著者
宮武 史尊 平岡 英士 真野 純一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.265, 2006 (Released:2006-12-27)

活性酸素種が不飽和脂肪酸を酸化すると過酸化脂質が生成し、酵素的あるいは非酵素的反応を経て毒性の強いα, β-不飽和アルデヒド(活性アルデヒド)が生じる。我々は活性アルデヒドの光合成への影響を調べた。ホウレンソウ葉から単離した葉緑体を2 mMアクロレイン中暗所25℃で8分間処理すると、CO2還元活性は100% 阻害された。4-hydroxy-2E-nonenal, クロトンアルデヒドも同条件でCO2還元活性をそれぞれ75%, 50% 阻害した。一方、電子伝達系(H2O→NADP+)の阻害は最大5%であり,活性アルデヒドによってカルビン回路が優先的に阻害されることがわかった。α,β-不飽和結合を持たないアルデヒドは同じ炭素鎖長の活性アルデヒドに比べてCO2還元活性阻害の大きさは半分以下であった。アクロレインによりCO2還元活性が100% 阻害されたとき,カルビン回路の諸酵素は以下の割合で失活した。5-ホスホリブロキナーゼ, 90%;グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ, 73%;アルドラーゼ, 47%;セドヘプツロース1,7-ビスホスファターゼ, 32%;Rubisco,23%;フルクトース1,6-ビスホスファターゼ,22%。これらの酵素の部分的失活がかけ合わさり,CO2還元が完全に阻害されたと考えられる。