著者
秋葉 光俊 宮本 芳文
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究
巻号頁・発行日
vol.14, pp.5-10, 1987

聴覚によるα波バイオフィードバックで,被験者は静寂なほの暗い室内の椅子に安静な姿勢で坐るのが通例である。しかし,もし何らかの外乱の存在する環境においても,バイオフィードバックがその効果を評価され得れば,バイオフィードバックの日常生活への拡大と考えられる。本研究では種々の聴覚外乱をもつ環境での聴覚バイオフィードバックの効果について検討した。聴覚によα波バイオフィードバックの予備訓練後,被験者8名をグループF-CとグループC-Fとに群別したグループF-Cでは実験1に聴覚フィードバックを行ない,実験2では非フィードバックによる自己制御を行なった。グループC-Fはこれと逆順とした。実験1,2とも3過程(1過程10試行)の構成とした。外乱としては,音楽,興味をひく言語および興味をひかない言語の3種を選定し,カセットテープから放音した。聴覚情報は最終的には皮質共通統合中枢に伝達され,貯蔵されている記憶と照合されて綜合思考が決定され、視床-皮質系へ情報がフィードバックされると言われている。Αリズムはtとして視床の活性に因る。従って,外乱による的皮変化は個々の経験によって異なると考えられるが、本実験により定性的に次のことが判明した。音楽は学習によりα波増強をむしろ肋成し,言語性外乱はα波を抑制する時間が長い。もっとも音楽もその性格によってα波出現への影響は異なるし,言語性外乱も被験者がその言語に対して関心をもつ程度に応じてα波抑制の程度が異なる。試行を重ねることによるフィードバック訓練の効果については、音楽の場合は漸減傾向を示し,言語性外乱の場合は当初は効果が認められないが,約5試行くらいまで漸増し以後漸減する。実験結果を要約すると,聴覚バイオフィードバックはたとえ聴覚外乱を含む環境においてもその訓練効果を示す。その効果は加えられる外乱の特性および被験者のパーソナリティによって相異する。