著者
松岡 茂 小嶋 研二
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.107-116, 1979
被引用文献数
1

1977年10月20日から1978年4月9日まで,北海道大学苫小牧地方演習林で,ヤマゲラが寝くらに残したふんを採集し分析した.ヤマゲラが利用した寝ぐらは森林観測塔に設置されていた巣箱である.<br>(1)同定できた餌品目は,動物では昆虫網,くもがた類,整形類,植物では樹木の種子であった.<br>(2)ふん分析の結果を苫小牧演習林における季節区分に従って区分した.トビイロケアリはどの季節区分にも数多く出現した.しかし,厳冬IIには急に減少し,晩冬に再び増加した.<br>(3)樹木の種子は秋に特に多かったが,初冬,厳冬Iまで多く出現した.しかし,厳冬II以降は急に減少し,再び増加することはなかった.<br>(4)アリ以外の動物餌は,秋,初冬は少なかったが,厳冬Iにはヒメバチが多数出現した.厳冬IIに数,頻度共に多く出現したのはクモだけであった.<br>(5)ふん分析の問題点について言及し,またヤマゲラの採餌生態,ふんに出現する食物(特にアリ類),環境要因との関係について論議した.