- 著者
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井上 正志
- 出版者
- 日本動物分類学会
- 雑誌
- 動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
- 巻号頁・発行日
- no.16, pp.58-64a, 1979-06-30
筆者は現在,日本産バッタ科(Acrididae)の細胞学的研究を続けているが,各地から得た短翅フキバッタ類(Podismini族)については,種々な核型があることがわかった。この類は短翅のために分散力が弱く,地理的に分化する傾向が強いのではないかとも考えられる。従来mikadoとされてきたものについても,原産地(北海道)のものと西日本のものを比較すると多くの形態的特徴において,かなり異っていて種の同定すら困難であった。そこで筆者はこれまで,日本各地で採集された材料に基づいてこの類の分類学的研究を行っているが,今回は西日本産Parapodisma属の下記2新種について記載し,faurieiを除く本属の既知種を含めて検索表を作成した。1.Parapodisma setouchiensis sp. n.セトウチフキバッタ(新称)。模式産地:広島県御調郡御調町大字市。本種は雄の亜生殖板の背面の前縁中央に明らかな突起をもつ点でP.dairisamaと似ているが,尾毛の先端が偏平でわずかに内に向って曲がっていること,雌雄ともに前翅が大きく,しかも背面で重っていること,さらに幅に対する長さの割合が大きいことなどによって明らかに区別できる。2.Parapodisma niihamensis n. sp.シコクフキバッタ(新称)。模式産地:愛媛県新居浜市大字河又。本種は雄の亜生殖板の背面の前縁中央に突起を持たない点でP.mikadoと似ているが,亜生殖板の先端突起が短いこと,尾毛が長くその先端の縁が非常に丸いこと,雌雄ともに前翅が非常に大きく,その上背面で重っていること,さらに幅に対する長さの割合が大きいことなどによって明らかに区別できる。なお前翅が背面で重っている点でP. setouchiensisと似ているが,雄の亜生殖板,尾毛および上陰茎の形態の相違によって区別できる。