著者
堀江 靖 加藤 雅子 永見 光子 杉原 千恵子 八島 正司
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.274-275, 2000-07-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
3

A case of BCG-related lymphadenitis is presented. After BCG vaccination, an enlarging mass was noted in the left axillary region of a 1-year-old boy. Imprint smear cytology of the extirpated lesion revealed aggregates of epithelioid and tingible-type histiocytic cells without a necrotic background. Histologically, the lesion showed granulomatous nodules composed of epithelioid histiocytic cells and Langhans' giant cells without associated caseous necrosis. Immunohistochemically, the epithelioid histiocytic cells were positive for and-BCG antibody, lysozyme and CD 68. It is necessary to distinguish this BCG-related lymphadenitis from tuberculous lymphadenitis.
著者
坂本 穆彦 逸見 正彦 田﨑 和洋 橋本 優子
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.528-531, 2014 (Released:2015-01-30)
参考文献数
19

2011 年 3 月に発生した東日本大震災による東京電力 (株) 福島第一原子力発電所の事故後, 放射性ヨード (I-131) をふくむ種々の放射性物質が環境中に放出された. この中でもチェルノブイリ原発事故によるデータを参考にすると, 放射性ヨードによる小児甲状腺癌の誘発が危惧された. そのため, 政府ならびに県は福島県立医科大学を拠点とする福島県県民健康管理調査事業の柱の一つに甲状腺検査を設定した. すなわち, 原発事故発生時に 18 歳以下であった全県内居住者約 36 万人をその対象としてスクリーニングのための甲状腺超音波検査をスタートさせた. このうち, 精密検査が要請された場合には, 甲状腺穿刺吸引細胞診が行われる. 2014 年 3 月までに 1 巡目の検査が先行調査として行われ, その後は 5 年ごとの本格調査に移行する. 現在は先行調査が進行中であるが, すでに 75 人が細胞診にて悪性ないし悪性の疑いと判定された. このうち手術をうけた 34 名中 33 名に乳頭癌が見出された. これらの乳頭癌が放射線誘発癌か否かは現段階では判断は困難であり, 今後の推移の中で考察される. 本稿では原発事故に対してとりくまれている健康管理調査の中で甲状腺細胞診が果たしている役割について紹介する.
著者
荒井 祐司 都竹 正文 坂本 穆彦
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.109-114, 1997-03-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

組織学的に確定診断の得られた甲状腺低分化型乳頭癌13症例と甲状腺高分化型乳頭癌17症例の穿刺吸引細胞診標本より両型の細胞像を比較し, 低分化型の細胞学的特徴を明らかにすることを目的として検討を行った.低分化型の細胞学的特徴は, 1. 小集塊での出現が主で, 孤立散在傾向も認められる. 2. 集塊は, 細胞配列の乱れと重積性が強く, 一部には結合性の低下 (ほつれ) が認められる. 3. 核は高分化型より大型で楕円形が主体, 大小不同性が強い. 4. 同一標本上に, 高分化型の集塊の出現を認めることがある.また, 正常および良性濾胞上皮細胞, 高分化型, 低分化型との核の形状の比較を行った結果, 核の大きさ, 大小不同性, 核形 (核の丸さ) において濾胞上皮と高分化型および低分化型の間に有意差が認められ (t-検定), 核の形態からも鑑別が可能であることが示唆された.
著者
森沢 孝行 蔵本 博行 上坊 敏子 加藤 良樹 脇田 邦夫
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.520-526, 1982 (Released:2011-01-25)
参考文献数
25

子宮内膜の新しい擦過細胞診 (Endocyte) を吸引チューブ法と併用して247例に行い, その有用性を検討した. (1) Endocyte (以下End.) は190例 (76.9%) に挿入容易, マルチン使用で可能は44例 (17.8%) だったが, 13例 (5.3%) は挿入不能であった. (2) 使用時に軽い疼痛を68例 (29.1%) が訴え, 23例 (9.8%) に軽度の出血が認められた. (3) 内膜採取は良好で, 71例 (51.1%) はチューブ法に比べ多量の内膜が採取された. (4) 標本上に内膜細胞が採取されていなかった症例はEnd.法3例 (2.2%), チューブ法では出血の4例を含む7例 (5.0%) であった. また両者ともに挿入可能であった閉経後患者の比較では, 14例中11例はEnd.法に多量の内膜細胞が認められ, 本法は出血や閉経後の症例に優れていた. (5) 標本上の扁平上皮混在率はEnd.法51例 (36.7%), チューブ法115例 (82.7%), 同様に組織球のそれは, 15例 (10.8%), 47例 (33.8%) で, ともにEnd.法に低率であった. (6) 細胞像としては, End.法では正常の場合でも, より大型の重積する細胞集塊を作りやすく注意を要するが, 細胞個々の保存は良好である. 体癌ではブドウ房状形態よりは, 組織により近い腺管構造の断片として現れやすい.
著者
根本 哲生 森山 美樹 坂田 泰子 山本 嘉子 江石 義信 菅野 純
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.343-346, 2000-09-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

背景:家族性大腸腺腫症 (Familial adenomatous polyposis以下FAP) はAPC遺伝子のgermlinemutaionに起因する遺伝性疾患であり, 若年女性の甲状腺に乳頭腺癌をしばしぼ合併することが知られている.近年, 甲状腺乳頭癌に細胞の節状配列や充実性増殖などの組織学的特徴を有するcribriform-morular variant (CMV) が提唱され, FAPに伴う甲状腺乳頭癌は, 多くがその範疇に入るものと考えられる.今回, われわれは家族性大腸腺腫症に合併した甲状腺癌の2例を経験し, 穿刺吸引細胞像を検討した.症例:症例はいずれも20歳女性.甲状腺腫瘤に対し穿刺吸引細胞診が行われた. 通常の乳頭癌にもみられるコロイド, 核の切れ込みなどの他に, 1) 細長い核を有する高円柱状細胞の柵状配列, 2) 多角形細胞の充実性胞巣, 3) 立方状細胞の節状配列が特徴的な細胞所見であり, 穿刺吸引細胞像からCMV甲状腺癌の推定が可能と考えられた.結論:CMVは非FAP患者では比較的まれであることから, 甲状腺穿刺吸引細胞診でこれらの特徴的な細胞像を認めた場合には, 甲状腺腫瘤が初発症状として気付かれたFAPである可能性を考慮する必要があると考えられる.
著者
佐藤 智子 水内 英充 工藤 隆一 橋本 正淑 赤間 正義 石山 好人
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.124-131, 1985 (Released:2011-11-08)
参考文献数
16

子宮内膜細胞採取器のオネストブラシと増淵式吸引チューブを用いて2,756例について比較検討を行い以下の成績を得た.1) ブラシ法では吸引法より圧倒的に大量の内膜細胞採取が可能だった.2) 標本上の赤血球の混入はブラシ法に多かったが, 読影が困難となるものはごくわずかだった.3) 頸部由来細胞の混入はブラシ法の方が少なかった.4) 標本の粘液による汚染や組織球の混入は, 両者の問でほとんど差が認められなかった.5) パパニコロークラス分類において吸引法の方がブラシ法より低いクラスに診断されるものが一部の症例に認められた.6) 内膜細胞診実施可能率は, 吸引法で91.8%, ブラシ法で95.5%と大きな差は認められず, 高齢層ではブラシ法の方が可能率が高かった.7) ブラシ法施行に伴う痛みや出血はごく軽度のものが大部分を占め, 従来考えられていたほど大きな欠点とは考えがたい.以上, オネストブラシはスクリーニングに用いる器具として非常に有用であると考えられる.
著者
三宅 康之 広川 満良
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.127-131, 1998-03-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
18

甲状腺の穿刺吸引細胞診と触診および超音波検査とを比較し, 細胞診の価値と限界について検討した.細胞診と超音波検査の感度はそれぞれ76.9%, 78.8%とほぼ同程度で, 触診は36.5%と低値であった.特異性は細胞診78.0%, 超音波検査78.0%, 触診81.0%で差はみられなかった.検体が十分に採取された症例での細胞診の感度は80.0%, 特異1生は89.7%で, 超音波検査や触診より良好であった.触診, 超音波では石灰化を認める方が正診率が高く, 細胞診では逆に石灰化がない方が高かった.触診では, 嚢胞を認める症例の方が正診率がやや高かったが, 超音波, 細胞診においては, 嚢胞がみられない症例の方が正診率が高かった.細胞診における採取不良や偽陰性の原因として, 石灰化, 被包化, 嚢胞化, 小病変などがあげられた.細胞診における組織型の推定率は未分化癌100%, 髄様癌90.9%, 扁平上皮癌75.0%, 乳頭癌59.8%であった.病変部から的確に十分な細胞量が採取されれば, 穿刺吸引細胞診は, 組織型まで推定できる非常に優れた検査法といえる.
著者
中澤 愛子 京 哲 中西 一吉 小川 晴幾 笹川 寿之 清水 廣 田中 善章 井上 正樹 上田 外幸 谷澤 修
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.467-472, 1991 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15

子宮頸部におけるHuman Papillomavirus 16型, 18型の感染を子宮頸部擦過細胞から得たDNAを用いてPolymerase Chain Reaction (PCR) 法により検出した.さらにHPV感染と組織診, 細胞診との関係を比較検討した.Dot blot法と比較してPCR法は検出感度に優れていた.PCR法にてHPV16型または18型を検出した症例数は, 正常69例中11例, 頸部コンジローマ3例中0例, CIN 67例中17例, 浸潤癌30例中11例であった.Koilocyte, binucleated cell, dyskeratocyteなどのHPV感染細胞所見を検討できた59例中, PCR法にてHPV 16型または18型が陽性となったのは19例, 陰性であったのは40例であった.HPV 16型または18型陽性の19例中, koilocyteは5例 (26%), binucleated cellは4例 (21%), dyskeratocyteは11例 (58%) で, HPV陰性例40例中では, それぞれ1例 (3%), 10例 (25%), 15例 (38%) に認めた.しかし, いずれの所見も特異的でなく, 細胞診のみではHPV感染を検出するのは困難であると思われた.また, 細胞診, 組織診にて正常の症例中, 約16%にHPV DNAを認め, これらの症例の今後のfollow upが重要であると思われた.
著者
永田 郁子 上國 愛 岡本 淳子 井町 海太 䑓丸 裕 中西 慶喜 大下 孝史 藤本 英夫
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.39-45, 2016

<b>背景</b> : 腹腔内原発二相型滑膜肉腫の腹腔内洗浄水と腫瘍捺印の細胞像を報告する. <br><b>症例</b> : 50 歳代, 女性. 約 15 cm 大の腹腔内腫瘍に対し, 腹腔内洗浄細胞診と腫瘍捺印細胞診が行われた. 腹腔内洗浄水では, 孤立性の紡錘形異型細胞が少数と小集団の上皮様異型細胞が, 腫瘍捺印では, 細胞密度の高い紡錘形異型細胞集塊と小集団や孤立性の上皮様異型細胞が認められた. 紡錘形異型細胞は, 葉巻状核や核のくびれ, 核内細胞質封入体が, 上皮様異型細胞は類円形で, N/C 比大, 核圧排像, 相互封入像がみられた. 病理組織学的には, 束状配列の紡錘形細胞成分と, 胞巣状の上皮様細胞成分が認められ, EMA, AE1/AE3, CK7, vimentin, calretinin に陽性であった. また, RT-PCR で SYT-SSX1 transcript が証明され, 腹腔内原発二相型滑膜肉腫と診断された. <br><b>結論</b> : 二相型滑膜肉腫の細胞診断には, 紡錘形異型細胞と上皮様異型細胞の腫瘍細胞の出現が手掛かりになると思われ, また, 診断には融合遺伝子の証明が有用である.
著者
西田 秀昭 橋本 哲夫 北村 修一 塚 正彦 田中 卓二
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.327-331, 2000-09-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

背景: 卵巣の悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫の腹水細胞所見に関する報告はない.今回, 術前の腹水細胞診で興味ある細胞所見を示した症例を経験したので報告する.症例: 48歳, 女性.約5ヵ月前より, 水様性帯下が持続し, 腹部膨満感を感じるも約1ヵ月間放置.入院時, 画像所見にて腹水, 卵巣腫瘍を認め, 子宮, 両側付属器を摘出した.腹水細胞所見は, 好中球, リンパ球および組織球からなる炎症性背景に, 異型のない紡錘形細胞の集塊や少数の大型~巨細胞性の異型細胞がみられた.異型細胞は細胞質が豊富で偏在性の核を有し, 核縁の肥厚には乏しく, 明瞭な核小体を1個~数個有し, 細胞質辺縁はライトグリーンに好染していた.病理組織所見では, 左卵巣は嚢胞性腫瘍で, その壁には毛包, 歯牙が混在し, 角化を伴う高分化扁平上皮癌の浸潤性増殖がみられ, 浸潤にしたがいその分化度が低下していた.また, 子宮体部への浸潤も認められた.右卵巣は左に比べ小型の嚢胞性腫瘍を認め, 一部角化を伴う癌細胞が浸潤増殖し, 右卵管への浸潤もみられた.結論: 悪性転化を起こした高分化扁平上皮癌が浸潤に伴い低分化となり, この低分化扁平上皮癌細胞が腹水中に出現したと考えられた.
著者
河合 賢 岸川 直人 伊藤 敬 足立 史朗
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.31-34, 2003-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1

背景:glomus腫瘍は毛細血管の先端にある神経筋性装置に由来する良性腫瘍で, そのほとんどは四肢末端や爪床に発生する. 胃粘膜下腫瘍として発生し, 術中迅速細胞診にて推定し得たglomus腫瘍を経験したので報告する.症例:32歳, 女性. 高度貧血の原因精査の過程で, 出血を伴う胃粘膜下腫瘍が認められた. 術中の捺印細胞診では, 単一で異型度の低い腫瘍細胞が結合性の強い小集塊を形成しているのが認められた. クロマチンパターンが均上一で結合性の強い像からglomus腫瘍が疑われた. 組織診断において細胞像を反映する典型的なglomus腫瘍の像が確認され, 免疫組織染色の結果も併せて診断が確定した.結論:小型類円形の均一な腫瘍細胞からなる胃粘膜下腫瘍としてはcarcinoid腫瘍が鑑別にあげられるが, 腫瘍細胞の結合性の強さやクロマチンの性状から, その鑑別は比較的容易と考えられた.
著者
森脇 昭介 宇佐美 孝子 山本 陽子 山内 政之 村上 和重
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.83-96, 1976 (Released:2010-10-21)
参考文献数
69

The multinucleated giant cells (MNGC) were revie wed from various viewpoint and were examined cyto diagnostic significance.1. The definition of MNGC give normal cells-me gakaryocytes, osteoclasts, placental syncytial cells-, and above two nuclei and over twice as large as normal cells.2. The formation of MNGC were classified into two groups of syncytium-the fusion of the cells-, and plasmodium-ivision of the nuclei without cyto plasmic division.3. The etiologic classification of MNGC were as follows: In normal tissue, the physiologic MNGC revealed the above cells.The pathologic MNGC origi nated in various conditions-infectious granulation, metabolic and neoplastic lesions.4. The histologic classification were as follows: The epithelial MNGC were included placental syncytial cells, virus infected cells and neoplastic cells. And the others nonepithelial origin were found of histiocytes (macrophages), mesothelial, blood component and other mesencymal cells of numerous conditionsforeign body giant cells, Langhans', Sternberg's giant cell, et al.5. The relation between various lesions of MNGC, and diagnostic value of MNGC were differe from diseases. Specially, Langhans'cells, herpes infected cells, foreign body giant cells, and a few neoplastic cells were diagnostic value. Mostly neoplastic MNGC were nonspecific anaplastic atypical features.6. It is difficult that the cytologic identification of MNGC were differ from various giant cells. There fore, it is necessary that differentiation of allid MNGC is with reference to histopathologic, clinical features and laboratory data colectively.
著者
佐々木 功典 荻野 哲朗 川内野 和孝 西村 冨士美 奥田 信一郎
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.687-692, 1982-10-25 (Released:2011-01-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

人胃癌40例について, 捺印標本にFeulgen染色を施し, 顕微分光光度計にて細胞核のDNA量と核の面積を測定し, DNA量分布のヒストグラムと組織型とを対比し, また核面積との関係を調べた. 組織型との関係は一般に必ずしも明瞭とはいえないが, 一応下記のような傾向が伺われた. すなわち, 高分化型管状腺癌では4c前後に第1のピークを持つ2峰性パターンを示す症例が多いのに対し, 低分化腺癌では明らかなピークを示さないか, 幅広い1峰性パターンを示し, 高分化型に比し大きな分散を示す傾向がみられた. 低分化腺癌として扱われている印環細胞癌のDNAヒストグラムは急峻な立ちあがりと高いピークを有し, DNA量の分散が極めて小さく, またこのピークに一致する細胞は典型的な印環細胞の形態を示し, これら細胞がGo期にあることが示唆された. 一方, 核の大きさはDNA量に良く比例しており, 通常の細胞診にさいし, 核の大小不同性からDNA量の分散をある程度まで推定しうると考えられた.
著者
小俣 好作 望月 敬司 千野 正彦 井口 孝伯 飯田 龍一 渡辺 秀夫 山本 雅博 古家 正道 浅尾 武士 田中 昇
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.680-685, 1985 (Released:2011-11-08)
参考文献数
20
被引用文献数
5 2

超音波検査による8,976名の甲状腺癌集団検診において, 496名の穿刺吸引細胞診が施行され, 男性14名 (0.22%), 女性19名 (0.69%) に甲状腺癌を発見した. 癌の最大径の平均は11.9±4.2mmであり, その半数以上が10mm以下の小型癌であった.