著者
富田 貴文 岡村 早雄 今野 芳浩
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.P-14, 2015

【目的】薬剤性肝障害(Drug-Induced Liver Injury: DILI)は、医薬品の開発中止や販売中止の主要な原因の1つである。医薬品の研究開発において化合物のDILIリスクを早期に予測することは、研究開発の成功率を上げるために重要である。DILIリスク予測評価系として、ヒト初代培養肝細胞及びHepG2細胞を用いた肝細胞毒性試験が多く報告されている。しかしながら、ヒト初代培養肝細胞ではドナー差や安定した供給面、HepG2細胞では肝機能の保持に問題がある。一方、ヒト肝腫瘍由来細胞株HepaRGはヒト肝細胞様形態や各種機能を保持していることから薬物動態及び毒性研究に有用と考えられる。我々は第40及び41回日本毒性学会学術年会において、HepaRG細胞を使用してDILI陽性化合物の毒性評価について報告した。今回、DILI陽性及び陰性化合物を追加評価し、HepaRG細胞のDILIリスク予測評価系としての有用性を検討した。<br>【方法】試験物質として、DILI陽性17化合物及びDILI陰性15化合物を使用した。処理濃度は、ヒト臨床Cmaxの100倍を最高濃度に設定した。HepaRG細胞に試験物質を24時間処理後、主要なDILI機序を反映する6種類のパラメータ(細胞生存率、グルタチオン量、Caspase 3/7活性、脂肪蓄積量、LDH漏出量、アルブミン分泌量)について測定した。各パラメータの最適なカットオフ値は、receiver operating characteristic curveを使用して決定した。さらに、DILIの予測性を評価するために、感度及び特異度を算出した。<br>【結果及び考察】DILIの予測性は、Cmaxの100倍では感度67%及び特異度73%、Cmaxの25倍では感度41%及び特異度87%であった。また、Cmaxの25倍でパラメータの変動が認められた化合物の70%は、DILI高リスク化合物であった。さらに、構造類似薬において、DILI高リスク化合物は低リスク化合物と比較して強い毒性を示した。以上より、HepaRG細胞は医薬品の研究開発においてDILIリスク予測評価系として有用と考えられた。