- 著者
-
寳来 直人
角崎 英志
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.152, no.3, pp.126-131, 2018 (Released:2018-09-06)
- 参考文献数
- 24
高齢化は世界規模で急速に進展し,本邦においても高齢化率は増加の一途をたどっており,平均寿命と健康寿命の差を短縮することが高齢者のQuality of Life(QOL)の向上並びに社会保障費の削減につながる.健康寿命の延伸には運動機能の維持が重要と考えられており,近年ではロコモティブシンドローム(運動器症候群)の増加が社会問題となっている.運動機能の維持に重要な役割を担っている筋肉は加齢と共に減少し,歩行速度並びに握力の低下など運動機能が低下するとサルコペニアとなる.しかし,筋肉量あるいは筋力を増加させる薬や運動機能を改善する薬は十分ではない.そこで本研究では,筋骨格系領域における創薬支援のため,解剖学的特徴がヒトに類似し,上肢及び下肢の機能分化が進んだサルにおいて,Magnetic Resonance Imaging(MRI)を用いた筋肉量測定方法を検討した.また臨床で一般的に使用されているDual Energy X-ray Absorptiometry(DXA)法と測定精度を比較した.その結果,MRI法ではDXA法と同様に高い同時再現性及び日間再現性が確認された.さらに,摘出した測定対象筋肉の重量とMRI法及びDXA法から得られた結果と相関解析を実施したところ,測定法に関わらず,いずれの測定部位についても高い相関がみられたが,MRI法の相関係数はDXA法と比較していずれの部位でも高かった.DXA法と比較して精度の高いMRIを用いた筋肉量測定方法が確立されたことにより,筋肉量をターゲットにした創薬の有力なドライバーになることが期待される.