著者
折本 善之 武井 昌秀 小山田 勉
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.203-206, 2003-04-05
被引用文献数
1

茨城県は日本ナシの栽培面積が1660 haと鳥取、千葉県に次ぐ主産県であり、品種別には'幸水'が全体の約6割と最も多い。茨城県の'幸水'成木に対する窒素施肥基準量は、黒ボク土における裸地栽培の場合、年間総量は250kg ha(-1)で基肥に8割、礼肥に2割の配分としている。従来の'長十郎'ではさらに、玉肥として果実肥大期に50 kg ha(-1)の窒素が加えられている。しかし、'二十世紀'での調査により玉肥は糖度低下や熟期遅延の原因となることが認められ、品質重視の'幸水'では玉肥を適用しない基肥主体の体系がとられている。しかし、本県における'幸水'の収量は近年低下傾向にあり、一部でこれを補うため施肥量や施肥回数が増加するなど施肥法に混乱が生じている。過剰な施肥は生産コストの増大を招くばかりでなく、地下水の硝酸汚染など環境にも悪影響を及ぼす危険性を有している。'幸水'は品質登録後約40年を経過するが、吸肥特性など栄養生理面の知見はそれほど多くない。そこで、効率的な施肥法開発の基礎資料を得るため、基肥を主体とする現行施肥基準のベースとなった'二十世紀'を対照象に、'幸水'の地上部新生器官(新梢、葉、果実)における窒素吸収特性を調査した。その結果、いくつかの知見を得たので報告する。