著者
小笠原 佑吏 天野 方一 小川 留奈 福田 吉治
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.34-43, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
27

目的:都内のA国民健康保険組合では,大腸がんの早期発見のため,郵送による便潜血検査を行っているが,受診率は10%未満を推移していた.本研究は,受診率向上のため,どのような健康メッセージが有効であるかを明らかにすることを目的とした.方法:対象は満40歳以上74歳までの組合員とその家族であり,組合の支部を1つのクラスターとして,全26支部を無作為に2群に分け,それぞれの群に異なるリーフレットを添付した便潜血検査キットを配布した.A群のリーフレットは検査の容易さや家計負担などを強調した一方,B群のリーフレットは検査の重要性や健康影響などを強調した.主要評価項目は便潜血検査キットの回収率とした.また,性や年齢などの交絡因子を用いて多変量解析を行った.結果:A群は390人,B群は389人であった.2群間において性,年齢,過去の特定健診受診状況などに違いはなかった.便潜血検査キットは189人から回収された.回収率はA群及びB群で有意な差は認められなかった(A群22.6%,B群26.0%,P=0.278).また,多変量解析においても同様の結果であった.結論:健康メッセージの違いにより大腸がん検診受診率(便潜血検査キット回収率)に違いは認められなかったが,受診率は向上した.適切な健康メッセージを工夫することに加え,手順や方法を見直し,個別受診勧奨・再勧奨することも重要である.