著者
小寺 恵介 塩原 卓也
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-7, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
3

ホルムアルデヒドが人体に対して障害を与える可能性が認識され,医薬品製造における無菌室の除染作業において代替薬品の検討が進んでいる。有力な薬品の一つである過酸化水素はその凝縮液の高い腐食性のため室内除染への利用は殆どなかった。武田薬品工業と大気社では,室内で凝縮を起こさずに腐食の影響を最小限にする除染技術を共同開発し,無菌室に適用する過酸化水素を用いた除染システムの実用化に至った。過酸化水素は水と同様に,一般的な環境下の空気中では蒸気として存在する。過酸化水素の凝縮は,過酸化水素と水の混合気体の気液平衡を考慮しないと正確には予測できない。この混合気体の気液平衡をモデル化し,除染中の室内環境をシミュレートできるツールを開発し,このツールを用いることで,室内で凝縮を起さない条件を正確に事前に設定することが可能となった。その設定条件を基にして環境パラメータを制御することで大空間である無菌室を除染できることがこのシステムの特徴である。開発技術について以下に報告する。