著者
湊 耕一 小倉 直美
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

近年、高齢者医療に対する関心が高まり、老化に伴う生理的変化や老化機構の研究が進展している。一方、マクロファージは、免疫系において重要な細胞であると共に、collagenase等も産生することから細胞外基質代謝にも重要な働きをしている。歯科領域でも高齢者の炎症の慢性化や免疫能の低下、創傷治癒遅延が問題となっており、老化に伴うマクロファージの機能的変化の解明が求められている。本研究では、老化促進マウス(SAM)を実験モデルに、腹腔マクロファージ(Mφ)にPorphyromonas gingivalis(P. g. )LPSを作用させて炎症性因子の産生を測定した。〈方法〉腹腔に誘導物質を接種後、腹腔浸出細胞を回収してplate中に蒔き、2時間培養後付着した細胞をMφとした。このMφにP. g. LPSを作用させて24時間後、培養液中のPGE_2をRIA kitにて、IL-1β及びIL-6をELISA法にて測定した。〈結果及び考察〉Mφの回収率は誘導物質投与後4日目が最も高く、誘導物質にスターチ、グリコーゲン、プロテオースペプトンを用いたところ、Mφ回収率はプロテオースペプトンが高値を示した。SAMP1(老化促進)及びSAMR1(control)の3ヶ月齢、6ヶ月齢間でMφ回収率に顕著な差はみられなかった。次に、Mφ培養液中のPGE2、IL-1β及びIL-6を測定したとこと、LPSを作用した系、作用しない系とも、SAMP1とR1間で、また各月齢群間で有意な差は認められなかった。これは、老化モデルには6ヶ月齢では十分でないこと、各因子産生量の個体差が大きく各群の例数が少ないことなどが考えられる。今後、各群の例数を増やすこと、12ヶ月齢までの動物群について実験する必要がある。また、Mφのcytokine産生には細胞外基質に接着することが重要であるとが報告されたことから、collagenやfibronectinなど細胞外基質をcoatingしたplateにMφを蒔き、各炎症性因子の産生量を測定することも必要であろう。