著者
寺田 正之
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.31, pp.30-37, 1985-12-25

オウギガニ科Xanthidae,オウギガニ亜科Xanthinaeに属するゴカクイボオウギガニの抱卵個体を三河湾水深30mの砂底からトロール網によって採集した.実験室において孵化したゾエアI期にはシオミズツボワムシを与えて飼育したところ,ゾエアII期までを得た.この両期幼生の全形と付属肢の形態を詳細に記載・図示するとともに,本種幼生をオウギガニ亜科やケブカガニ亜科Pilumninaeの幼生と比較した.ゴカクイボオウギガニの形態的特徴は,3種類の甲棘存在,A_3型の触角II,4・2-1の小顎I内肢毛式,3:2・3の小顎II内肢毛式,2:4の小顎II底節下葉毛式,腹節II-Vに側棘存在, A_<2+1>型の尾節などである.これらの特徴のなかで,特に触角II型と小顎II底節下葉毛式は,本種と他のオウギガニ亜科とを区別しうる部位である.しかし,これらの特徴はケブカガニ亜科幼生によく一致している.したがって,両形質から判断すれば,本種幼生はオウギガニ亜科幼生よりもケブカガニ亜科幼生に類似する.