著者
宮武 健治 福井 賢一 小柳津 研一
出版者
山梨大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

スルホン酸化ポリフェニレン高分子を、ジクロロビフェニルとジクロロベンゼンスルホン酸から一段階で簡便に合成する方法を見出した。スルホン酸化ポリフェニレンは溶液キャスト法により柔軟な薄膜を形成し、5つのフェニレン環が連結したジクロロキンケフェニレンモノマーを用いて得られた薄膜と同程度以上の高いプロトン導電率、気体バリア性、化学安定性を示した。さらに側鎖に高密度でスルホン酸基を導入したポリフェニレン系の合成にも成功し、低含水率条件におけるプロトン導電率の向上を達成した。これらのプロトン導電性高分子薄膜を用いた燃料電池が、高性能と高耐久性を実現した。可逆的な水素吸蔵・放出を担う物質として、フルオレノン/フルオレノールを繰返し単位あたりに置換したビニルポリマー、および、チロロンと1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼンから得られる親水性架橋ポリマーを合成した。白金担持カーボン触媒を介して、フルオレノールで置換されたポリマーの電解酸化が酸素還元電位より卑な電位で生起することを明らかにし、リチャージャブル燃料電池への適用が原理的に可能であることを明確にした。また、ポリビニルキノキサリンを新たに設計・合成し,従来より高い質量水素密度を達成した。水素の吸蔵―放出を行うポリマーに対して深紫外(FUV)分光を用いることで、水素を吸蔵したアルコールと放出したケトンが明確に異なる電子遷移吸収ピークを与えること、さらにそのピークが両者の化学状態の違いに由来することを時間依存密度汎関数(TD-DFT)法による解析によって明らかにした。全反射型のFUV分光において光の入射角度を変えることで深さ分解したスペクトルの測定が可能であるため,同ポリマーにおける水素の吸蔵―放出過程のその場解析に道を拓く重要な成果である。