著者
富樫 幸太郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.485-491, 2022 (Released:2022-08-28)
参考文献数
15

透析患者において,原疾患が糖尿病性腎症と非糖尿病性腎症での冠動脈疾患・冠動脈石灰化の差異とその相関因子を比較検討した.糖尿病性腎症群154 名,非糖尿病性腎症群129 名の維持透析患者283 名を対象とした.冠動脈疾患の有無は冠動脈血行再建歴で,冠動脈石灰化は冠動脈CT でのAgatston らの方法による冠動脈石灰化スコアで評価した1).冠動脈疾患の有無は糖尿病性腎症群と非糖尿病性腎症群において有意に糖尿病性腎症群で多かったが(p <0.05),冠動脈石灰化スコアは有意差を認めなかった(p=0.396).冠動脈石灰化スコアに相関があったのは透析歴(相関係数0.344,p<0.05)とβ2MG(相関係数0.262,p<0.05)であった.以上より,透析患者における冠動脈石灰化スコアは糖尿病性腎症と非糖尿病性腎症での冠動脈病変の差に影響を与えていないこと,冠動脈石灰化スコアは透析歴と相関することがわかった.