の研究が進むにつれて、ある問題点が浮上してきた。これまで市場に出回っているイリデッセンスを示すラブラドライト斜長石ラメラ組織の形成は、高温マグマからの均一溶液からの固体状態の離溶反応(スピノーダル分解)で理解されている。問題点は、a)高温マグマが関係した古期岩石は広く分布するがラメラ組織を示す斜長石鉱物の産出が限られている、b)マグマからの直接固体晶出であるが不均質な組織をしている、c)その不均質さが宝石のカット面などの作成に影響している、d)鉄の鉱物が組織内を広く充填している、d)月は高温マグマが形成初期に関与したが衝突で形成された古い月の試料(30億~45億年前の形成)にはラブラドライト斜長石が形成されていない、e)大気がありかって海水のあった火星の石からは探査機画像には発見されていないが、火星起源の隕石からは衝突ガラス(マスケリナイト)が発見されている。これらの問題点を、対比的に解明する糸口を筆者らが考察してみる。<BR> 2.地球上の試料の産出場所の特徴:地球上でイリデッセンスを示すラブラドライト斜長石は、一定の古期岩石の分布する地域(カナダが有名な産地、最近はマダガスカル産・フィンランド産、赤色透明の試料のある米国産など)に産出している。カナダとマダカスカルは、20億から30億年前の岩石から産出している。ほとんどのラブラドライト斜長石でラメラ組織を示すものは、鉄に含む暗黒色の岩石が多い。この岩石の特徴(古期岩石中・黒色・組織の不均質さなど)が問題点を解明する糸口になっている。これまで、これらの岩石の特徴は大陸地殻として形成された後に岩石が地殻変動を受けたためだけであると考えられていた。<BR> 3.対比試料の特徴:古い記憶は地球では消失しているので、地球外の月か火星・隕石で対比してみる。アポロ月面・月隕石試料は灰長石鉱物が多く、中間型斜長石組成の鉱物が形成されていない。月面形成後衝突以外にマグマ火成活動が続かず、ラブラドライト斜長石は産出していないと考えられる。火星には、火星起源隕石中にマスケリナイト(中間型斜長石鉱物)といわれる衝突で不均質にガラス化している斜長石があるが、ラメラ構造は火星の隕石からは発見されていない。火星隕石は2回以上の衝突で形成されて地球に飛来し高温状態での持続時間が短いため、ラメラ組織が形成されなかったと考えられる。しかし、破砕斜長石が高温状態での持続時間が長い今場所(火山構造のオリンポス火山など)周辺に、中間型斜長石鉱物が既存していればラメラ組織が形成されている可能性がある。小惑星起源の隕石中には、衝突分裂・破壊の後高温状態で長い保存される場所がないので、ラメラ組織が形成されていない。<BR> 4.新しい解釈:これら問題点を説明する考えとして、ラメラ組織を持つラブラドライト斜長石の形成を衝突形成岩石の高温マグマ状態からの形成と考える。最初に巨大衝突で地球が破壊されて高地と海の地形が形成されているので衝突に関係して形成されている。また、古期の大陸を復元すると大陸の分裂割れ目に相当する場所と同心円状の大陸地殻地域にラメラ組織を持つラブラドライト斜長石が多く産出するので、衝突形成後地下の高温マグマが発生して長く持続できる場所で既存組織からスピノーダル固体分解反応が進んだと考えられる。<BR> 5.まとめ:次のようにまとめられる。地球が形成された後、十数億年から二十数億年の間に中間型斜長石組成の衝突破砕ガラス形成記録が消失して固体晶出後ラメラ組織が形成されたと考えられる。破砕時の既存の組織がそのまま保存されているので、均質な岩石ではなく、衝突時にできた不均質な破砕組織となったと考えられる。高温のため既存の衝突組織は消失しているが、鉄などの鉱物が再結晶して多く含まれているのが形成を示す特徴である。したがって、市場の宝石試料に不均質な組織が多い。火星には、破砕斜長石が高温状態での持続できる場所周辺に、中間型斜長石鉱物ラメラ組織が形成されている可能性がある。<BR> 最後に、この議論には、米国でのラメラ組織の研究者Dr.G.Nordにも昨年と今年に渡米中に参加して頂き関連データの確認ができたので付記する。
著者
山田 篤美
出版者
宝石学会(日本)
巻号頁・発行日
pp.6, 2017 (Released:2017-06-30)

今日、宝石の王者はダイヤモンドである。しかし、人類 5000 年の歴史を俯瞰すると、長い間、宝石の世界に君臨してきたのはダイヤモンドではなく、真珠であったことが明らかになる。本講演では最上の宝石だった真珠の歴史をダイヤモンドと比較しながら解説する。正確を期すると真珠は鉱物ではなく、有機物の一種である。しかし、真珠は伝統的に宝石と見なされてきた。たとえば、 古代ローマのプリニウスは『博物誌』の中で真珠を最高位の宝石のひとつと位置づけている。一方、プリニウスはキュウリの種ほどのダイヤモンドも貴重視していたが、それらは工具としての実用性が評価されたもので、「宝石」としての評価ではなかった。古代ローマ人憧れの真珠であったが、その産地は多くはなかった。自然界では海産真珠貝、淡水産真珠貝が多種多様の真珠を生み出してきたが、丸く美しく光沢のある真珠を生み出す貝は、海産のピンクターダ属(genus Pinctada)の真珠貝などに限られていた。ピンクターダ属の真珠貝の中でも、真珠採取産業を成立させるアコヤ系真珠貝(Pinctada fucata/martensii/radiata/imbricata species complex)の生息地は、古代・中世においては、ペルシア湾、インド・スリランカの海域、西日本の海域ぐらいしか知られていなかった。つまり、ヨーロッパ人にとってアコヤ系真珠は、コショウ同様、オリエント世界でしか採れない貴重な特産品だった。その状況が一変したのが 16 世紀の大航海時代である。 1492 年、コロンブスはカリブ海諸島に到達し、その 6 年後、南米ベネズエラ沿岸で真珠を発見する。実はベネズエラ沖はもうひとつのアコヤ系真珠貝の産地であった。オリエントに代わる真珠の産地となったベネズエラには征服者、航海者が押し寄せ、略奪と虐殺が繰り広げられた。 16 世紀のヨーロッパは真珠の時代であり、南米の真珠がヨーロッパ王侯貴族のジュエリー、ドレスを飾ったが、その真珠はブラッド・ダイヤモンドならぬブラッド・パールであったのである。一方、ダイヤモンドについても、大航海時代になると、インドの王侯の独占が崩れ、流通が増加。 17 世紀以降のヨーロッパではブリリアント・カットが発明され、ダイヤモンドと真珠が二大宝石となっていく。しかし、 19 世紀の南アフリカのダイヤモンドの発見でダイヤの値段が暴落、真珠は再びダイヤモンドよりも希少になった……。 真珠の歴史をダイヤモンドとの関係性の中で考察すると、小さな真珠がもたらした壮大で壮絶な歴史が浮かび上がるのである。
著者
川崎 雅之
出版者
宝石学会(日本)
巻号頁・発行日
pp.7, 2012 (Released:2012-09-30)

地球表層には大量のシリカ鉱物、特に石英(水晶)が存在しているが、地球外物質(隕石、月、火星など)には極めて少ないことが既に知られている。実際、隕石中に含まれている鉱物は珪酸塩鉱物(かんらん石、輝石、長石)と鉄ニッケル合金が中心であり、シリカ鉱物は一部の隕石に少量報告されている程度である。 太陽系形成の初期において、惑星は高温の溶融状態にあり、その後の冷却過程で核・マントル・地殻に分化している。核には主に鉄(+ニッケル)が、マントルにはかんらん石や輝石が濃集し、地殻には玄武岩が形成された。月の地殻は斜長岩と玄武岩である。水星・金星・火星では地形と分光分析により、その地殻は玄武岩質と推定されている。一方、地球の地殻は海洋地殻と大陸地殻に分けられ、海洋地殻及び大陸地殻下部は玄武岩質であるが、大陸地殻上部は花崗岩質である。 シリカ(SiO2)はNa、Mg、Ca、Alなどと共に容易に珪酸塩鉱物を形成するので、シリカ鉱物が存在するためには、それらの元素以上に過剰なSiO2が必要である。玄武岩中のSiO2量は少なく、シリカ鉱物とは共存しない。一般的にシリカが単独で存在し得る火成岩はSiO2量の多い花崗岩である。月物質の一部に石英を含む花崗岩が確認されているが、量は少なく、他天体を含めても、水晶の存在は希である。分化によってできる地殻を構成するのは主に玄武岩ないし斜長岩であり、量的に花崗岩はできにくい。マントルのかんらん岩が部分溶融してできるマグマも玄武岩質である。他天体の地殻が花崗岩よりSiO2量の乏しい岩石で構成されていれば、そもそも水晶が存在しにくい。むしろ、地球の地殻において水晶が多い理由は大量の花崗岩が存在することにあると言える。 では、花崗岩はどのようにしてできたのか? 実験から水の存在下で玄武岩が部分溶融すると、できたマグマはSiO2量に富む安山岩~花崗岩質マグマであることがわかっている。玄武岩質の海洋地殻は中央海嶺で生成され、プレートの沈み込み帯で地球内部に入り込み、大量の水をスラブ(沈み込んだ海洋プレート)上側のマントルに放出する。その水が地殻下部を部分溶融させ、SiO2量の多い安山岩質~花崗岩質マグマを形成している。 元々、地球は金星、火星や月に比べて、水に富んだ星である。惑星の分化が進んだ時点で、海洋が存在し、プレートの動きに従い、地球内部と地表との間で水の循環が成立している。その結果、地殻下部への水の連続的な供給が安山岩~花崗岩質マグマの形成を促進し、大陸の成長につながったといえる。他の天体ではプレートの動き(プレートテクトニクス)は無かったか、あるいは限定的であったと考えられている。 地球表層の豊富な水は地殻上部でも循環し、熱水作用により、SiO2の単結晶、すなわち水晶を大量に形成した。地球が他天体(月や地球型惑星)に比較して、水が豊富であったこと、プレートテクトニクスにより水の循環が容易に行なわれたことが、地殻上部における水晶の形成につながった。 大昔、水晶を見た人々は「水晶は透明な硬い氷である」と考えた。今日、我々は水晶が氷ではなく、SiO2の結晶であることを知っている。しかし、水晶の形成過程を見れば、「水晶こそ水が作った結晶である」と言えるのである。 もちろん、これは水晶だけに当てはまるのではない。花崗岩に伴う鉱物、水から晶出した鉱物はすべて水の賜物である。2008年、アメリカのHazen et al.は鉱物進化論を唱えた(Amer. Mineral., 93, 1693;日経サイエンス2010年6月号)。地球の進化(起源、分化、大陸の形成、生命との共進化)の過程に応じて、新たな鉱物形成プロセスが生まれ、鉱物の種類が増えてきた。特に生命の発生が地球大気を酸化的にしたことの影響が大きいという。大陸の形成、生命の発生・進化に水が必須であることから、水の存在こそが鉱物の多様性を生み出した原動力と言えるだろう。水晶の普遍性はその結果の一つである。 (地球惑星科学連合2012年大会で発表)
著者
森 孝仁 奥田 薫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.29, pp.2, 2007

面積678,330平方キロメートル(日本の1.8倍)、人口約52,000千人のミャンマー連邦(The Union of Myanmar)は、宝石の産出国として世界でも類を見ない国です。<BR>西洋・東洋において、それぞれ最も人気のあるといわれるルビー・ジェイダイトの最高品質は、いずれもミャンマーで産出されます。両者の生成には、全く異なる地質条件が必要であり、それを満たす土壌が同じ国内に共存するということは、大変不思議なことです。また、ミャンマーでは、それ以外にも、ブルーサファイア、レッドスピネル、ペリドット、アイオライト、ジルコン、アクアマリン、シリマナイト、カイヤナイト、ブルーアパタイト、イエローダンビュライト等、様々な宝石が産出し、いずれも品質の高いものが見られます。また、宝石質のダイヤモンドもわずかに産出します。それぞれの宝石の簡単な特徴について紹介するとともに、このような多種の宝石を産出するミャンマーの土壌に関して、ミャンマー現地に宝石研究所を有する当社が得た情報を報告します。<BR>また、同研究所では、過去5年間に持ち込まれた全てのルビーについて、採掘された地域、外観特徴、拡大検査、可視分光吸収および成分分析のデータを蓄積しています。今回、今まで得られたデータを整理することで、ミャンマー産ルビーの特徴を明らかに、他の産地におけるルビーとの判別方法について報告します。
著者
上原 誠一郎
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1, 2008

九州の地質は大きく3つに区別されます。(a) 主に北部九州に分布する基盤岩類(三郡変成岩および白亜紀花崗岩類),(b) 南部九州に分布する付加体,(c) 新生代後期の火山岩類。新生代後期の火山岩類が広く分布するのが特徴です。今回は九州の代表的な鉱物および九州大学の鉱物標本,特に高壮吉鉱物標本を紹介します。<BR>1.九州の鉱物産地<BR>九州産の鉱物は明治初期の鉱物学黎明期から文献に登場します。古典的産地を産状ごとにまとめると次のようになります。<BR>1-1. 接触交代鉱床:福岡県三ノ岳(灰重石),大分県尾平鉱山(斧石),大分県木浦鉱山(スコロド石,亜砒藍鉄鉱 1954年 伊藤貞市ほか),宮崎県土呂久鉱山(ダンブリ石)。岩佐巌(1885)は三ノ岳の黒色タングステン鉱物を三ノ岳鉱(トリモンタイト)と発表するが,後に灰重石であることが判明する。<BR>1-2. ペグマタイト:福岡県長垂(紅雲母),福岡県小峠・真崎(閃ウラン鉱,モナズ石),佐賀県杉山(緑柱石),宮崎県鹿川(水晶)。高壮吉は1933年に長垂のペグマタイトについて初めて鉱物学的報告をした。翌年,「長垂の含紅雲母ペグマタイト岩脈」として、国の天然記念物に指定される。<BR>1-3. 変成岩・蛇紋岩:長崎県鳥加(磁鉄鉱),熊本県豊福(コランダム),福岡県篠栗(ブルース石),大分県若山鉱山(針ニッケル鉱),大分県鷲谷鉱山(菫泥石,灰クローム石榴石)。岩佐巌(1877)は鷲谷鉱山の紫色と緑色鉱物の化学分析を行い日本で初めての新鉱物として発表した。これは紅礬土鉱(ブンゴナイト)と緑礬土鉱(ジャパナイト)であるが,再検討され菫泥石,灰クローム石榴石となる。<BR>1-4. 新生代後期の火山岩類:佐賀県西ヶ岳(普通輝石),佐賀県肥前町(木村石1986年 長島弘三ら),熊本県石神山(鱗珪石),熊本県人吉(芋子石,1962年 吉永永則・青峰重範),鹿児島県咲花平(大隅石,1956年 都城秋穂)。<BR>2.九州大学の鉱物標本<BR>現在,「高壮吉標本」は総合研究博物館第一分館の自然科学資料室に展示されています。高壮吉は1912年から1929年まで工学部採鉱学教室応用地質学講座の教授を勤め,また,1890年代から1930年代にかけて数多くの鉱物結晶の標本を収集しました。本標本は1939年に理学部が開設された際,収集標本の中から学問的に貴重なものが選ばれ,理学部地質学教室(現在の地球惑星科学教室)に寄贈されたものです。その他に工学部のクランツ標本を中心とする鉱物標本,理学部の岡本要八郎標本,吉村豊文標本,1958年制作の「日本新名鉱物一覧標本(1958)」などがあります。これら鉱物標本のデータベースは総合研究博物館のホームページ中に制作中で,一部を公開しています(http://database.museum.kyushu-u.ac.jp/search/mine/)。
著者
高橋 泰 三木 かおり
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.25, pp.8, 2003

一般的な色彩学の分野で論じられている色知覚の特性は、塗料(反射光)や特定の光源についての実験が大半である。宝石の場合、ファセット・カットされたカラーストーンは表面反射光、内部反射光、透過光が入り交じり複雑な外観を示すため、一般論で論じることができるとは限らない。カラーストーンにも人間の色知覚の特性が作用するか確かめるため、最初に透明な平板状の着色ガラスに対する近似色をカラーフィルムを組み合わせて作成し、機械測色により色差を算出した後、同じサンプルを被験者に目視検査で比色してもらった。その結果、色差の判定においては、明度の高い黄色、ピンク色、青色では機械測色の色差が小さかった割に、敏感に反応した。一方、明度の低い赤色、青色で色差の数値の割に、反応が鈍かった。また、緑色では明度の高低にかかわらず、肉眼は敏感に色差を知覚できることがわかった。このことは、透明体においても人間の色知覚の鈍感な色と敏感な色が同様に存在することを示し、色彩学での一般論に準ずる結果であった。<br> 次にカラーストーンのカット石について、前述した着色ガラス同様の比色実験を試みた。各カット石の近似色をカラーフィルターで作成し、それぞれのカラーストーンとの比色実験を被験者による目視検査で行った。結果は着色ガラスの場合に類似していた。高明度の黄色、青色、ピンク色、青紫色、緑色は機械測色における色差が比較的小さいにもかかわらず、その差を感じ取った被験者が多かった。イエロー・ダイアモンド、イエロー・トルマリン、ブルー・フルオライト、ロードライト・ガーネット(明)、クンツァイト、モルガナイト、タンザナイト、グリーン・フルオライトがその例である。逆に機械測色の色差が比較的大きいのに対し、肉眼がその色差を感じ取れなかったものは、暗色の赤色、青色、紫色であり、例としては、ロードライト・ガーネット(暗)、合成ブルー・スピネル、アメシストであった。<br> また、これらの検証を通して新たな問題点が浮上した。ファセット・カットされた石の色は外観上非常に複雑であり、平板状の着色ガラスに比べ近似色を作成する場合、難易度が格段に上がったことである。それは近似色フィルムとカット石の色差が着色ガラスの場合に比べ大きいことにも現れている。人間の目は複雑なカット石の色をどう捉えているか確認するため、カット石中の色を明度により明、中、暗の3段階に分け、それぞれの近似色を前述の実験同様に作成し、被験者に目視検査で比色してもらった。ここでの明色はKatzの色分類における「光輝」に、中色は「明るい容積色」、暗色は「暗い容積色」に相当する。比色実験の結果、中明度の「明るい容積色」を人間の目はファセット・カットされたカラーストーンの色として認識していることがわかった。
著者
小川 日出丸 渥美 郁男
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, 2018-06-10

<p>昨年、無色のメレダイヤモンド 211 個入りのロットを検査する機会を得た。パーセルには、 Size 1.25-1.35mm Color D-E-F Clarity VS-VVS Shape Round Full Cut の表記があった。販売者であるアメリカの R 社 によると内容は CVD Synthetic Diamond で、 価格は600USドル/ctとのことであった。ちなみ に同等の天然メレダイヤモンドとほぼ同じくら いの価格相当と思われる。 </p><p>一個の重量は 0.008~0.012ct であるこれら の石について、FT-IR を使用して赤外分光検 査をおこなった。その結果、12 個は明瞭なⅠ 型を示し検査の結果は天然石であった。残り の 199 個はⅡ型に分類されたので、検査を継続した。</p><p>拡大検査では、塊状や棒状の金属と思われるものや、松枝状などの内包物がみられた。 内包物によっては磁石に引き寄せられ、磁性 を示す石もあった。</p><p>フォトルミネッセンス(PL)測定など詳細な検 査をおこなった結果、高温高圧法による合成 ダイヤモンドであることが判明した。またⅡ型 のなかに天然石が1個確認された。</p><p>以上、天然石が混入していることや CVD 法 による合成石が確認できなかったことなど、販売者の言と異なるメレサイズダイヤモンドのロットであった。 </p><p>無色系のメレサイズ HPHT 合成ダイヤモンドについてはすでに報告(注 1)があり、分析 結果や特徴などについて紹介されている。 今回検査した石のカラーグレード(注2)は D-E-F となっていたが、D カラーは数個でほと んどが F から H であり、僅かに色を持っていた。 色調ごとに分類したところ、青色・黄色・緑色・ 灰色系になった。赤外分光、PL スペクトルなどに違いがないか調べた。 </p><p>クラリティは VS-VVS の表示であったが、内包物は多くみられた。内包物の形態や、未研磨面に残された結晶面に特徴がないか観察 した。</p><p>(注 1)</p><p> 北脇、久永、山本、岡野、江森、2016.1 無色系メレサイズ HPHT 法合成ダイヤモンド CGL 通信 No.30 </p><p>古屋正貴 2015.12 合成ダイヤモンド アップデ イト Gem Information W.Soonthorntikul P.Siritheerakul 2015summer Near-Colorless Melee Sized HPHT Synthetic Diamonds Identified in GIA Laboratory Gems&Gemology </p><p>(注 2) </p><p>宝石鑑別団体協議会(AGL)の規約により、合成ダイヤモンドのグレーディングはおこなわない</p>
著者
高橋 泰
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.30, pp.5, 2008

久米武夫氏は日本の宝石学の先駆者の一人であり、御木本幸吉氏の義弟である。御木本が明治時代に銀座に出店した際、顧客に外国人が多いことに気がついた御木本幸吉氏の命を受けアメリカにジュエリーデザインの研修に派遣された経歴を持つ。この経験により、久米氏は日本における宝石学の先駆者として活躍し、数々の宝石関連の著書を残している。彼は昭和14年、東京地学協会発行の地学雑誌に「宝石奇譚」を記しているが、同年5月6日付けで宝石標本を宝石参考品として出品している。その時の久米武夫コレクション(仮称)は、山梨県立宝石美術専門学校が寄贈品として所蔵している。お孫さんに当たる久米祐介氏により平成14年に教材として寄贈されたもので、標本個数244点のカット石を主体としたコレクションである。内訳は、天然石165点、合成石50点、模造石24点、処理石5点である。このコレクションは当時の宝石業界においてとり扱われていた宝石類を示すものであり、既に扱わなくなった宝石種や現在に至るまで流通し続けている種類を知ることができる。このコレクションの中からコランダム、真珠、サンゴ等数種類の宝石をピックアップし紹介してみたい。