著者
寺嶋 正義
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.p77-99, 1986

水の落下音を研究する目的で,最も単純な洗面器に1mの高さから水滴,水を落下させて,その際に発生する音をマイクでとらえて,その出力の高速フーリエ変換をパソコンにて行ない,振動数の分析を行なった結果,つぎのことがわかった。(1)洗面器に水のない場合には,水滴の一滴落下により,器の固有振動を励振した。これは予想した通りであった。(2)水深1cmの場合と水深3cmの場合の水滴の一滴落下により水面の振動を励起したと思われる,58-137Hz,39-107Hzの低い振動数のものが出た。水深3cmで一滴落下の場合に,明らかに気泡が発生して,この気泡の固有振動が出たと考えられるものがあった。器の固有振動数の励振も発生したが,水深が深くなるほど少くなる傾向であった。(3)水深1cmの連続落下,水深3cmの連続落下,水深5cmの一滴落下,連続落下の場合には,340-615Hzや,2200-2300Hzの振動が出たが,これは水の落下に伴う気泡巻込みの気泡の振動か,飛散した水滴の振動と考えられるが,本実験のみからでは確定出来ない。(4)このような単純な実験でも,現象としてはかなり複雑なことが,非常に短い0-0.03s位の間に起っている。