著者
小嶋 由香 Várnai Anikó Eijsink Vincent G. H. 吉田 誠
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.32, no.188, pp.J111-J119, 2020-07-25 (Released:2020-07-25)
参考文献数
95

木材腐朽菌は、森林生態系における木質バイオマスの主要な分解者であり、セルラーゼや溶解性多糖モノオキシゲナーゼ(LPMO)などの多様な酵素を細胞外に分泌することで木材細胞壁中のセルロースを分解する。興味深いことに、褐色腐朽菌と呼ばれる木材腐朽菌の一群は、数種の例外を除いて、結晶性セルロースを分解するために重要なセルラーゼであるセロビオヒドロラーゼ(CBH)を欠損しているが、LPMOをコードする遺伝子は広く保存されている。このことは、褐色腐朽システムにおけるLPMOの重要性を示唆していると考えられる。本総説では、木材腐朽菌による木材分解プロセスについて概説した後、LPMOの発見に至るまでの歴史的経緯、およびLPMOの特性に関する最新の知見について述べる。さらに、褐色腐朽菌由来のLPMOに関する我々の研究を紹介し、褐色腐朽システムにおけるLPMOの生理学的役割について論じる。最後に、褐色腐朽システムの進化の過程におけるLPMOの重要性についても議論する。