著者
小山 時隆
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.S0088, 2009

ウキクサは湖沼・水田などで普通にみられる植物である。単子葉類のサトイモ目に属するウキクサ科は、主に<i>Spirodela</i>属、<i>Lemna</i>属、<i>Wolffia</i>属の3属から構成され、根の本数(それぞれ複数本、1本、0本)によって分類されている。小さく成長が早いといった見た目の特徴がウキクサでは際だっているが、それ以外にも研究者を惹きつける様々な要素を持っている。生理学的研究においてはシロイヌナズナ以上に長い歴史をもつが、遺伝学的あるいは分子生物学的な研究はほとんどなされてこなかった。演者は<i>Lemna</i>属のウキクサを用いて、概日時計・光周性の生理学的・分子生物学的研究を7年余り前から進めてきた。また、2008年から<i>Spirodela polyrrhiza</i>のゲノムプロジェクトがスタートし、さらに、突然変異体単離などの遺伝学的アプローチも進められるなど研究環境整備が進められている。本発表では基礎・応用研究材料としてのウキクサの可能性を議論する。ゲノム情報などの大量データ取得が容易になりつつある現在の研究環境において、古典的な実験植物の魅力を再発見する機会をつくりたいと考えている。また、ウキクサを用いた研究分野の現状について紹介する。