著者
松本 真知子 富樫 広子 吉岡 充弘 齋藤 秀哉
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.207-222, 1989 (Released:2007-02-20)
参考文献数
215
被引用文献数
2

The role of serotonin (5-HT) in blood pressure (BP) regulation was reviewed. Central and peripheral 5-HT receptors can be divided into three receptor subtypes: 5-HT1 (5-HT1A, 5-HT1B, 5-HT1C), 5-HT2 and 5-HT3 receptors. The selective agonists and antagonists of these receptor subtypes are useful for investigating the BP regulation by 5-HT. The central 5-HT1A receptor agonist 8-hydroxy-2-(di-n-propylamino) tetralin (8-OH-DPAT) produced hypotension and decreases in sympathetic nerve activity (SNA). This suggests that central 5-HT may cause decreases in both BP and SNA via 5-HT1A receptors. Since the 5-HT2 receptor antagonist ketanserin, which has an antihypertensive effect, decreased SNA and the 5-HT2 agonist 1-(2, 5-dimethoxy-4-iodophenyl)-2-aminopropane (DOI) increased SNA, central 5-HT2 receptors may be connected with the 5-HT-induced increases in both BP and SNA. On the other hand, ketanserin's antihypertensive effects via its 5-HT2 receptor blocking action in the vascular system indicates that peripheral 5-HT may contribute to the initiation or the maintenance of elevated vascular resistance in several forms of hypertension including essential hypertension. However, ketanserin also possesses α1-adrenoceptor blocking action, and its precise antihypertensive mechanism has not been established. Further study of the antihypertensive mechanism of ketanserin will help clarify the precise role of 5-HT in BP regulation.
著者
山口 拓 富樫 広子 松本 真知子 吉岡 充弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.99-105, 2005 (Released:2005-10-01)
参考文献数
43
被引用文献数
2 11

高架式十字迷路試験は,抗不安薬をスクリーニングするための不安関連行動評価法として開発され,広く用いられている.また,薬効評価のみならず,遺伝子改変動物や疾患モデル動物の情動機能,特に不安関連行動の行動学的表現型を検索するためのテストバッテリーの一つとしても応用されている.本試験は特別な装置や操作を必要とせず簡便であるが,実験環境の設定条件が結果に大きく影響することから,その結果の解釈には注意する必要がある.重要な実験条件として,(1)実験動物の飼育環境および実験前の処置,(2)照明強度,(3)実験装置の形状が指摘されている.特に照明強度は,定量的に条件を変化させることが可能な設定条件の一つであり,目的に応じた条件設定を行うことによって感度よく不安水準を評価することが可能である.高架式十字迷路を不安誘発のためのストレス負荷方法として利用し,不安惹起中の神経生理・生化学的な生体内変化を自由行動下にて測定する試みがなされている.その一例として,皮質前頭前野におけるセロトニンおよびドパミン遊離の増加が,高架式十字迷路試験試行中の不安誘発に関連した脳内神経伝達物質の変化として部位特異的な役割を演じている可能性が考えられる.このように高架式十字迷路試験は,不安水準の評価法として薬効評価やモデル動物の情動応答を適切に,かつ,簡便に測定できる方法として有用である.また,不安関連行動中の行動変容と生体内変化を同時に解析することは,不安・恐怖・ストレスの神経科学的基盤の解明のみならず,不安障害に対する治療薬の開発に向けての新たな情報が提供されるものと期待される.