著者
久木 幸男
出版者
佛教大学教育学部
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-24, 1992-12-15
著者
免田 賢
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.147-163, 2012-03-01

宮沢賢治は、日本を代表する詩人・童話作家である。なおかつ科学者、宗教家、そして行動実践者の側面をもっている。本論文では、賢治理解の枠組みを提示し、宮沢賢治についてこれまで報告された心理学研究について概観をおこなった。第二に賢治自身による世界理解の方法論がどのようなものであったか、諸アプローチから心理学的に検討をすることを目的にした。その上で、作品の「心象イメージ」について知覚・発達心理学、認知心理学、心理力動的な観点からの分析を試みた。さらに、賢治が生きていた時代に影響を受けた心理学者であるWilliam Jamesの影響についても考察をおこなった。賢治の作品にみる「心象イメージ」がプリミティブともいえる相貌的知覚によっていること、Jungをはじめとする精神分析の影響を受けていること、さらに賢治が本邦の心理学の発展と歩みをともにしていることが論じられた。最後に、今後の臨床心理学の発展に関連して、賢治研究の意義について展望を述べた。
著者
宮脇 陽三
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.85-101, 2001-03-01

現代フランスの大学入学資格試験制度(パカロレア)は, 1985年に国民教育大臣シュベーヌマン(J.P. Chevnement) による「18歳人口の80%をパカロレア水準へ」という教育政策目標が提唱されて以来,そのための1985年11月の職業高校と職業大学入学資格試験(baccalaureat professionnel)の創設にともなって,高等教育の大衆化段階から普及化段階への移行を推進する有力な手段となっている。この大学入学資格試験制度は,1985年11月以後では,中等教育パカロレア(A,B, C, D,E科),と科学技術パカロレア(F,G,H科)と,職業パカロレアと,社会人対象の特別パカロレア(1986年3月創設)の4種類に分類することができるのである。大学入学資格取得者数は1985年が222,429人,1997年が471,000人, 2000年6月期が644,128人(LeMonde de l'education,Juillet-aout,2000,P.63)であって,1990年代の平均18歳入口の71-72万人の80%台にほぼ到達しているとみられるのである。この小論では,科学技術パカロレアの旧名称の技術者パカロレア(1969年創設)を中心として,大学入学資格試験制度の大衆化路線が走りだす1959年から1982年までの大衆化過程の動向を,(1)資格社会フランスにおける大学入学資格試験制度の存在意義,(2)1976年から1982年までの大学入学資格試験の進展,(3)大学入学資格試験における一般教養教育と職業専門教養教育の統合化の課題について考察しようとするものである。
著者
岡屋 昭雄
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-18, 1999-03-01

今回は、鈴木三重吉研究、わけでもその描写論を中心に論究することにする。筆者は鈴木三重吉「赤い鳥」の会に所属しつつもその研究を深めることには今ひとつ不足していた憾みを感じている。したがって、今回は、三重吉の処女作でもある「千鳥」を中心にその文学的な背景を明らかにすることに努力を傾注した。ともすれば鈴木三重吉の文学的な活動のみならず、三重吉の文学的な意味までも忘却されているのが実状である、といってもいいのではないだろうか。最近の文学作品を読んでみてもその文体が暖昧であることに逢着する。それに対して、三重吉の文体の確かきには多くの学ぶ点があるのではないのか、というのが筆者のそもそもの出発である。それと写生文という運動を再評価したい、というのも筆者の研究の動機でもある。したがって、今回は、「赤い鳥」綴り方運動の前段の作業として位置づけ、三重吉の文学活動を作品に即しつつ深めながら、その文章の特質を明確にすることを目的とするのである。さらには、この文学的な活動の延長線上に子どもへの綴り方指導の基礎的指導を構想したものとして位置づけることになる。三重吉の作品分析を単に分析のみに終わらせることなく、この文学的な三重吉の営為から、子どもへの綴り方指導論が成熟するきっかけとして把握できる、との仮説を持っていることを述べておく。
著者
西之園 晴夫 望月 紫帆
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.59-67, 2006-03-01

生涯学習社会においては,従来の個人的な教養や資格取得に対応するだけでなく,変動と多様化を迎えて専門職能の育成など高度職業教育を必要としている。この場合,従来の講義方式では多様化に対応できず,ゼミ方式の少人数方式では教育コストの面で多人数教育には望めない。そこで多人数でありながら,協調と自律を目指した自主学習システムを開発しているが,その方法論ならびに佛教大学で276名の多人数授業を実施したときの成果を報告している。
著者
園田 雅代 Masayo SONODA
出版者
創価大学教育学会
雑誌
教育学部論集 (ISSN:03855031)
巻号頁・発行日
no.52, pp.79-90, 2002-03-01
著者
井上 修一
出版者
佛教大学教育学部
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-18, 2010-03

フランスが歴史的な基本的人権の確立への大転回をもたらしたのはフランス革命であり、その成果として憲法制定会議で裁決された人権宣言は高く評価されるものである。この人権宣言17カ条は現行の第5共和国憲法において憲法的価値が認められている。この人権宣言10条はライシテの原則を定めていたが、政教関係は、フランスは伝統的にカトリックの国であり、ガリカ二スムの伝統と相俟って複雑な様相を呈していた。フランスは他の国に見られない政教関係のモデルいわれるほど国家と教会の権力抗争の歴史を持っており、その関係はめまぐるしい変動の過程を通していわゆる厳格な政教分離の制度を持つにいたった。今やヨーロッパの国々の多くが国教制度または公認宗教制度をとっている中で、フランスは「ライシテの国」と言われ、特殊な政教関係を持つ国であると言われている。本論文において、フランスにおける歴史的なコンコルダ制度からライシテと政教分離法・憲法との関係、さらに、政教分離関係法とヨーロッパ人権条約との法律関係を展開する。コンコルダライシテ政教分離法ヨーロッパ人権条約
著者
吉川 成司 Seiji YOSHIKAWA
出版者
創価大学教育学会
雑誌
教育学部論集 (ISSN:03855031)
巻号頁・発行日
no.58, pp.27-44, 2007-01-01

This paper considers the independence in life-span human development by contrasting with the isolation through elaborating the attachment theory, child abuse and its effects. The paper is organized in the following way: Section 1 details independence and
著者
ジェフリー A・S・モニーツ
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.43-53, 2008-03-01

本論文では,ハワイで得た多文化の経験をもとに,特に多文化教育アプローチに焦点を置いている。著者はまた,「ハワイ特有の」多文化を構築するのに大きく寄与した日本の子供向けテレビ番組に着目し,そのため1970年代に島で放映された日本の二つの特撮番組,レインボーマンとキカイダーに注目することで,本論文の主題であるハワイの複合的な視点の概念の意味を明らかにしている。
著者
奥野 哲也
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.107-123, 2010-03-01

ソンディ・テスト(Szondi Test)の施行は1回実施するには、10分を超えない短時間での実施が可能である。したがって被験者に身体的な負担を掛けることが少なく、しかも「好き・嫌い」という、極めて単純なやり方の施行法であるから、心理的な負担も少ない。人物顔写真の「好き・嫌いの選択」といった単純で、簡単な方法であるため、施行年齢も3歳以上から可能であるなど、その適用年齢は驚くほど幅広い。また言語を基本的には媒介しないため、聴覚や言語の機能に障害がある場合や日本語を解さない外国人であったりする場合も、施行に困難をきたす事は少ないなど、他のアセスメント法に較べて適応範囲が広い。施行が簡単であるという事は、検査者の側の場合も、施行技術法習得のための訓練はあまり必要がない。他の査定技法に比較して、様々な利点があるにも係わらず、24時間以上・1週間以内という施行条件が設けられているために、正規法とされている10回施行を完全終了するには、かなりの時間が必要とされ、その結果、即戦力にならないのではないかという疑問が生じているのも事実である。そこで152人を対象として、1回法と2回目以上の施行で得られた反応の連関係数を産出する調査を行ったところ、かなりの因子反応において関連が認められ、1回法の有用性が明らかになったので報告する。前回報告では、h因子からp因子までの検討結果を掲載したが、その続編として、それ以降の因子の検討結果とまとめの報告である。
著者
久木 幸男
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-20, 1991-12-15
著者
原 清治
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.93-107, 2008-03-01

経済的な問題のみならず,教育や労働においても「格差」をめぐる問題は,現代日本社会の大きなトピックとしてさまざまな視点から取り上げられている。しかし,諸外国と比較した上で,日本はどのような部分において,どの程度格差が広がっているのか,といった実証的な研究はまだまだ発展途上の段階だといえる。「勝ち組・負け組」などに代表される日本での格差の問題は、社会情勢や景気などの生活実態のみから語られている側面が少なくないからである。教育の世界では,日本は依然として格差の少ない国であり,人種問題を抱えるアメリカや,階級社会であるイギリスなどははるかに格差の大きい国である。本論文では,2006年に発表されたOECD(経済協力開発機構)のデータを用いて,主に米英2カ国の学歴別による就業・失業比率の経年比較をおこない,各国の学歴による就業格差の実態を分析する。結果として,イギリスは学歴による就業率,相対所得,失業率に大きな差があり,依然として高学歴者により多くの社会的・経済的地位が確保されているのに対して,アメリカではたとえ高学歴であっても就業率や失業率の差異が年を経るごとに小さくなっていることが明らかとなった。ゆえに,イギリスでは高等教育のさらなる発展が,若年就業の問題を解決する手段となりえるが,アメリカでは必ずしもその発展が労働問題を解決する処方箋となり得ないと考えられる。アメリカよりも学歴による格差の小さい日本でも同様の傾向が見えており,従来の人的資本論から切り離した、労働と教育との接続(トランジション)を問い直す時期に来ていると考えられるのである。
著者
荒木 ひさ子
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-12, 2004-03-01

幼児期に親から虐待を受けた子どもは,その時の悲しみや怒りなどの感情を抑圧する。このことが後の神経症やその他の問題の原因となり,個人と社会に深刻な影響をもたらす。ヒットラーは子ども時代に父親から深く傷つけられ,抑圧してきた憎悪をユダヤ人に向け,ユダヤ人ホロコーストという惨禍を社会にもたらした。フロイトはヒステリーの病因が幼児期の親による性的虐待にあるという確信を得,それを理論化したが,彼自身の生まれ育った家族の神経症を追求していく中で,その理論の核心部分を修正した。これはその後の精神分析の展開方向に深い刻印を残した。
著者
竹内 晋平
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.9-17, 2012-03-01

本邦で行われた調査によると、スポーツや音楽と比較して成人の日常生活に美術の存在が希薄となる傾向を読み取ることができる。この結果は、社会に対する美術科教育の意義を考えさせられるものであると言える。本研究は、美術科教育において生涯美術の素地として育てておくべきファクターについて検討するとともに、授業実践を通して児童が体得できた感覚を明らかにすることを目的としている。 現職教員を対象とした図画工作科に関する教職的資質についての質問紙調査の結果からは作品の完成度を高める指導の必要性を求める声が浮かび上がってくる。しかし、本稿においては"絵の上手なえがき方"の指導ではなく、"絵をえがく時の感覚"を体得できる指導を重視するという立場をとった。このような考え方に基づいた水墨表現を取り入れた図画工作科授業実践を行った。ゲストティーチャーによる教授場面の発話記録を分析したところ、6年生児童は「感覚の意識化」「感覚の把握」「感覚の体得」という3つの段階を経て、生涯美術の素地としての感覚を体得する傾向があることが明らかとなった。
著者
田中 圭治郎
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.43-56, 2007-03-01

京都は千年の都であり,政治の中心が江戸に移っても文化の中心として栄華を極めていた。江戸時代の中葉には,経済の中心が大坂へ,また後期には江戸へと移動した後も,町衆の文化への思い入れはたいそう強いものがあった。京都に明治2年に設置された番組小学校は,文部省の明治5年の「学制」頒布より3年先だって作られたものであり,教育の教育が全国的に見てもかなり先駆的かつ内容的に充実していた。しかしながら,番組小学校の経済的負担は京都府に全面的に依存しており,町衆の経済力が設置に貢献したものとは必ずしも言い難かった。その典型的なものが,小学校の維持費を捻出するために各小学校に作られた「小学校会社(明治2年設立)」である。この会社は当初こそうまく機能していたが,明治17年から18年にかけて,各番組において経済的破綻をしてしまい,その役割を京都府に委ねる。初等教育は,文部省の国家統制の手段であったため,何とか維持出来たが,中等教育は宗教団体へ身売りを余儀なくされる。我々が従来考えていた京都市民の活力,教育への願望,文化への希求といった固定した考え方がひっくり返るのである。京都市の公立学校は,国内の他の地域と同様,国の管理・統制・援助の下ではじめてその維持が可能であったことがわかるのである。
著者
牧 剛史
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.25-34, 2014-03-01

「臨床心理士」は1988 年に資格化され、現在まで右肩上がりに資格取得者数は増加し続けている。対人援助の専門職を資格化する上で大きな課題となるのが、その養成プログラムであろう。「対人援助」の専門家である以上、実践を行なうことが必須になるが、「学生」というアイデンティティに留まっている者をいかに「実践家」に育て上げるのかは避けては通れない重要な問題である。本論文では、現在の臨床心理士養成プログラムについて呈示し、臨床心理士養成プログラムにおける「省察」や「実践知」の重要性を論じることを目的とした。臨床心理士資格を取得するためには、大学院を修了することが基礎要件となっている。現在は指定大学院が認定されており、臨床心理士の専門資質のレベルを一定水準に維持した養成プログラムとなっている。指定校の一つである佛教大学大学院臨床心理学専攻では、特に「臨床心理実習」を重視したカリキュラムを用意している。この実習には、学外機関での実習とグループスーパーヴィジョン、附属相談室での事例担当と個人スーパーヴィジョンおよびケースカンファレンスが含まれている。臨床心理士の養成においては、自分自身の実践について省察する「行為についての省察」だけではなく、臨床実践中に何を感じていたかという「行為の中の省察」が重要である。「臨床心理実習」を通して学ぶのは「実践のマニュアル」ではなく、「個別的・具体的な実践知」であると言えよう。
著者
原 清治
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.133-152, 2011-03-01

現在、子どもたちのなかでケータイ電話を介したネットいじめの問題が深刻化している。こうした事態に対処するため、2008年6月に18歳未満の青少年がケータイを利用する場合には、保護者からの申し出がある場合を除いてフィルタリングを適用することを各ケータイ電話会社に対して義務付ける「青少年ネット規制法」が成立した。しかし、フィルタリングの導入はネットいじめの「万能薬」とは言いがたく、子どもたちを守る本質的な取り組みが喫緊の課題となっている。 本研究では、京都府および京都市教育委員会の協力を得て、市内に在住する小学生の児童とその保護者に対するアンケート調査を実施し、子どもたちのネットいじめの実態を精緻に分析するとともに、その元凶ともいわれるケータイ電話利用に関する意識調査も同時に実施した。 結果として、ネットいじめの被害に遭う子どもたちはケータイの使用時間やメールの送受信回数が多い「ネット依存」がみられるだけでなく、学年の進行にしたがって学力が「上昇移動」した子どもに多い傾向であることが明らかとなった。
著者
東山 弘子 松崎 亮介
出版者
佛教大学
雑誌
教育学部論集 (ISSN:09163875)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-18, 2006-03-01

性的破壊的衝動が暴力的行動として学校教育場面で問題化した小6の男児に対して,授業に参加しながら心のケアと人間関係の学びを支援する実践を通して,その有効性と課題について考察した。臨床心理学的専攻の大学院生によるチームサポートは,支援のオリエンテーションが同じでメンバー間の信頼関係が十分であれば,あたかもひとりのセラピストが対応しているかのように進行できること,メンバーの個性をクライエントは父イメージ,母イメージ,男性イメージ,女性イメージなど必要に応じて投影し,取り入れていき,内的成長に有効であることがわかった。その現象や支援関係の特徴をより多くの事例をかさねて分析し,支援のための連携についても考察していくことが今後の課題として残された。