著者
宮脇 陽三
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.85-101, 2001-03-01

現代フランスの大学入学資格試験制度(パカロレア)は, 1985年に国民教育大臣シュベーヌマン(J.P. Chevnement) による「18歳人口の80%をパカロレア水準へ」という教育政策目標が提唱されて以来,そのための1985年11月の職業高校と職業大学入学資格試験(baccalaureat professionnel)の創設にともなって,高等教育の大衆化段階から普及化段階への移行を推進する有力な手段となっている。この大学入学資格試験制度は,1985年11月以後では,中等教育パカロレア(A,B, C, D,E科),と科学技術パカロレア(F,G,H科)と,職業パカロレアと,社会人対象の特別パカロレア(1986年3月創設)の4種類に分類することができるのである。大学入学資格取得者数は1985年が222,429人,1997年が471,000人, 2000年6月期が644,128人(LeMonde de l'education,Juillet-aout,2000,P.63)であって,1990年代の平均18歳入口の71-72万人の80%台にほぼ到達しているとみられるのである。この小論では,科学技術パカロレアの旧名称の技術者パカロレア(1969年創設)を中心として,大学入学資格試験制度の大衆化路線が走りだす1959年から1982年までの大衆化過程の動向を,(1)資格社会フランスにおける大学入学資格試験制度の存在意義,(2)1976年から1982年までの大学入学資格試験の進展,(3)大学入学資格試験における一般教養教育と職業専門教養教育の統合化の課題について考察しようとするものである。