著者
小嶋 奨 福田 浩章
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.20, pp.1-7, 2016-08-01

Software Defined Network(SDN) はネットワークをソフトウェアで定義することによって制御する技術である.SDN はパケットの転送機能を有する複数のスイッチと,パケットのルーティングを管理するソフトウェアを物理的に分離する.そして,両者を共通プロトコルで接続することで,ネットワークの機能をコントローラーで一元管理し,プログラムで柔軟に変更することができるため注目されている.SDN はスイッチとそれを制御するコントローラで構成される.コントーラがスイッチを制御するための標準プロトコルである OpenFlow では,スイッチはパケットが保持する情報のうち OSI 基本参照モデルのレイヤ 4 以下の情報に従った機能しか利用することができない.しかし,ネットワーク機能にはレイヤ 5 以上の情報を用いる次世代ファイアウォールや,L7 ロードバランサの持つ機能が存在する.これらのレイヤ 5 以上の情報に従った機能を利用する方法は,パケットをコントローラに送ることや,専用機能を有するネットワーク機器を配置することで実現できる.しかし,前者ではコントローラに頻繁にパケットを送る必要があるため通信速度の低下が発生し,後者では SDN の利点であるネットワーク構築の柔軟性を欠くこととなってしまう.そこで,本稿では,コントローラを介さずにスイッチでパケットのレイヤ 5 以上の情報に従った動作を行うための機構を提案する.本機構により,コントローラとの通信で発生する速度の低下を低減することが期待できる.