著者
家坂 利清 井上 浩 今井 昭満 名古 純一
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.478-486, 1985

人工妊娠中絶術後に出現する異型細胞の起源と形態的特徴を調べる目的で, 妊娠2~3ヵ月の中絶後116例と非妊婦内膜掻爬術後12例の子宮内膜吸引細胞診の検討を行った.<BR>中絶術後の異型細胞は術後4時間より出現し始め, 4~5日に出現率のピークを形成し, 32日まで認められた.ピーク時には, 100%の検体に異型細胞が出現した.<BR>これら異型細胞は, 絨毛, 脱落膜細胞の変性に起因するのではなく, 下記の理由で子宮内膜再生細胞と考えられる.<BR>1.非妊婦内膜掻爬術後にも出現.<BR>2.再掻爬術後の反復出現.<BR>3.著明な核分裂に代表される活動核の存在.<BR>4.異型細胞は, 変性現象では説明の困難な, 特徴ある4期に分けられる.<BR>換言すれば, 異型細胞の特色ある経時的変遷とは, 再生細胞の子宮内膜修復過程そのものにほかならないと考えられる.<BR>4期の異型細胞のそれぞれの特徴に従って, 再生細胞を発生期, 分裂期, 成熟期, 退行期の4期に分類した.これらの区分は, 細胞形態学的に有意差をもって可能であった.
著者
家坂 利清 井上 浩 木村 茂
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.449-456, 1987

人工妊娠中絶術後に出現する子宮内膜再生細胞について, 性ホルモン投与後の形態変化を観察した (109例).全体を無処置群, プロゲステロン投与群, エストロゲン投与群の3群にわけ, 術後2~3日と6~8日に内膜細胞診を施行した.主として核分裂細胞と巨細胞の出現率という観点から, これらの検体を分析し, 以下の結論を得た.<BR>1. プロゲステロンやエストロゲンは再生細胞の出現率には影響は及ぼさなかった.<BR>2. だがプロゲステロンもエストロゲンも再生細胞の分裂能を低下させた.特にエストロゲンの作用は著明であった.<BR>3. エストロゲンには再生細胞を小型化し, 成熟を抑制する作用もある.プロゲステロンにはこの効果は明らかでなかった.<BR>これらの作用が生体内においていかなる役割を果たすか, 詳細な意義は不明である.しかし成熟内膜が両ホルモンにより発育を制御されるのと異なって, この場合両者の作用とも抑制的であることから, 細胞増殖を基盤とした内膜の再生は内分泌因子だけでは解釈しにくい.また同じ内膜とはいえ, 成熟腺細胞と未熟な再生細胞では, エストロゲンに対する応答が異なる事実も興味深い.