著者
小出 祥子
出版者
名古屋短期大学
雑誌
名古屋短期大学研究紀要 = BULLETIN OF NAGOYA COLLEGE (ISSN:0286777X)
巻号頁・発行日
no.58, pp.1-13, 2020-03-13

万葉集において、助辞ラムとカはよく接続し、助辞ケムとカモもよく接続する。それに対して、助辞ラムとカモ、助辞ケムとカは接続しない。この現象に注目し、ラムカ構文とケムカモ構文の性質の違いについて明らかにした。 ラムカ構文は、情景がそのまま描写される場合が多く、その情景に詠み手の介入しない例がほとんどである。また詠み手の感情が描写されることはなく、情景自体が詠み手の願望と関わることも少ないことが明らかとなった。そして、その情景を淡々と描写することで、感動を表示する構文であることを示した。 それに対して、ケムカモ構文は、ただの情景の描写ではなく、詠み手の感情に働きかけるような事態が言表されている。詠み手が直接関わる事態であることも多い。そして、その事態の引き起こす詠み手の感情を表す構文であることを示した。