著者
小屋松 安子
出版者
(財)佐々木研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

婦人科悪性腫瘍の中で、増加傾向にある子宮体癌はtypel,2により予後的差異が大きいとされる。この違いを、マイクロサテライトの有無のみならず、組織型・組織分化度・進行期・ホルモンレセプターの有無等の因子別にマイクロアレイにより網羅的に遺伝子解析・比較し、従来推定されている既知の関連遺伝子以外の予後や治療にかかわる責任遺伝子の存在を検索し、また、それらの絞られた遺伝子におけるメチル化等の発癌機構に関わる変化を調べた。Type121例、type29例の計30例の子宮体部類内膜癌において、マイクロサテライトの不安定性は10例(33.3%)で体癌の約3割で認められた。マイクロサテライトの不安定性は消化器癌を含む家族性腫瘍でも報告されるが、子宮体癌ではマイクロサテライトマーカーはD2S123、D17S250、BAT25、BAT26に特異的に認められる傾向が判明し、hMLH1のメチル化に関しては、マイクロサテライトの不安定性に関わらず60%で確認された。この不安定性は子宮体癌type別による有意差は得られなかった。子宮体癌全体で顕著に遺伝子発現が増加したものは4遺伝子あり、低下したものは5遺伝子認められた。Type特異的には,予測どおりホルモンレセプターを含むtype1で57遺伝子、type2で21遺伝子が候補となり、特に顕著だったtype2におけるビメンチンの発現に関しては、さらに症例を増やし、特殊免疫染色・メチル化同定も行い、ターゲット遺伝子となるか、応用・開発の可能性を探っていく予定である。H19年度までに、目標遺伝子の絞込みが達成できた状況となった。