著者
小倉 都 藤田 健一
出版者
科学技術政策研究所 第3調査研究グループ
巻号頁・発行日
2012-03-15 (Released:2012-08-07)

大学等(国公私立大学・高専、大学共同利用機関、研究開発独法)発ベンチャーの現状や課題等を明らかにするため、2009年度末時点で活動中で所在が判明している大学等発ベンチャー1689社へのアンケート(2011年3-4月実施:有効回答535件)を実施した。 その結果、大学等発ベンチャーの現経営者の45.2%は民間企業出身者となっており、多くの大学等発ベンチャーが教職員や学生が主体となって設立されたことを踏まえると、民間企業出身者がベンチャーの経営に参画する動きが着実に増えていることがわかった。また、設立からの年数が経過しているベンチャーでは、自社で研究開発も特許出願も経験している割合が大きくなっており、さらに民間企業出身者が経営者になっているベンチャーでは、資本金や売上高、研究開発費が大きく、従業員数の増加も大きく、海外展開に意欲的である、など、成長志向の傾向が強くなっていることがわかった。 また、大学等発ベンチャーの経営者は自らのベンチャーへの関与をキャリア形成の面で肯定的に捉えていること、20代、30代の若手を雇用するベンチャーが多く、研究開発では30代が最も戦力となっていること、研究開発に関連する業務では、大学等での研究経験だけでなく企業での職務経験があることを重視していることもわかった。今後、研究開発での増員を予定するベンチャーも多いことから、インターンシップ等による企業での職務経験を身に付けることにより、若手研究者がベンチャーで活躍できる可能性も広がっている。