著者
富田 繁 寺島 一生
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.111-117, 1970 (Released:2008-11-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

デンプンの溶媒であるDMSOおよびNH4SCN水溶液とデンプンの親和性をみるため,デンプン溶液の選択的吸着および溶媒和をしらべた. 溶液中における溶媒和を測定する従来の方法は,定性的知見を得るには間接的で煩雑すぎる欠点があるので,吸着を直接的に迅速かつ容易にしらべる方法を考案した.すなわち,溶媒-非溶媒-高分子系からなる溶液と,溶媒-非溶媒系からなる混合溶媒とが界面をつくったとき,吸着によって両方の混合溶媒系に濃度差が生ずれば拡散が起こり,シュリーレン図形で高分子の界面の周囲の凹みまたは突起として観察することができる.この方法をデンプン-DMSO-水またはジオキサン系に適用したところ, DMSOはデンプンに選択的に吸着することが示され,デンプン-NH4SCN-水系でも同様であった.さらにデンプンの他の塩類水溶液について検討したところ,陰イオンの被吸着性は離液系列に対応することが見出された. ついでSitohla-Svedbergの方法に従い,超遠心法によりアミロペクチンとDMSO-ジオキサン系,水-ジメチルホルムアミド系について溶媒和を測定した結果,アミロペクチンの溶媒和はグルコース残基1個当りDMSO 3個という結果が得られ, DMSOの吸着はOH基に対し1対1であろうと考えられ,また水和量は約6個と計算され, DMSOの吸着量のほぼ2倍である結果が得られた.