著者
岡田 康志
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-15)

光学顕微鏡の分解能は回折現象により約250nmに制限される。そのため、細胞内で生命現象が展開される場である細胞内小器官や超分子複合体など、大きさ100nm以下の構造のダイナミクスを直接的に観察することは出来なかった。申請者は蛍光分子局在化法、構造化照明法、誘導放出制御法など3つの「超解像法」の生体試料へのアプリケーションを試みてきたが、いずれも高分解能生体イメージングには不十分だった。本研究では、多重化蛍光分子局在化法とワンショット構造化照明法の2つのアプローチで100ms以下の時間分解能と50-80nmの空間分解能による超解像蛍光生体イメージング法の開発を行ってきた。前者では、新規に開発された自発的にブリンキングする蛍光色素と蛍光分子位置決定の新しいアルゴリズム開発により、蛍光分子局在化法の時間分解能を飛躍的に改善した。後者は、構造化照明法の原理とスリット式コンフォーカル顕微鏡の原理の関係に注目した新しい方法で、1枚の取得画像から回折限界の2倍の空間分解能を達成することが出来、構造化照明法による超解像顕微鏡法の時間分解能を100倍向上することに成功した。いずれも、現在、国内メーカーを通じた市販化の準備が進められており、国産超解像技術として社会に還元されることが期待される。また、これまで申請者が推進してきた分子モーターの機能を中心とする細胞内輸送系の研究では、これまで困難であった輸送制御の現場の直接的な観察が可能となり、研究が飛躍的に進展することが期待される。
著者
岡田 康志
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

発生過程においては、さまざまな自己組織化現象がみられる。その理論的枠組みとして、チューリング型の反応拡散系がよく知られているが、系に関与する分子数が少数である場合には、少数資源の奪い合いによる自己組織化という形でチューリング型の反応拡散系を実装することが可能である。申請者らは、幼若神経細胞の形態形成過程における細胞内輸送の制御機構が、細胞内輸送という少数資源の奪い合いによる自己組織化の好適なモデル系であると考え、本研究においては、キネシン型分子モーターによる細胞内輸送が、正の協同性と少数資源の奪い合いの効果によって、自己組織化されることを実証した。まず、in vitro再構成系で、微小管とキネシンだけからなる系で、キネシン濃度依存的にキネシンと微小管の相互作用に協同的自己組織化現象が生じることを示した。さらに、その機構を一分子計測と構造解析を組み合わせることによって解明した。一方、細胞内でキネシンと微小管の結合速度定数を直接計測する一分子顕微鏡システムを構築し、これを利用することで細胞内でのキネシンと微小管の結合制御を微小管1本、キネシン1分子のレベルで明らかにした。その結果、細胞内には、キネシンとの親和性が異なる微小管が少なくとも4種類存在し、キネシンとの結合や微小管自身のダイナミクス、翻訳後修飾など様々な系によって複雑に制御されていることが示唆された。
著者
関根 康人
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30 (Released:2017-07-04)
著者
渡利 泰山 大河内 豊 高柳 匡 Chung Yu-Chieh Kehayias John 西尾 亮一 Gang Dong-Min Weissenbacher Matthias
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-08-01)

素粒子物理の現象論や模型構築というアプローチは、低エネルギー有効局所場の理論を言語とする。そのため、この理論的枠組みの持つ限界から逃れられない。今回の研究では、超弦理論を用いて、その限界を打破する試みを2通りの方法追及した。1つは、超弦理論のコンパクト化を用いるものである。フラックスコンパクト化の解の統計学をF-理論で適用可能にすることにより、ゲージ群、湯川結合定数などの分布関数を導いた。もう1つは、AdS/CFTを用いたハドロン高エネルギー散乱の理論的枠組みの拡張。2体から2体への散乱ながら、非弾性散乱でも扱えるように拡張し、一般化されたパートン分布関数の定性的性質を弦理論を用いて導いた。
著者
明石 知子 菅瀬 謙治 水口 峰之 西村 善文
出版者
横浜市立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23 (Released:2009-04-01)

NMRや質量分析を用いて、天然変性タンパク質の動的構造を解析し、天然変性タンパク質を構造から理解し、分子認識機構の構造的な普遍性を解明することを目的として研究を展開した。その結果、ヒストン多量体および相同組換え補助因子 Swi5-Srf1複合体の構造、iPS細胞を誘導する転写因子Sox2およびOct3/4の動的構造、スプライシング関連因子PQBP1とスプライソソームU5-15kDの複合体およびPQBP1-U5-15kD-U5-52K複合体の立体構造を解析し、神経特異的抑制因子NRSFのN末天然変性領域とコリプレッサーSin3の相互作用を阻害する化合物を同定するなど、多くの成果が挙げられた。
著者
荒瀬 尚
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-15)

MHCクラスII分子は様々な自己免疫疾患の感受性に最も強く関与している分子である。しかし、特定のMHCクラスII分子がどのように疾患感受性を決定するかは長年明らかになっていない。一方、我々は、細胞内のミスフォールド蛋白質を細胞外へ輸送する分子としてMHCクラスII分子を同定した。さらに解析を進めることによってクラスIIに提示されたミスフォールド蛋白質は、抗原特異的なB細胞を活性化する。そこで、関節リウマチや抗リン脂質抗体症候群等の自己免疫疾患で認められるいくつかの自己抗体を解析すると、それらは、MHCクラスII分子に提示されたミスフォールド蛋白質(抗体重鎖やβ2グライコプロテインI)に対して高い親和性を示すことが判明した(Jin et al. PNAS 2014, Tanimura et al. Blood 2015)。さらに、MHCクラスII分子に提示されたミスフォールド蛋白質に対する自己抗体の結合性は、MHCクラスII分子による関節リウマチ等の自己免疫疾患の感受性と高い相関を示すことが判明した(Jin et al. PNAS 2014)。これらのことから、細胞内のミスフォールド蛋白質がMHCクラスII分子によって、細胞外へ輸送されると、その複合体が異物として異常な免疫応答を誘導するのではないかという今までに考えられてきたのとは異なる新たな自己免疫疾患の発症機構が明らかになった。すなわち、MHCクラスII分子に提示されたミスフォールド蛋白質は、自己抗体の標的分子として、自己免疫疾患の発症に関わるという新たな自己免疫疾患の分子機序が明らかになった。
著者
永井 健治
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-26)

【5年間の成果を総括した書籍「少数性生物学」の出版】領域研究にて得た研究成果をまとめた書籍「少数性生物学」(日本評論社、2017/3/25発行、永井健治/冨樫祐一 編集)を出版した。書籍編集にあたっては、単に領域の顕著な成果を取りまとめた内容とするのではなく、「少数性生物学」という学問を俯瞰的にまとめたストーリー展開とするよう、計画班員を中心としたメンバーで、編集会議にて検討を重ね、18のテーマに絞込んだ内容とした。現在、日本国内にとどまらず、世界に向けて研究成果を発信すべく、英語版の書籍出版の編集作業を行っている。【研究成果発信】領域活動や研究成果をまとめた領域ニュースレター最終号を発行した。ニュースレターには、最終年度の研究成果報告、活動報告に加え、領域活動に係ったすべてのメンバーの領域へのことばを掲載し、総ページ数87ページにわたる、最終号にふさわしい内容となった。【企画研究会】領域運営期間中に領域活動として行っていた研究会の中で、特に発展性が高いと見込まれる研究会について、将来展望を探るための活動を行った。「少数性生物学デバイス研究会」を11月に開催し、今後も活動を継続することとなった。「少数性生物学データ検討会」、「産学アライアンス討論会」については、他の研究会と統合し、「先端的バイオ計測研究会」として継続することとなり、3月に研究会を開催した。【少数性生物学からの発展研究検討】本研究領域の研究対象が「観察・実験可能である」ことを示した成果を基盤として、今後も実験事実に基づいた「少数性生物学」の成果を世界に向けて発信し、分野の発展や定着に向けての努力の継続を行うため、計画班員を中心としたメンバーで複数回にわたって会議を開催した。その結果、少数の要素や小さな変化がいかにして大きな変化を生み出すかを探求する新たな新学術領域「シンギュラリティ生物学」を継続課題として申請することとなった。
著者
熊谷 晋一郎 向谷地 生良 加藤 正晴 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28 (Released:2012-11-27)

①当事者研究によって導かれた「情報のまとめあげ困難説」の学術的定式化と、同仮説の検証情報のまとめあげ困難説」を外部観測的な側面を説明するA01 班・B02 班のモデルと統合し、新しいASD理論を提唱する論文を投稿中である。またA02 班との協力によって,予測符号化モデルによる情報のまとめあげ困難説の表現を試み、当事者研究と構成論との間で検証可能なモデルを共有し、実験を行った。ASDでは、行為者の意図性判断と、行為の善悪判断との間の関連性が低い傾向があり、エピソードの物語的解釈における非典型性の一端が示唆された。②発達障害者における聴覚過敏と慢性疼痛の実態・機序解明と支援法開発A01班との協働により、自閉スペクトラム症における聴覚過敏特性に基づいた個人適応型過敏性緩和システムを提案した。ASDでは触覚閾値は正常だが、触覚刺激に対する交感神経反応が亢進しており、内臓感覚-自律神経系の関与が示唆された。加えてA01班との共同で、神経障害性疼痛患者の患肢の脳内運動表象を定量化する手法を開発し、運動表象(身体性)の破綻による痛みの発症機序を解明するとともに、仮想現実(VR)を用いた神経リハビリテーション治療を行い、その治療機序が身体性の再獲得(知覚-運動協応の再統合)であることを解明した。また、体性感覚刺激を同期入力することによって治療効果が高まることを明らかにした。③当事者研究自体が持つ治療的意義の検証ASD者向けの当事者研究マニュアルと、これを用いた臨床介入研究のプロトコールを作成し、2016年9月に東京大学ライフサイエンス委員会臨床審査委員会の承認を得た(No. 16-100)。予備研究では、対処可能感の有意な上昇(p= .043)が認められた。
著者
永井 健治
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29 (Released:2018-07-20)
著者
中井 泉
出版者
東京理科大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

福島第一原発事故により大気中に飛散した放射性物質の性状解明を目的として,大気粉塵および土壌から強放射性の粒子を分離し,大型放射光施設SPring-8での放射光マイクロビームX線分析を中心とした非破壊の性状解明を行った。以下では平成27年度に得られた主要な成果に関して報告する。土壌試料は筑波大学の末木らによって福島県内で採集されたものであり,放射性CsおよびAgの放射能比によっていくつかのグループに分類されることが明らかとなっている。本研究では,1号機由来の放射性物質が飛来したと考えられる原発北西の地域で採取された土壌を対象に,放射性粒子の分離を行った。分離された粒子は,100マイクロメートルを超える大きさであり,球形ではなく歪なものが多い。こうした粒子の形態的特徴は,研究代表者らが先行研究中で報告した事故直後につくばで捕集された放射性大気粉塵,通称「セシウムボール(直径2マイクロメートル前後の球形粒子)」とは明らかに異なるものである。SPring-8における蛍光X線分析の結果,これらの粒子はCsよりもBaを多く含み,またセシウムボールでは検出されていないSrを含むなど,化学組成に明らかな違いが見られた。また,蛍光X線イメージングにより元素分布が均一でないことが明らかとなり,特にFeやMo,Uなどは数マイクロメートルの微小領域に濃集していた。X線吸収端近傍構造解析およびX線回折により,この粒子のバルク部分はセシウムボールと同様のガラス状物質であったが,先述の濃集点には何らかの結晶相が存在していることが明らかとなった。以上のように,2号機由来とされるセシウムボールと今回分析した1号機由来とされる粒子では,明らかな化学的性状の違いが見られた。この性状の違いは,その生成・放出過程の違いを強く反映しているものと考えられ,事故当時に1号機と2号機が異なる炉内状況にあったことを化学的に実証するものである。
著者
東 朋美
出版者
金沢大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

黄砂中の環境化学物質が、気管支喘息や花粉症などのアレルギー疾患の発症や悪化の原因になることが指摘されている。近年、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽を代表疾患とする長引く咳(慢性咳嗽)を訴える患者さんが増加しており、本研究では、黄砂と慢性咳嗽の症状の関係を調べることを目的として、黄砂期間中の患者調査を行った。前年度に引き続き、第2期、第3期の患者調査を継続した。金沢大学附属病院の呼吸器内科にて、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽のいずれかの診断を受けて通院している成人の方を対象に、アレルギー日記に毎日の症状を記録して頂いた。黄砂日の判定は、国立環境研究所のLIDAR観測データをもとに行い、黄砂消散係数が0.03/km、0.01/km(濃度0.03mg/m3、0.01mg/m3に相当)をそれぞれ黄砂日、非黄砂日の閾値とした。第1期調査の結果、咳、たん、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、眼のかゆみのすべての症状において、黄砂期間に症状を有する人数が、非黄砂期間より増加していた。特に、咳と眼のかゆみの症状においては、非黄砂期間に症状が無く、黄砂期間に症状を有した人が有意に認められ (p<0.05) 、黄砂が慢性咳嗽の症状に影響を及ぼすことを初めて報告した(Higashi et al. Atmospheric Environment in press)。我々の調査では、期間中毎日症状を記録する方法によって、黄砂情報に影響されることが無く、症状変化を捉えることが可能になった。また、気象庁発表の目視による黄砂日ではなく、LIDAR観測データによる黄砂日を設定したことによって、軽い黄砂飛来時の影響を捉えることができた。今後、この調査と解析を継続し、黄砂以外の要因として考えられている大気汚染物質や花粉の健康影響を考慮した詳細な解析が必要であると考える。
著者
和田 章義
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

台風Choi-wan(2009)通過前後に生じる大気、海洋でのpCO2及びCO2フラックスの変動について、水平解像度6kmの大気波浪海洋結合モデルにより数値実験を実施した。Bond et al.(2011)で観測された、KEOブイ位置におけるChoi-wan通過時のpCO2の差(海洋-大気)の急激な増加は再現されなかったものの、モデル実験結果から積分時間とともにpCO2の差は増加し、台風近傍及び進行方向右側で、海洋から大気へ突発的にCO2フラックスの増加が見られた。台風Choi-wan(2009)について、異なる大気海洋初期値及び水平解像度3,6,12,24kmの設定でそれぞれ大気波浪海洋結合モデルにより数値実験を実施し、水平解像度、大気海洋初期値が中心気圧と進路の再現性に与える影響について調査した。特に台風強度(中心気圧)に直接関連する台風構造の再現性に関して、高度1.5kmでの渦位分布及び1時間降水量分布に着目すると、水平解像度6kmの全球客観解析データを用いた数値シミュレーション結果のみ、TRMM/TMIの降水分布から見積もられる直径約100kmの台風の眼のサイズを良好に再現していた。一方で他の数値シミュレーション結果は台風の眼のサイズを過大にシミュレーションしていた。この他台風渦の理想実験を実施し、台風渦が成熟期に達した後に海洋モデルを結合した計算を行った結果、海面水温低下により渦位リングは弱まり、またその直径は拡大した。しかしながら海面水温の低下が温帯低気圧的な構造への変化をもたらすことはなく、また気象庁大気再解析データによる解析から、温帯低気圧化には必ずしも海面水温の値、温度勾配が直接的に寄与していないことが示された。
著者
川崎 真弘
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28 (Released:2013-07-10)

発達障害児に見られる「逆さバイバイ」のように、視点と身体表象の重ね合わせはコミュニケーション時の発達障害の一つとして重要な未解決問題である。本研究では、視点と身体表象の重ね合わせを健常者と発達障害者で比較し、発達障害の方略の違いを調べた。PCディスプレイ上に呈示された人の両手のうち一方がタッピング動作をし、被験者はその動作と同じ手でタッピングをすることが要求する運動模倣課題を用いた。方略の聞き取り調査より、定型発達者の多くが視点取得の方略を取るのに対して、発達障害群の多くは逆に心的回転の方略をとった。反応時間によるパフォーマンス結果から、心的回転を報告した被験者だけで回転角度依存性が観測されたため、この聞き取り調査が正しかったことを確認した。また、その方略の違いは発達障害のスケールの中でも「こだわり」や「コミュニケーション」のスコアと有意に相関した。さらに発達障害者は定型発達者とは異なり、自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意にパフォーマンスが悪化した。この課題遂行時の脳波と光トポグラフィの結果を解析した結果、発達障害者は自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意に前頭連合野の活動が増加することが分かった。前頭連合野の活動は従来研究で認知負荷と相関することが示されている。つまり、発達障害者は視点取得の戦略を使うと心的負荷がかかることが示唆された。以上の結果より発達障害者は他社視点を使う視点取得の方法より自己視点を使う心的回転を用いて運動模倣を行っていることが示された。今後はこのような戦略の違いがどのようにコミュニケーション困難と関係するかを分析する必要がある。