- 著者
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小島 穂菜美
- 出版者
- 武庫川女子大学
- 巻号頁・発行日
- pp.1-68, 2020-03-20
本論文は, 臨床における問題として, 高齢者にも頻用される塩基性薬物のゾピクロン, エスゾピクロンおよびアムロジピンベシル酸塩の苦味に及ぼす様々な酸性物質の苦味抑制効果を味覚センサ測定およびヒト官能試験により評価し, 1H-NMRスペクトル解析により薬物-酸性物質間の苦味抑制機序について検討を行った. また, 嚥下補助と苦味抑制の 2 つの性質を有する γ-ポリグルタミン酸ハイドロゲルを調製し, 物理化学的性質の評価, テクスチャー測定による嚥下のし易さの評価, 味覚センサ測定およびヒト官能試験から γ-ポリグルタミン酸ハイドロゲルによる薬物の苦味抑制効果を評価した. 3 種類の薬物の苦味に対して飲料, 配合薬, 添加剤と様々な酸性物質が苦味抑制効果を示すことを明らかにした. また, その苦味抑制機序として, 薬物-酸性物質間の分子間相互作用が寄与していることが推定された. さらに, γ-ポリグルタミン酸ハイドロゲルが苦味抑制と嚥下補助の 2 つの性質を有し, 高齢者の服薬アドヒアランス維持に寄与する可能性が考えられ, 苦味抑制と嚥下補助を併せ持った新しい剤形として, 今後の製剤開発に貢献することが期待される.