著者
多賀 直恒 富樫 豊 宮崎 正
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.324, pp.95-103, 1983-02-28

長周期微動観測によって地盤振動特性を評価する際に, 例えば, 得られた卓越周期が何に依存し, いかなる意味を有すのかを明確にする必要がある。そこで, 岩盤露頭のサイトからたい積層厚が2km程度のサイトまでの測線上の観測と, それらの結果を別の観点から補填する意味で空間的に広く分布する岩盤露頭の四サイトで固定観測も平行して実施した。既報の結果をも踏まえて, 本観測で得られた結果を以下にまとめる。1)たい積層厚が深くなるのに対応して, 水平動成分の卓越周期は1.5秒〜5秒まで伸長する。2)岩盤あるいはそれに等しいサイトではスペクトルは一か所で卓越し, 波浪を振動源とした時の周期と関連性が高いと考えられる5秒前後の卓越周期のみが現れる。3)たい積層厚が数百m程度のサイトまではスペクトルは二か所で卓越し, 振動源効果に依存する特性と地盤固有の振動特性の両方が現れていると考えられる。両者の卓越振動数にかなりの差がある時に, 明確な連峰型のスペクトル形状を示す。4)たい積層厚が2km程の深いサイトではスペクトルは一か所で卓越し, 振動源効果に依存する周期特性と共有する周期域(5秒前後)で地盤が卓越している。大型台風通過時の観測結果からも, 5秒前後が地盤の卓越周期と考える。5)空間的に広く分布する岩盤上での固定観測によれば, 水平動成分と上下動成分の卓越周期の値は, 互に良く似た値であり, また, 観測サイトどうしで比較的似た値である。そして, 波浪の周期特性と密接な関係がある。6)卓越周期・地盤構造と台風という関連では, スペクトル中の振動源効果に依存する部分が台風の影響を反映して変化しているものと考えられる。さて, 長周期微動の周期特性などが徐徐に解明されてきた。これからは, これまでに得られた結果や既往の研究をもとに, 数kmにもおよぶ地盤構造の推定やそれに基づく地盤の卓越周期の確認, そして地震工学への応用という観点から長周期微動特性と地震動特性との比較, あるいは数値実験的な面からの検討を目ざしたいと考える。