著者
宮田 悟志
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.122, 2013 (Released:2013-06-20)

創発は,自明で局所的な法則から非自明な構造や特徴が生成される現象であり,近年様々な関心を集めている.たとえば, 建築デザインにおいては, 従来の構造形態に替わる新たな形態の創成に利用する例が見られる. これらは,形態要素をアルゴリズムにもとづいて空間的に複合的に展開することにより,既存の方法論から得られるデザイン解を超えて,斬新で有機的なデザイン解を得ようとするものである. そして,このためアルゴリズムとして, セルラ・オートマタやL-System, 遺伝的アルゴリズムなどが使用される. ところで, これらの創発デザイン法においてデザイン対象の様態を実現する方法,つまり人工物の動きや変形などを実現する方法, は通常の解析的方法である.つまり, 対象を微分方程式の初期値-境界値問題に還元して扱う方法であり,典型的な非創発的方法である.本論では,この現象実現の部分もまた創発により行いうることを示し, 創発的アプローチの可能性を, 仮想現実実現の点から論じる.